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35 プレゼント


 時は少し経って9月30日。


 気づけば暑さも落ち着き一度目の山、学園祭まで残り一ヶ月。


 俺は最後の詰めに休日はダンジョンに通っている。実戦で魔力の制御や体の動かし方を覚えていくためだ。


 ちゃんと先輩には休日のお休みは許してもらっているしお昼ご飯まで朝のうちに用意してから来る。


 ダンジョンに来るのは詰めなどは関係なくいつもの事なのだがやはり意識は一ヶ月後に向いてしまう。


 三体の精霊のお陰で魔力の制御能力は飛躍的に上昇した。魔法の方も四属性の魔法最強というお手本が頭にあるのでどうにかなっている。


 ただ……やはりレベルの上がりは鈍化していると思う。


 レベルが上がるともう少し行けそうだとなんとなく分かるのだが全然その感覚が来なくなった。


 今はメニューを開けばステータスを見れるわけではない。だから詳しくは分からない。


 それを見るにはダンジョンで周回して簡易表示のアイテムを拾うか深いダンジョンのキリのいい……100層とかで確認するかしかない。

 国宝にはあるそうだが俺にはそれは無理。


 そんなんだからスキルの存在に気づかれないんだよ。


 俺が潜っているのは通称無限ダンジョン。

 正式な名前は奈落のダンジョン。


 これが何かと言えば底の無いダンジョンだ。


 俺も色々調べてみた。途中階層に何か無いか、潜ってみたら終わりはないかと。


 結果、1000まで潜っても終わらなかった。だから諦めた。


 こればっかりは時間がいくらあっても足りないからキリのいい階層しか調べてないし1001までしか潜ってない。有志の皆さんに丸投げしていたが5000までも何もなかったそうだ。


 とはいえ10層毎に階層報酬はある。それに指標にもなるから潜っているわけだ。


 俺のソロ記録は今のところ60で頭打ち。これ以上になると怪我をする。

 61で試してみたが危なかったから戻ってきた。


 60となると戦闘できる人の平均で言うならただの学園生だと相手にならないレベル。


 ただこれはアクア達込み且つ精霊王との契約に付き属性適性マシマシのチート状態でだ。


 俺単体だと20が精一杯。卒業間際の学園生と良い勝負出来たら良いなレベル。


 悲しいかな、主人公達で照らし合わせるなら少し頑張れば一年生終了で追い付いてしまう程度だ。


 もちろんスキルは取る事が前提だから取っていない今は余裕で勝てる。ただしこれから一瞬で追い付かれるだけだ。


 前に無限ダンジョンRTAを見たが時期で言うなら今ぐらいで会長単騎500層突破を見た。

 俺も挑戦してみたが200層が精々だ。あれはおかしい。


 パーティーだと今ぐらいの時期にはそのくらい普通に狙えるかな?


 つまり、俺は全然弱い。牽引するのに力が足りない。


 気は焦るが無理をすると却って非効率的なので奥歯を噛んで少しずつ地道にこなす。


 これでも安定性やその他の内容も向上はしている。だからこそもどかしいが彼らの一歩が大きいのは分かっていたことだ。

 俺は地道に一歩ずつ進む他ない。


 何時ものように60層で体を暖め動きの確認をして61層で1時間ほど確認してから戻る。

 これで大体午後3時。色々日用品とか買い物をして学園に戻るのが5時くらいだ。


 戻ったら食事を作って食べてからお風呂を用意して、先輩が入ってる間に食器の洗い物や軽い掃除を済ます。

 すると先輩が呼ぶので先輩の頭を洗って出ていく。追加で掃除を少しすると先輩が上がるので俺もお風呂を貰って寝支度を整えて寝る。


 最近習慣化してきた休日の予定だ。我が事ながら実に上手く回っていると思う。


 今日は夜に何作ろうかと考えながらすっかり慣れた研究室までの道を帰る。


 そういえば最近俺の悪口が減った。絶対会長達が何かしたのだが退学も停学も出ていないからすっきりしない。

 執行部も動いた気配は無いし一体どうしたんだろうか?


 ……っと、色々考えていたらあっという間に着いてしまった。


 ダンジョンを出るときにアクアとファイアとブリーズに頼んで体の洗濯から乾燥まで頼むのだが今一度自分の身形(みなり)を確認をしてから中に入る。


「ただいま戻りましたよ~。」


「おかえりなさい」

「戻ったか。」

「おかえりなさいませぇ。」


「あれ、珍しい。会長と先生がこんな時間までいるなんて。明日は月曜ですけど準備は良いんですか? ご飯食べていきます?」


「遅くなったけど誕生日おめでとう。」


「おめでとうございますぅ。」


「おめでとう。」


「…………あぁ、そう言うことですか。驚きました。」


「いつも帰りはこの時間か?」


「そうですよ。あちこち買い物に行くとどうしても帰りが遅くなるんです。」


 実は隠れて色街に繰り出してます、すいません。


「心の声にまでブラフ張ってどうするんですかぁ。あとそれ言ったら悲しみますよぉ?」


「ところでご飯どうします?」


「三人で作っちゃいましたよぉ。済ませてきただなんて言いませんよねぇ?」


「済ませてませんね。」


「いつも大体帰る時間ぴったり5時。計ってるの?」


「10分程度は前後するじゃないですか。あと計ってないです。」


「体内時計がしっかりしてる。」


「朝は日の出から、夜は早く。体が覚えてるんですよ。大体5時には帰るように設計されてるんです。だから10時には寝てるでしょう? 俺はむしろ5時に先輩が起きてくる方が不思議です。最近は4時に起きるのに合わせてきますし。」


「あれは後輩君センサーが勝手に体を動かす。」


「寝起きに合わせて徘徊しますものね、先輩は。」


「朝が早いのだな。私は6時だ。」


「私は5時半ですよぉ。お寝坊したときは6時に起きて食堂でご飯食べちゃいますけどねぇ。」


「……ご飯は冷めないうちにいただいてしまいますか?」


「そこは大丈夫ですよぉ。私からのプレゼントはこれですねぇ。」


 先生に包装された手のひらサイズの小包を渡された。


「いいんですか?」


「良いんですよぉ。」


 俺が心配してるのは立場上の話……。


「良いんですよぉ。」


「……ならいいんですが。ありがとうございます。」


「私はこれだな。」


 会長のは……小箱? 手のひら4つ分よりは大きい感じだ。


「ありがとうございます。何でしょうね、これ? 後で開けさせてもらいますね。」


「反応が見たいから私の前で開けてほしい。」


 …………えー? 緊張するなぁ。


「最後は私。これどうぞ。」


「……何でしょうね?」


 先輩は両手で包めるくらいの小箱。


 これ絶対ハンカチじゃないな……何だろうか。


「……これは開けてしまっても?」


「構いませんよぉ。私達も反応を見たいのでぇ。」


「どうぞ。」


「ならもらった順に先生から…………ハンカチですか。」


「無難にハンカチにしたんですけど大丈夫ですかぁ? 柄とかぁ……。」


「色もシンプルで好きですよ。というかこれまあまあ高いやつ……ってだけじゃないですね。もしかしてこれご自分で刺繍入れました?」


「…………プロじゃないので少し素人っけが出てしまいますけどぉ……。」


「……あぁ、そんな不安そうな顔しないでください。嬉しいです。大切に使います。」


 上手いもんだと思うけど……目が肥えてない俺には違いなんて分からない。


 主張も強くないし使いやすいかな。薄い青のベースに銀の刺繍。それに布地もちょっと良いやつ。

 凄く良いやつだと気後れするけどこれなら持っていても違和感ない。


「…………良かったですぅ。私の趣味も入ってるので少し不安だったんですよねぇ。」


「ありがたく使わせていただきます。」


 こういうものを貰ってしまうとお返しを考えるのが大変だけれど。3倍だっけ?

 気持ちの大きさに価値を付けるのは難しい。


 一度そのハンカチは丁寧にテーブルに置いて次に中くらいの箱を手に取った。


「……さて、では次は会長のを…………靴ですか?」


「あぁ、少々調べさせてもらった。」


 うん、どうやって? 俺自身、今の足の大きさとか大雑把にしか知らないけど……これ既製品じゃないよね?


「詳細なデータを持ってる人がいたのでな。これは一応父との連名だ。」


 誰だ? 先輩か?

 俺は思わず先輩を見た。


「問題です。君の制服の予備のサイズはどうやって調べたでしょう?」


「…………あの、ゴールデンウィークの?」


「そうそれ。」


「…………俺が制服依頼した店に情報提供をお願いした?」


「正解、調べてもらってた。普通は教えてくれないんだけど同じ系統の店同士で作るなら情報の共有をしてくれる。今回も多分同じルート。」


「確かに色々測りましたね……そんなものいるのかって言うものまで。」


「買い換えている風に見えなかったからな。父上からも余裕で資金提供が来たぞ。」


「……ありがたく使わせてもらいます。」


 凄く良いものだと言うのは見れば分かる。学園の制服規定は靴に関しては緩いがこれは運動靴だな。


 確かに俺のは革靴だし無理が出てたんだ。そろそろサイズ的にも見た目的にも買い換えないととは思っていた。


「それとは別に礼服用の靴も新調すると良い。全部一纏めは良くないぞ。」


「分かりました。」


「会長、付いていってあげて。」


「私か?」


「私より詳しい。」


「確かに……分かった。時間が合えば一緒に買い物に出るとしよう。」


「最後は私の。」


「…………これは、なんですか?」


 靴の箱を置き、小箱を開けると最後に出てきたのは小瓶。ラベルもなにもないから予想がつかない。

 結構お洒落な小瓶で中身はねっとりしてるのは分かる。


「ハンドクリーム。」


「ハンドクリーム……ですか? 俺の知ってるのと少し違う気が……。」


「開けて少し使ってみて。」


「では遠慮なく。」


 小瓶は蓋を外すと中はスポイトになっていた。


 軟膏みたいのじゃないから凄く違和感があるがスポイトも外して少し手の甲に落とす。

 ねっとりしてたけどベタつかない。少し広げてみたらスーっと消えるように浸透していった。


「……普段、洗い物とか水仕事任せちゃってるから。私のお手製、非売品。反応が良ければ商品化する。」


「無香……いや、凄く薄いですけど匂いがありますね。……ラベンダーですか。最近良く嗅ぐと思ったら……。」


「…………気に入らない?」


「いえ、ありがたく使わせてもらいます。」


「少し傷の治りを良くしたり、殺菌作用もあるから軟膏代わりにも使える。たまにマメ出来て潰れてたりするから変なのだと染みて逆に辛いと思って。」


「………………………………ありがとうございます。」


「その間はなに? 気に入らないなら……。」


「そうではなくて。……感慨深いなぁって思いまして。先輩が俺のために考えてくれてると思うと……。」


「本当に?」


「強いて言うのであれば疑問が一つだけ。何故ラベンダーなんですか?」


「…………秘密。」


 好きな花だから。答えは知ってる。


「…………ラベンダー、俺も好きですよ。」


 叩かれた。えぇ……?


「分かってて聞いた。意地悪。」


 先輩が赤い……? 珍しい。そんなに恥ずかしい理由だろうか?


 多分これ先輩の独占欲の一つの形だと思うんだ。私を気にしてって。


 ラベンダーは先輩の好きな花。ラベンダーは先輩自身。


 だから俺もそう見立てて返したんだけど……。


「聞かなくてもよかった。」


「俺、聞きたかったですよ? ラベンダーはお好き?って。だから振りましたし秘密にされてしまったので勝手に答えました。最近綺麗だと思うようになりましたね、ラベンダー。気高くて凛としていてカッコイイ。」


 …………あらら。会長の後ろに隠れちゃった。


「君は…………はぁ。そう見透かしてやるな。」


「俺はラベンダーの話をしてるんですよ? ラベンダーの匂いって落ち着きますよね。濃いとあれですけどこのくらい本当にうっすら香るくらいなら落ち着きます。良いものを貰いました。もちろん会長や先生のものも嬉しいですよ? 皆さん、ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」


「そうしてくれ。…………はぁ。」


「ところでラベンダーといえば背がピンと延びていて上の方に花をつけますよね。花もまた可愛らしくてちょっと前なんて思わず見惚れてしまいました。おかしいですよね、見慣れたはずなのに見惚れるなんて。綺麗なラベンダーが毎日見られるなんて頑張った甲斐があるってものです。可愛いなぁ、先輩……じゃなかったラベンダー。」


「後輩君の馬鹿!」


 おっと大きい声。先輩の大声とか初めて聞いた。


 …………可愛いなぁ。でもからかいすぎで可哀想かな?


 いいや、普段は俺がからかわれる側だしたまには良いだろう。


「ところでラベンダーにはリラックス効果がありますよね? 可愛いだけでなく癒してくれるなんて……。」


「ロレンス、やめてやれ。」


 会長は俺の頭を撫でながらそう言って宥めてきた。


「えぇー?」


「えぇーじゃない。そろそろやり過ぎだ。」


「…………だってラベンダーのお花が可愛いから。」


「勘弁してやれ。分かっててやっているだろう?」


「…………分かりました、やめます。代わりに会長を椿にでも例えて褒めましょう。」


「……花が好きなのか?」


「いえ、勉強しました。師匠からは花言葉や逸話など色々教えてもらいましたが主なのはここに来てからですね。」


「………………もうやだこの子。」


「気付いてしまいました? そうです、俺には花を薬にする知識はありませんでした。先輩の助手なら知ってて然りです。なので色々勉強して、ついでに花言葉なんかも改めて勉強しました。椿の花言葉は飾らない優美さなんかがあります。利用としては油が有名ですね。」


「いつそんなものを勉強する時間が……。」


「すいません、趣味です。息抜きに軽く。椿は下向きに花を付けますからそういう意味では芍薬でもいいですよ? 立てば芍薬と言いますし芍薬はピンと茎が真っ直ぐで頂上に一つだけ大きな花を付けます。結構背も高いんです。花のあり方で言えばこっちですかね?」


「…………全く。やめなさい。」


「はぁーい。」


 俺は大人しくやめることにした。会長が弟でも見るような目で見てきたから。


「…………後輩君は、意地悪。」


「いやぁ、可愛くってついやってしまいました。すいません、やり過ぎましたね。追い討ちをかけすぎました。でもありがとうございます、本当に嬉しいです。先生も、会長も。大切に使いますね。」


「…………気に入った?」


「えぇ、もちろん。そもそもこうやって誕生日にっていただいたのは領地の野菜を除けば前世のゲーム以来ですね。特別なものです。眺めてるだけでもにやついてしまいますよ。」


「………………なら、良かった。ちゃんと使ってね。」


「使いますよ。贈り物を飾るだけにするのは勿体ないと思います。擦りきれるまで使いますよ。これも中身が無くなっても瓶はずっと持っておきます。眺めてによによしますよ。」


 お返し、しないとなぁ……。


 一番は婚約指輪だろうけどこれは俺がそれに足る男になったときに一度に渡すから駄目だ。


 でも消耗品じゃなくて身近で、よく目にするものが良いな。


 となるとやっぱりハンカチやスカーフ、リボン、ヘアゴム、栞……ピンと来ないなぁ。

 貴金属も違う気がする。


 贈った経験がないから難しいんだよな……。


 実用性に偏りすぎるのも悪いか? 何か置物とか……あ、決めた。


 会長は自作のぬいぐるみ、先輩はキーホルダーを渡そう。先生は秘密。


「…………見えちゃいましたぁ……。」


 そう? 実家の先生の部屋は無趣味かってくらいそれっぽいものが少なくて少女と女性の間くらいでシンプルな色彩が見えた。


 多分好きな色は深い水色。濃い水色と呼ぶべきだろうか?


 となると落ち着いたものだ。趣味と外れるリスクはあるがその色彩のおパンティーでも……。


「何でですかぁ!?」


「やっぱり鎌かけだ。先生はまだ目を酷似出来る状況じゃないって分かってるんですから効きませんよ。」


 でもあれだな、大体同じくらいで贈れないな。


 まあ師匠、師匠、先生から手製のもの贈られてるんだから手製の物で返せるはずないんだけど。


 三倍って何よ? 例えばこの靴金貨数枚はすると思うけど値段を三倍にしたら金貨十枚越えか?


 そのくらいになるとドレスとか装飾品とかそういうものに限られてきてしまう。


 あっちは青天井だからな。じゃあ同じくらいって言われても高級感あるのよ。

 でもただ高ければ良いわけでもないし……結構難しい。


「気にしなくて良いんですよぉ。」


 気にするよ? 貴方達お嬢だから。


 俺の何倍も目が肥えてるから変なものを贈ると勘ぐられてしまう。


 差を付けるわけにもいかないし……考えてみるとこういう弊害はあるんだな。

 その辺の道端の花でも渡しておけば全身で喜ぶ子供じゃないんだから色々考えないと。


「…………やけに具体的ですねぇ?」


「何がですか?」


「道端の~です。」


「あぁ。やったことあるんで。」


「…………どういうことですかぁ?」


「つまんない話ですけど聞きます?」


「聞きたいですねぇ。」


「今世も前世も俺には幼馴染みがいるんですよ。前世の時は中学……12歳くらいから疎遠になって今世は7歳くらいからかな?」


「女の子……ですよねぇ?」


「そうですよ。これの更に昔、5歳になる前の頃ですかね? 転んで泣いてたりするのを慰めるのに俺は昔っから花を渡してたんですよ。その辺のたんぽぽだったり雑草みたいなものだったり。とりあえず泣かせちゃいけないと思って……変顔なんてのもやりましたけどね。」


「後輩君、生まれつきどころか前世から女誑しだと判明。」


「男が泣いてたら変顔率が上がりましたね。俺は昔からあまり泣きませんでしたから。たまーに逆ギレされて殴られたりもありました。懐かしいです。」


「後輩君、絶対結婚の約束とかしてるパターン。」


「してないですよ?」


「忘れてるだけ。」


「うーん……撫でたり背負ったりはしたことありますけど大人しく背負われている正確でもありませんでしたからね、二人とも。それに向こうから離れていくんです。」


「離れていくの? 何で?」


「恥ずかしいからじゃないですかね? 妹に嫌われたみたいで少しショックでした。」


「……年下?」


「奇遇なことに二人とも一個下ですね。」


「…………あー……読めた。残念、後輩君は私達のもの。前世の因縁だろうと幼い頃からの知り合いだろうと渡さない。」


「何で好かれてる前提なんですか……幼馴染み、男もいますよ。前は一人、今回は三人。」


「仲良かったの?」


「良かったですよ。前は死ぬまで仲良かったです。今回は……こっちも7つまでかな?」


 名前も顔も思い出せないけどね。話した内容と間柄は思い出せる。事故に巻き込まれてないと良いけど。


「でも多分後輩君が好かれてたと思う。」


「身内贔屓ですよ。」


「後輩君は軟派者。」


「酷くないです?」


「…………仕返し。」


「なら俺は日頃の仕返しに先輩が喋れなくなるまで褒めましょうか?」


「すいませんでした。」


「はい、こちらこそ。ということでご飯をですね。」


「………………取られちゃったりしませんよねぇ?」


「何を心配してるんですか。俺が蹴られることはあってもそれ以上はないですよ。」


 可憐はそんなやつじゃ………………。


「あぁ!?」


「どうかしましたかぁ? やっぱり結婚の約束してましたかぁ?」


「可憐と茂ですよ! 名前だけ思い出した! そうですよ、可憐と茂だ! 自分の名前すら思い出せないのに親友の名前思い出しましたよ! このゲーム薦めてくれたの茂なんですよ! そうだ茂だすっきりした!」


「はぁ……良かったですねぇ?」


「もう過去のことですけどね。やっぱり少しモヤモヤしてたんですね。あとこっちの幼馴染みはアイカですけどアイカもそんな感じじゃありません。あれは我儘で暴力的な妹です。」


 二人だとちょっと性格は違うけど。可憐はもっと静かだった。


 具体的に言うなら可憐は足の側面を蹴ってくるがアイカはドロップキックしてくる。あれめっちゃ痛い。


「アイカは本当ヤバいですから。背後から挨拶代わりに叩いてきて怒ってると背後からでもドロップキックしてくるんですよ? 超危ないですし避けたら怪我するから良い具合に衝撃逃がさないといけないんです。アイカはきっと魔物だってドロップキックで倒せます。前に細目の木を蹴り倒してるのを見ました。」


「木を……か?」


「拳くらいの太さの木が倒れてました。それが15歳のここに来る前の出来事です。一生喧嘩売りません。というかあいつが邪神を倒せばいい……。」


「役割を放棄しようとするな。」


「いや、自分でやりますよ? というかアイカがいたから安心して出てきたところがあります。父さんだけだと不安ですからね。けど……本当にヤバイんですって。」


 アイカは実にヤベェ奴に成長した。昔は病弱だったのに。


 本当おかしいよな、あいつ。作中全然名前聞かなかったのに。


 絶対喧嘩しない。というか出来れば何処かに嫁いで幸せになってほしい。切実に。


 いや、そりゃあ確かにうちも結構人数ヤバいけど。出ていかれると少しどうしようかとも思うけど。


 でもね? アイカさん、怖いのよ。あの木がベキベキベキって音を立てて折れるのとか軽くトラウマよ?


 俺だって全身使って折れるかどうかの細木が蹴り一発で折れるってどうなってんだ。


 そして俺、12歳までよく生きてたな。アイカって手加減出来ないだろ。

 かなり昔は病弱だったのにいつの間にやらこんなお転婆娘になって……。


「そんなに言うなら今度会ってみたいな。」


「機会があれば。」


「来年は一週間くらい居よう。」


「……マジで言ってます?」


「本気。」


「王子達も来るんですよね? 来年は光と闇の精霊王の所に行きたいんですけど……? 他国なんで遠いんですよね。」


「他国は無理。」


「なら単体で行くしかないですね。」


 あれは無限ダンジョン100層ソロいけるなら余裕で行ける感じだからコツコツ頑張ろう。


「殿下が通れない。流石に王族を連れていくのに行き先不明は無理がある。ただでさえ護衛がゾロゾロって言うのを阻止したいのに。」


「そこはどうにか……。」


「ならないこともないけど知られたら大変。」


「ならやっぱり俺一人で行ってきます。」


「大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ。」


 正直キツいかなぁ……でも身軽なのって俺くらいだし。アソエルもあまり連れ出せないからな。


「無理だそうですぅ。」


「無理じゃないですよ。」


「…………まあ、考えてみる。もしかしたら公務関係で行けるかもしれない。どこ?」


「隣のミゼンダ公国とロンダレス皇国です。」


「反対方向……それにミゼンダは難しい。まだ仲良くなかったと思う。」


「いや……そうでもないな。今なら殿下が書状を持って一時協力を申し出ても違和感はない。」


 そういやロンダレス皇国にはサブヒロインとサブヒーローがいるな。サブヒーローはミゼンダにもいる。


 先生以外の人は何かと面倒だからなぁ……関わりたくないし関わらせたくないところだ。


「……誰……ですかぁ?」


「第一皇子、第四皇女、第二公子ですね。」


「んー……公子は少し複雑ですねぇ。」


「まあ放っておいてもこっちの国は難民問題が起きるくらいなので大丈夫ですよ。」


「……難民、ですかぁ?」


「再来年に内乱が起こりますから。ロンダレス皇国は平和そのものですが来年に留学生が来ますね。」


「内乱……ちょっと難しい話を振られましたねぇ。」


「回避できなくもないですけど難しいですよ? あっちの国にしばらく滞在して情報収集、密告で収まるはずです。内容は知っていますが回避は結構難しいんですよ。」


「公国が内乱を起こすなら良い感じに介入して取り込んでしまうのも手ですけどぉ……教育には良くないですねぇ。」


「良くないですね、何万って死にます。ただ俺は手一杯なので他所の国は正直どちらでも。余計なことをすると戦争になりかねませんから俺には下手に手を出せません。」


「…………一応、報告しておきますねぇ。」


「内乱ってことは前々から?」


「いや、急拵えだったはずですよ。だから止めることが可能なんです。魔王が復活して混乱している隙に乗じて第二公子が企てたものだったと思います。始まりは第一公子の暗殺からでしたね。そこから割れて始まるはずです。」


「第一公子はあの遊び人で有名な……。」


「その通りです。第二公子の何処に子供があるか分からないような人間に国を任せられないという話も納得です。どこぞの王子が自らを改める話でもありました。」


「…………最後は聞かなかったことにしますねぇ。」


「そうしてください。」



 俺達はそうやって話していたが、時間もあるので適当なところで切り上げて一緒にご飯を食べ、楽しい夜を過ごした。


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