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34 暴露大会 その後


 本日四話目です。



 一人でぽけーっとしてたら少し怒っている先輩に呼び戻された。なぜぇ?


「後輩君、私に隠してることない?」


「隠し事……ですか? 何かあったかな……伝えないと危ないので大体伝えてるはずですけど……あ、会長と先輩がくっつく話はしてませんね。」


「それはそれで気になるけどもっと大事なこと。」


「えぇ……? 俺は無実なはずです。」


 あ、王子が何か口をぱくぱくしてる。た、ん、じょ、う、び?


 誕生日?


「先輩の誕生日って3月でしたよね? 3月の13日。まだ過ぎてないはずですけど……。会長も11月3日ですよね? ……あ、もしかして先生? 先生は知りませんね、確かに。いや…………思い出した、12月31日ですよ。まだじゃないですか。」


「君の、誕生日は?」


「俺の? ……あ、先月でしたね。先輩、俺と同い年ですね。」


「何で言わないの。お祝いしたかったのに。」


「20日がドッキドキで忘れてました。お祝いとかしないものですから。書類に書くことはあっても実感って無いんですよね。」


「じゃあしよう。すぐしよう。」


「良いですよ、しなくて。どうしても気になるなら会長と一緒にお祝いしてください。怒ってたからびっくりしましたよ。」


「お祝いするから。絶対するから。今すぐしよう。」


「そうですねぇ……あ、じゃあこれで済ませてください。」


 俺は先輩の前に膝をついて先輩の左手を取る。その手の甲に軽く唇を落とした。


「これがお祝いと言うことで。いやー、嬉しいなー。」


「ふざけないで。」


 ………………あら、ヤバイやつだ。え、何でこんな怒ってんの? 適当に流したから?


 でもなぁ……。


「…………そうだ、約束ならあったじゃないですか。やっぱりどうせならちゃんと選んでもらえると嬉しいので会長の誕生日にしてほしいです。」


「何の話?」


「ほら、ハンカチくれるって言ってたじゃないですか。」


「何もなくてもあげる。」


「えぇー? 特別な日に特別な人から貰ったものって些細なものでも嬉しいじゃないですか。特に日常で使うものなら見るたびに思い出しますよ?」


「良いこと言うわ。」


「えっと……ありがとう? お嬢。」


「お嬢は……ああ、いいわ。そのままで。」


「そう?」


「……こっち見て。」


 はいはい。…………ん?


「何だ、気づかなかった。ちゃんと見てないと駄目ですね。ほら、大丈夫ですよ。何を話したか知りませんけど俺はここにいます。」


 なんだか不安そうな目をしてたから抱き締めた。目は口ほどに物を言うってね。


「あちゃー……。」


「なんですか会長、そのあちゃーは。」


「何故君は気付いてしまうんだろうな?」


「そりゃあ毎日顔合わせてれば分かりますよ。何ですか、家族の話でもしたんですか?」


「……会長が後輩君に嫌われるって言った。」


「俺が? 先輩、俺が嫌ったくらいで嫌いになってくれるんですか? それだったら俺いくらでも余裕で嘘つきますよ? 先輩はもう一人でもないですし先輩のお兄さんはムカつきますのでぶん殴るとしても俺いない方が安全で幸せな日々を送れるのでは?」


「そんなの。」


「無いでしょう? 大丈夫です、嫌いな相手に命賭けられるほど俺は聖人じゃないです。そもそも何で嫌われるなんて言われたんですか?」


「……重いって。依存しすぎって。」


「あー……それは確かに。でもそれが嫌われる理由なんですか?」


「……違うの?」


「不安にさせたならすいません、俺の落ち度です。確かに最近の先輩は少し依存しすぎの傾向もありますね。でも逆に先輩は俺に依存されて先輩しかいないんだって言われたらどうします?」


「…………ちょっと嫌。でも嫌いにはなれないと思う。」


「なら俺も嫌いになんてなりませんよ。……はぁ、人前なのに。」


 俺は自分の背中で視線を切って先輩の唇に軽く口を付ける。


「俺の初めては師匠だったので二回目です。とりあえず満足しておいてください。隣に俺がいるって安心出来ないならいつでもこうして抱き締めます。甘えたいなら甘えてください。よっぽど度が越えなければ大丈夫ですよ。」


「…………………………度が越えるって?」


「自分の物にしたいから死んでくれ……みたいな?」


「それはない。」


「なら大丈夫ですよ。まだ不安ですか?」


「………………大丈夫。」


 先輩は離れてふらふらと会長の元へと行った。


「会長、なんかぶわーって、ぶわーってする。」


「ちょっと何言ってるか分からないぞ?」


「なんか……なんか、頭がぶわーって。ぶわーってなって凄い幸せ。」


「駄目だ、分からん。」


「私も分からない。何これ? 嵌まりそう。」


「これ以上嵌まるんじゃないぞー。その先は沼だからなー。」


「分かってる。……さっきはごめんなさい。」


「あぁ……私も言い過ぎたな。」


「会長、何言われたんですか?」


「君以外にも選択肢があると言われた。」


「おっと? それは先輩が言っていいやつじゃないですね。先輩が引き込んだのに。それに会長が会長でいられる相手って限られてると思うんです。自分より強い女性が駄目なら無理ですし会長より強い男性って一握りですよね? 心でも武力でも学力でもいいですけど会長に勝てるのって少なくとも学園にはいませんよね? 前後二年含めてもいませんでしたよね? 言うほど選択肢ありますか? ……確かに選ぼうと思ったら星の数ですけど。頑張りますね。」


「………………ごめんなさい。考えずにもの言った。」


「気にしてない。私も分かってて言い返したんだ、大人げなかった。」


「一つしか違わないですからね。喧嘩出来る仲になれたんなら距離が近づいたって事じゃないですか? 良かったですね。でも次やったら俺のために争わないで! ってふざけますからね。」


「ほら見たことか。やっぱり一発で収まった。」


「何が?」


「痴話喧嘩を始めたから君を呼ぶのが早いと言ったんだ。やっぱりだった。」


「そりゃあ三人もいれば不安にもなるだろ。俺、彼女達が幸せなら舌噛んででも耐えるからな、そのせいもある。それらは全部俺の不徳の致すところだ。誠心誠意謝るしかない。」


「それにしても……君も情熱的だな。」


「何の事だ?」


「人前であんなことをしたじゃないか。」


「何の事だ?」


「さっき……。」


「な、ん、の、こ、と、だ?」


「……いや、よそう。怖いぞロレンス。」


「変なことを言うお前が悪い。俺は何もしてない。」


「……何でもないことなの?」


 面倒なこと聞かれたぞ……? どうするか……。


「…………実は俺、師匠直伝の中に口もあるんですけど試します?」


「何でもなかった。」


「その師匠とは……?」


「俺の師匠。詳しくは秘密。」


「恐ろしい。少し確かめたかっただけなのに脅された。」


「正直なにもしてないのと変わりませんよ。」


「それはないんじゃないかしら?」


「うんうん、多分それであってるから突っ込まないで。絶対ろくなことにならない。」


「試してみます?」


「絶対に嫌。人前。」


「ならやめましょうか。会長も物言いたげですね?」


「遠慮する。」


「……さて、話も終わったから解散しようか。」


「一応アリバイ作りに色々教わってから解散しよう。」


 とのことなので会長が学園の地図を出し、バーっと説明してから解散となった。




 そして現在研究室。


「……あの、先輩?」


「なに?」


「何で抱きついてるんですか?」


「攻めるのは得意だけど攻められるのは苦手な婚約者を繋ぎ止めるため。」


「お昼作るので離れてください。」


「いーやーだー。」


「子供ですか……。」


「嫌なものは嫌。」


「……ずるいと思うんだ。いつもいつもずるいと思うんだ。変わってくれ。」


「いーやーだー。」


「ずるいですよねぇ、いつもプラトネスさんばっかりぃ。」


「しかも今日とうとう唇を交わしていたぞ。」


「なんですかそれずるいですぅー! ロレンス君、私と大人のキスしましょうよぉー!」


「外に聞こえますよ。」


「防音張ってますよぉ。」


 いつの間に。何も感じなかったぞ?


「……大人のキス、したいんですか? 帰れなくなりますよ?」


「それは今夜は返さない的なあれですかぁ?」


「腰が砕けて動けなくなります。」


「……キスだけでですかぁ?」


「そうですよ? 俺も驚きました。師匠にやられたんですけど本当に力入らなくて。」


「なんてものを仕込んでいるんだ父上は……。」


「酷いのだと片手で気付かれずに出来るブラジャーの外し方なんかもあります。」


「そして何故それを習得してしまったんだ君は……。」


「教わったので。実践経験がないので実践経験してきましょうか? 歓楽街で適当に。」


「後輩君の初めては私がいい。病気になるかもしれないしやめて。」


「最初は私ですよぉ?」


「私は後でもいいが順番が回ってこないのは酷い。」


「適当に済ますの駄目ですか? スマートにリードしたいんですけど。」


「駄目。」


 というかちょっと溜まってるからガス抜きしてきたい。


「駄目。そんなところに行くくらいなら私で済ませて。」


「何言い出してるんですか、我慢してるのに。」


「避妊薬作ればいいだけって気づいてるくせに。」


「……すいませんでした。多分先輩としてしまったら溺れるので余裕作っとこうと調子に乗りました。」


「どういうこと?」


「見ず知らずの人ならまだしも先輩だと……ね?」


「興奮しすぎちゃうんですねぇ。」


「そういうことです。経験無いと仮面も剥がれやすくなるので上手くなって本番に備えようかなって……。」


「でも婚約者の前で見ず知らずの女性としてきますって非常識だと思うんですよぉ。」


「おっしゃる通りで御座います。」


「逆に嫌でしょぉ? 私達が他の人と済ませてたらぁ。」


 いいんだけど……。


「…………………………えぇ?」


 元々先生はそうだと思ってた。


「……もしかして、面倒臭いですかぁ?」


 いや、最初の男になれるのは光栄だし嬉しいけど別にそこに拘ることもない。


 もし前に好きな男がいて結果的に結ばれなかったのだとしても。もし過去に未練があったとしても俺がやることは変わらない。


「でも嫌なんでしょぉ?」


「ノーコメントで。」


「……ふふっ、駄目ですよぉ? 分かりましたねぇ?」


「分かりましたって。」


「密談は良くない。」


「くっつきすぎは良いんですかぁ?」


「今日は特別。」


「それだと毎日が特別になりますよぉ?」


「毎日が特別。」


「先輩、そろそろ本当にお昼作らないと。」


「今日は教諭が作ってくれるって。」


「言ってないんですけどぉ?」


「ご飯終わって二人が帰ってからでも良いじゃないですか。どうせ最後は二人きりですよ。」


「その時はきっと許してくれない。」


「否定は出来ませんね。」


「今日はこうしてたい。」


「先輩があと10歳下なら許しますが16歳児は許しません。」


「いーやーだー。」


 子供か。いや、この人子供っぽいんだけど。クールな印象どこいった。


「先輩、最後ですよ。離れてください。」


「…………………………ぶー。一回離れた。だからまたくっつく。」


「次はありませんからね?」


「…………じゃあ代わりに何してくれるの?」


「ディープキス?」


「それはいらない。」


「我が儘ですね。」


「今日はベタベタに甘えたい。」


「今日だけで済まないでしょう。ほら、いい子にしてお昼終わったら少しだけやってもいいですから。」


「えー?」


「どっちが年上か分かりませんねぇ?」


「…………私がお姉さんだもん。」


「今同い年なんですよねぇ?」


「私が、お姉さん。」


「でも駄々をこねてばかりじゃないですかぁ。」


「………………お姉さん。」


「はいはい、ネス姉さん。俺仕事があるから離れて。」


「…………………………今のもう一回。」


「ネス姉さん?」


「……満足したから離れる。」


 なんなんだ一体……。


「……私には?」


「会長も呼ばれたいんですか? ……セイラお姉ちゃん?」


「私はぁ……。」


「ベルねぇ。」


「よし、これはいいな。たまに呼んでくれ。」


「…………まあ年上でお姉さんなんで良いですけど。」


「何で呼び方変えたんですかぁ?」


「語呂です。」


「お姉さん……良い響きですねぇ。」


「先生は小さいですけど大人のお姉さんって感じで素敵ですよ。」


 …………あー、遺恨を残したくないからもう少しやっておくか。緊張するんだけどなぁ……。


「やっぱり会長は俺より大きいですね。」


「…………何だ、急に?」


「甘えたいときに甘やかすのが俺の役割です。ほら、先生も。」


「……こっちは数秒なんですねぇ。」


「冗談でなくもう12時になりますからね。まあ贔屓だと言われたらすいませんとしか。確かに現状は贔屓になってますからね。」


 同じ時間抱きついてたら湯立っちゃうしね。


「…………決めた。」


「何をですか?」


「私、我慢する。」


「何をですか?」


「後輩君を。」


「先輩が?」


「そもそもこの関係性を迫ったのは私。後輩君が答えたからと言って後輩君に全部背負わせるのは間違ってる。安全策を取ったのに心変わりしたからって行動するのは三人に失礼。ギスギスしたくもない。」


「我慢できるんですか?」


「する。けど……。」


「けど?」


「………………ご褒美欲しいなって。」


 ご褒美ねぇ?


「頑張れたら何をしてほしいんですか?」


「……一日中理由もなくくっついていたい。」


「比喩的な一日ですよね?」


「もちろん。」


「何故こちらを見る。それだと自立出来そうにないから却下だ。」


「なら自立ってなに?」


「甘えすぎないことですかねぇ?」


「それは酷ですよ。」


 いや、俺が言っていいことじゃないんだけどね?


 この人多分、恋愛だけじゃなくて親愛も多分に混ざってる。敵しかいなかったからその分甘えてる感じがする。


 そりゃあ会長も先生も同じっちゃ同じだけど。


 でも先輩水準に無理矢理合わせても無理が出そうなんだよなぁ……どうしよう?


「…………そっか。そういうことだ。」


「何を理解しちゃったんですか?」


「いや、良い。ね、教諭?」


「……まあ及第点に辿り着いたので良いでしょぉ。私達も意地悪を言いたいわけではありませんからねぇ。ずるいとは思ってますけどぉ。ロレンス君はプラトネスさんに甘いですぅ。」


 だって大きな子供なんだもの。

 先生も会長も大人だからつい甘えてしまう。


 それが良くないとは分かってるんだけど……中々二人きりと言うのも難しい。


「……心が離れてしまうのが不安なんですよぉ。貴方は不安じゃないんですかぁ?」


「全然不安じゃありません。もしこの関係が崩れてしまったら俺は親戚を探すだけです。」


 新しく誰かを妻に……とは考えられない気がする。


「…………そういうところですよぉ。もっと主張してくれても良いんですよぉ?」


「……女々しくありません?」


「大丈夫ですよぉ。ちょい悪くらいのほうがモテますよぉ?」


「そう言う奴はウザいと思うんですけどね。」


「ならちょっとだけ主張してみましょうよぉ。プラトネスさんみたいにぃ。」


 んー、じゃあ髪で。髪にキスしましょ? しました。


「軟派者ですねぇ。」


「軟派男に引っ掛かる駄目女の先生が何を言います。先生は男性を見る目がないんですから。」


「…………父様、なにを教えてるんですかねぇ?」


「先生は男運が無いらしいですね。」


「……五月蝿いですねぇ。」


「俺としては嬉しい限りですけどね。さあ先生、昼作るの手伝ってください。」


「私も手伝おう。」


「……私だけなにもしないのは仲間外れな感じするから手伝う。」


 俺達は四人で少し狭くなった厨房で楽しく料理をした。



 お疲れ様でした。


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