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24 父と子


 本日三話、ラストです。



 ……ん? うん? 父上?


 あ、防音張り直されたな。


「ししょーは騎士団長さんだったわけですか?」


「………………ああ。」


「では師匠、ご無礼。」


 俺は素早く背後に回って君に腕をかけチョークスリーパー。

 やっぱ師匠には綺麗に入らないなぁ、ずらされた。


「………………何をするのかな、ロレンス君。」


「終わったら殴ってくれていいんで今は大人しく苦しんでください、サンドブルム伯爵。」


「……君は私に恨みでもあるのか?」


「あります。俺のはこれで色々清算します。黙って首絞められてください。後で会長に一緒に土下座しましょう。俺は師匠も会長も大好きなのでこれで終わらせます。大人しく制裁を受けてください。」


「…………ロレンス、やめろ。」


「ですが俺は会長のお父上にお会いしたらぶん殴ると決めておりました。」


「やめろ。」


「…………はい。じゃあ話し合ってくださいね。もし脱線したら軽蔑します、師匠。」


「…………事態が飲み込めないのだが。何故セイラがここに?」


「それはこちらの台詞ですよ、父上。遠征に行くから夏休みは忙しいと聞いておりましが……何故ここに?」


「…………それは……。」


「……なんだ、修羅場か。そちらのお嬢さんはカンの娘さんだったか。……お前さんやっぱり家族放って来てたのか?」


 丁度父さんが戻ってきてまた微妙な空気になった。廊下だからな、戻って来るだろう。


「放っては……。」


「いないと俺の前で言えるか? 俺は最初にお前さんに家庭教師の斡旋を依頼したとき、お前さん本人が来ると聞いて聞いたよな? 家族は大丈夫か、仕事は大丈夫かってな。お前さん大丈夫って返したよな? ……で、言い訳は?」


「………………申し訳ない。」


「言い訳をしろと言ったんだが? ロレンス、締め続けていいぞ。」


「でも娘さんから停止命令が……。」


「なら娘さんにしばかれろ。そんで娘さんはロレンスと俺もしばいていいぞ。決断したのはこいつだが引き留めたのも帰さなかったのも俺達だ。忙しいの知っててな。すまなかった。」


「師匠、俺は悲しいです。師匠とは一緒にいたかったですが師匠が忙しいのも分かってました。俺は家族を蔑ろにするくらいなら師匠が師匠じゃなくても良かったのに。」


「…………責めるのはやめてくださいますか? まずは理由を聞きたい。……母上と私達に愛想を尽かしたのですか?」


「違う……と、否定できる要素はないな。」


「師匠、ぶん殴りますよ。気持ちを吐けって言ってるんです。それじゃあ会長が可哀想ですし勘違いします。俺は二人の喧嘩を見たくないので正直に話してください。言い訳でも、何でもいいんです。」


「…………私は貴族として生まれて、そう生きてきた。予定通り結婚し、娘と息子を儲け、騎士団長となった。……でも、どこか満たされなかった。妻も子供達も愛していた。仕事に不満があるわけでもなかった。それなのにだ。……贅沢な悩みだとは分かっていた。だから言わなかった。シングと出会ったのは偶然だ。長いこと……二人が生まれる前からやり取りをしていた。シングは年に一度会う貴重な友人だったよ。生まれて初めて心から友人を得た気がしてた。……その友人から三年前、頼みがあった。優秀な息子を学園に通わせたいから家庭教師を紹介してほしいと言うものだった。この田舎に来てくれる家庭教師は少ないと思ったし、シングの息子と言うことで一度私が会うことにした。……そこでロレンス君と出会った。初めは一回だけ会って見極めて、別れるつもりだったんだ。それが……つい、次に会う約束をしてしまった。素直に尊敬され、教えることを吸収する様に私は才覚を見たし……快いと感じた。そしてまた来て……彼は手のかからない弟子だったから畑やその他の仕事を手伝うことにした。そこでも私はかつてないほどの充足感を得て……いつしか私はこの地に魅了されていた。」


 ………………うーん?


「私の子供達も手のかからない子達だった。だから私はつい大丈夫だろうと妻と子供を置いて……時間が出来れば、近くに来れば寄るようになっていた。……忙しい、仕事だと言い訳をして、この地に通った。…………そのせいで、放っておいてしまった。すまない。ずっとシングにも、ロレンス君にも、セレアにも……申し訳ないと思っていた。……寂しい思いをさせたな。お前の強さに甘えていた。」


 いやいや、師匠? それは最近の話で娘さんは今十七ですけど……? それまで放っておいた理由は……?


「…………ふふっ。ふははっ! ふはははははは!」


 会長が悪役みたいに笑ってる……どうしたの、大丈夫? 師匠殴る?


「なるほど? 父上はロレンスに会うために私達を放っておいたのですか!」


「…………すまない。勝手なことだが……実の息子とすら思っていた。」


「はははっ! 息子!」


「……会長?」


「これはいい! ロレンス! 結婚するぞ!」


「会長?」


「あー、愉快だ! 血筋だなこれは! あははははっ!」


「…………セイラ? 大丈夫か?」


「実に愉快ですよ、父上! 私もロレンスを気に入っている! なのに父上に先に気に入られていたなんて! ああそうです、私は寂しかった! それを埋めてくれたのは……ロレンスなんですよ! 私だってロレンスが大好きだ! 私だってこの地が良い場所だと思う! 母上は気に入らないだろうが、私は大変気に入った!」


「…………………………ちょっとロレンス君。娘が話通じないから説明してくれるか?」


「師匠も会長も俺が気に入った、結婚したいから承諾しろって事だと思います。」


「…………えぇ? サンドブルム伯爵としては承諾しかねるのだが……。」


「拒否したら母上に言いつけますよ!」


「……はあ? ロレンス君、うちの娘に何をしたんだ?」


「口説きました。そこの横の二人と並列して。」


「殴っていいかい?」


「どうぞ。」


 俺は師匠の首にかけていた手を解いて目を瞑り歯を食い縛ったが、ぱしっという音はしたがいつまで経っても衝撃は来なかった。

 恐る恐る目を開けると拳が目の前で止まってる。その原因は……会長?


「何故止める……というより、こんなに力が強かったのか……。」


「そうですよ。父上は私を知らなすぎる。父上にロレンスを殴る権利はありません。」


「俺にはあるな。」


 ごつんっと今日一いいものが頭に入った。俺は黙って踞る。これは誤魔化していい痛みじゃないから叫ばないし文句も言わない。


「私達が迫ったんですよ。外堀まで埋めて。……父上。」


「……何かな?」


「ロレンスにナンパのイロハを教えたのは父上だそうですね。」


「カン、歯を食いしばれ。」


「ほんの出来心だったんだ……って本当に痛いな。」


 師匠も殴られた。今日の父さんは暴力的だ。何か嫌なことでもあったのか?


「それは実に役に立った、感謝しますよ。そのお陰で私は今、素直に言える。私はロレンスが好きです。たった四ヵ月とか、身分の違いとか、年齢の違いとか、立場の違いとか。そういうものを私も越えてみたくなるほどに。父上、少し前に知りましたが私は滅法賭け事に強いようです。ですから父上に提案しましょう。ロレンスに私をベットしてください。必ず後悔させません。」


「会長……それは俺のセリフ……。」


「はっはっは、悪いな。私はこういう女だ。そこらの男より度胸はあるぞ。そういう女は嫌いか?」


 会長がその問を放ったときの顔は自信と決意と信頼に満ちていて……そんな中に俺にしか分からないような不安が混ざっていて。

 そんなの……。


「大好きです。」


「そら来た。私は君を信じてる。父上も君に才を見た。私と父上……学園の頂点、生徒執行部部長と数多の騎士の頂点、騎士団長のお墨付きだ。私が見る、存分に成長しろ。」


「……はい!」


「良い返事だ。彼は私に並べる、背中を任せられる。こんな気分が高揚するのは初めてだ。……父上、証明して見せます。彼が私に相応しいと。そうなるように育てます。黙って私と彼の婚約許可書に判を押してください。私と彼が婚約したら名実共に彼は父上の息子で貴方はこの領地と本当の縁が出来る。四六時中来ても誰も何も思いません。父上はまだ現役ですが十年後、二十年後にこの地に住まうつもりはありませんか? それまでに母上が納得できるほど発展させて見せます。」


「領民の意思とかは……。」


「ここを殺すつもりはない。だがあまりにここは何もなくあまりに人がいない。穀倉地帯でも作り上げる気持ちでいろ。こっちにはプラトネスだってついてる。」


「…………やはり……。」


「覚悟を決めろ。私と共に歩むなら君が歩む道も決まるだろう? 私はひとまず君が卒業するまで騎士でもやっている。私が父から学べることはまだ多い。全部盗んで君に(もたら)そう。私は既に君を取り込むつもり満々だからな! 君は有能で、私が惚れた男だ。」


 全肯定……こりゃあ、夏の終わりは生きてるかな。

 でも……。


「覚悟ならとっくに。」


「よろしい、後は頼れる先輩に任せなさい。今にこの父上を黙らせて正式な書状を用意するから。逃がさないからな?」


「会長かっこいー。」


「そうだろう? 評判はいいぞ。」


「男性に告白された回数よりも女性に告白された回数の方が多いんですもんね。」


「そんなことは知っているのか!?」


「会長は素敵な女性ですからね。」


 頭を抱える父さんと師匠。痛みは精神的なものか物理的なものか……。


「……そこの、お嬢さん方。お名前は?」


「プラトネス、姓は名乗りません。」


「ミラベル・ヴェクターですぅ。ヴェクター侯爵家長女なんて肩書きがありましたねぇ。今はしがない教師ですぅ。」


「君は何て人を誑し込むんだ……。」


「俺が明確に意思をもって口説いたのは一人ですよ。不義理は百も承知で全員受け入れることにしたんです。俺の評判はどうも地の底から復帰しないようですね。」


「…………君の評判が地の底? 何故だ?」


「彼は甘すぎます。」


「甘すぎますね。私は報復しようとしました。」


「学園ではもう周知の事実だったりするのか?」


「しないんですよ、父上。私とプラトネスに気に入られてるという認識はあるでしょうけれどね。……本当に腹立たしい。彼が止めていなければ全員処罰したものを……。」


「公私は分けるべきだよ。」


「分けたら全員処罰していました。私の目の前で堂々と良くもやってくれましたよ。きっと全員その場で叩きのめして行事を一つ潰しましたね。彼が止めたから私もプラトネスも……なんなら第一王子殿下やローゼンシルト公爵家のご子息、リリエルトン公爵家のご令嬢まで矛を収めたんです。」


「あの方達は確かに怒りそうですね。」


「…………君はたった四ヵ月で何をやっているんだい。」


「女性を口説いて野次馬して、踊って勉強して仕事してました。」


「きちんと答えなさい。」


 そう言われてしまったので仕方なく丁寧に説明することにした。


「そうですね……まずはロレンス君が首席だと言うことをご承知置きください。」


「……首席だったのか。」


「特待生ですよ、ぶい! 父さんには喜んで報告したのにただの合格としか認識してくれませんでした。」


「…………それは、災難だったね。」


「師匠が褒めてくれたら満足するのであとで褒めてくださいね。それで、当然Aクラスなわけです。王子殿下とか公爵両家の方々は同じクラスですね。そこから繋がりができて、少しは関わることになったんですけど……ゴールデンウィークに嵌められまして。危なく血を見る前に先輩や会長、王子殿下や公爵両家の方々に助けていただきました。あとは煽ったり覗いたりで殿下に気に入られ、何故かご両名にも気に入られました。時はしばらく経ち歓迎パーティー、成績への嫉妬か人脈への嫉妬かそれはもう空気が悪かったんです。」


「悪いどころでありませんよ。入場で嘲笑、その後は罵倒や物を投げる事までありました。彼はそれでも思い出となるだろうからと中止だけは止めたんです。その後、彼の服が汚れてしまったのでお色直しをして私達と躍り、殿下とすら踊ってました。とても楽しかったです。……そう、良い思い出を作られたんですよ、彼によって。私にとっても会長として彼と参加する貴重な機会でした。台無しにされて心底怒っていたのにたった一度のダンスで塗り替えられたんです。……彼に仕込んだのは父上ですね、それもお礼を申し上げます。」


「彼は真面目だからなぁ……ステップを見せて指南書を作り渡したら次の時には習得していたよ。」


「師匠の指南書は今でも持ってます。色々読み返したり反復したりして忘れないようにしてるんですよ。」


「真面目だろう?」


「俺なんて先輩と比べたら……先輩は一度覚えたら忘れませんから。会長だって言われれば思い出します。俺は忘れてしまうので習得に時間が……もっと色々覚えてこなしたいのに。」


「真面目ですね。」


「努力に価値はありません、大事なのは結果です。俺はもっと努力をしないと……。」


「君は昔から根を詰めすぎだよ。」


「足りない分は努力と時間で補わないとあっという間に置いていかれて忘れられるんですよ、師匠。」


「何がそこまで君を駆り立てるのか……。」


「後輩君、いつ勉強してるの? 授業を受けたり私の手伝いや家事をしたり忙しいよね?」


「俺ですか? 空いた時間と夜が主です。あとは料理中とか掃除中とかですかね? 危なくないことをしてるときは頭の中で覚えたことを反復させたり手を動かしたりします。一発で覚えた気になっても忘れてしまっては二度手間なのでどうにか習得できるよう頑張ってますよ。そうそう、期末も首席は取れましたが6点も落としてしまって。ケアレスミスが多かったんですけど一問だけ根っこから間違ってたんです。初歩の部分で勘違いしていたことに気づかなくて。あれは悔しかったですね……次は満点目指します。不甲斐ない助手ですいません。」


「…………真面目?」


「完璧主義だな。」


「会長、一つ間違えば人が死ぬんですよ? そういう場所にいるんです。知りませんでした、忘れてました、間違えましたじゃ済まないんですよ? 完璧は前提、その上で付加価値を付けないと意味ないんです。」


 研究室だけじゃなくて他のところでも。俺が一つ見逃しただけで大勢死ぬ可能性があるって考えると欠けてるところは許せない。


「…………君は優しすぎるよ。」


「優しくありませんよ? 甘いとは思いますけど。利益と不利益を天秤にかけて不利益が基準を越えれば容赦しません。あと普通に怒ることもします。」


「とりあえず、話を戻すぞ。……あとは次席を救ったりもしていたな。」


「あれは天から薬が落っこってきたんです。俺は次席殿と一緒にいただけで何も知りませんし何もしてません。」


「私に剣で勝ったり。」


「負けないだけで勝っていません。本気なら瞬殺ですよ。魔法は切れませんから。」


「ああ……君の剣か。あれは私が教えるには潰してしまうと思って思い思いに伸ばさせたんだ。」


「やはりですか。あれは少々矯正していきます。」


「……君は何をしに学園へ行ったんだ?」


「師匠には話したでしょう?」


 今も昔も変わらない。俺は、領地を豊かにしたいだけだ。


「聞いたけれど……なぁ? こんな偶然があるのか?」


「そのようです。彼は奇跡の申し子ですね。人に愛され、運命に愛されている。」


「運命は女神様らしいですけどいいんですか?」


「……勝利も女神らしいが私についているし大丈夫だろう。神は見えない。」


「……色々やらかしたんだね、ロレンス君。」


「なにもしてません。俺は無実です。いっつも俺を蚊帳の外にして皆で話を進めて俺を持ち上げるんです。陰謀ですよ。落とされないように注意しないと……。」


「歓迎パーティーの話を聞かせてくれないか、セイラ。」


「良いでしょう。」


 何で俺に聞かないの、師匠? 言わないけどね? 親子の対話に挟まるほど無粋じゃないから。

 でも何で当事者の俺じゃないの? ちゃんと答えたよね?


「元々、私がロレンスと踊るつもりでパートナーを付けないよう頼んだんです。なので一人で入場してきたのですが……ざわつく程度ならいざ知らず、堂々と嘲笑と侮蔑を向けたんです。その時点で私は怒ってしまって新入生の代表挨拶や開会の言葉などを置いておいてロレンスを壇上に上げたんですよ。」


「それで?」


「もっと怒って一人一人潰そうとした人間がやって来たので交代しました。」


「それが私です。私の助手を学園から追い出そうなどふざけているので逆に全員追い出そうかなって思ってました。」


「だろうなって思ったので粛清が始まる前に俺が代表挨拶として乗っ取りましたね。」


「何を言い出すかと思えば少しは私達の溜飲を下げるためなのか新入生を煽ってましたね。そういえばまた首席だったそうだが煽り返したのか?」


「してませんよぉ。というかその場はもっと酷かったですねぇ。」


「あれくらい普段通りですよ?」


「……あれで、ですかぁ? ……怒るべきですよぉ。」


「俺が怒ったら粛清しちゃう人がいるので怒りません。」


「…………紙屑投げられてましたよねぇ?」


「ごみはごみ箱に捨てるって常識もない人達が同輩にいるとは思いたくないですね。」


「足かけられそうになってましたよねぇ?」


「踏みつけてやりましたね。」


「蹴られてましたよねぇ?」


「結構よくあります。背後からやられるので犯人の特定ができないんですよね。そのうち窓から叩き落とします。」


「死んじゃいますよぉ。……私も、あれを見ると教師として何が正しいのか分からなくなりますねぇ。止める間もなかったですからぁ。」


「服が汚れるのは勘弁してほしいですよね。先輩が心配する…………あ。先生のバカ。」


「誰?」


「教えませんけどねぇ。」


「じゃあ調べてその家を滅ぼそう。」


「物騒ですよ。」


「大丈夫、揺するネタならある。」


「駄目ですからね。」


「なんで? 後輩君は何か悪いことをしたの?」


 結構存在が……? 普通の子供じゃなくてごめんね、父さん。


「後輩君がやらないなら私がやる。」


「……やり返しても俺が全部悪いことにされますよ。」


「なら私が潰すから良い。」


「分かりました、次は報復しますから落ち着いてください。」


「そう言ってしないんでしょ?」


「ちゃんとしますから。俺が裁いた方が大事にならなそうです。」


「立派な暴行。退学で然るべき。」


「一回だけ許してあげましょ、ね?」


「……何で庇うの?」


「もっと恨まれるからですよ。もっといづらくなります。」


「………………弟子のために私も学園へ出張ろうか。」


「父上とご一緒できるなど光栄です。」


「会長も落ち着いて。師匠は仕事してください。」


「ロレンス。売られた喧嘩は買え。」


「買ったら多くを俺は殺す、だから買わない。被害が俺だけのうちはとりあえずは他に矛先が向かないから良いんだよ。」


「……それが本音?」


 げぇ。父さん相手だから口が滑った。


「……人を見下す人間はどこでもそれをやります。でも人間なんて多くがそうなんです。俺が抵抗するのも標的をずらすのも訳ありません。でもそうしたら別の誰かが同じものを受けるんです。その人は俺みたいに味方がいないかもしれません。実害がないうちは放っておけば良いんです。先生達の評価は上々ですから怖いものはあまりありません。流石に一線を越えたらただでは済ませませんけど。」


 理由は色々とあるのよ。どれも本音の一部。


「甘い。」


「そうですね。冷徹な俺は別人です。」


「…………絶対やり返して。じゃないと私がやる。」


「ありがとうございます。学期明けに模擬戦でも起こして見せしめにしますよ。」


「さらっと言うね。」


「身の程ってやつを知らせてやります。見物はしなくて良いですよ? 多分夢に見ます。そういう嬲り方をします。」


「それはちょっと許可できないな。」


「じゃあ軽く骨の二、三本でやめておきますか。」


「それが軽くか?」


「軽いでしょう。四肢の骨全部折って追加で嬲っていくつもりでしたよ?」


「……止めてよかった。わかった、私がやる。君に任せると大変だ。」


「会長も一緒でしょう。」


「私は公正に然る罰しか与えない。見せしめなら一撃で沈めれば良いだろう。」


「火力はないんですよ……。」


「公平に判断して退学だと思うならば退学の手続きを取るし殴って良いと思ったならば殴る。流石に執行部としてもそろそろ介入すべきだと話題にはなっていた。介入したら拗れるからと止めていたが今聞いたところでは想定や報告よりも明らかに度が過ぎている。私の実力を新入生にも見せてやろうじゃないか。」


「会長本人がやるんですか……?」


「ああ、そうだ。普通に腹が立つからな。君も君だ、もっと早く持ち込めばよかったのに何故黙っていた。自分で鎮静できると思っていたのか?」


「……どうせこれ以上大きくならないならバレてないみたいだし心配かける必要もないかなって。度が過ぎれば前みたいに殴るのでいいかなと。あれで怖がらないんですから肝が太いですよね。」


「その辺は作戦会議の機会があるからそれまで取っておくとするか。」


「また何かやるのかい?」


「……師匠、俺を面白そうなものみたいに見ないでください。次から抱きつく代わりにドロップキックしますよ? 会長が許しても俺は罪悪感を抱いたままですからね?」


「ハロルド殿下に個人的な誘いを受けていますよ。」


「…………わお。私も警備に出ていこうかな。」


「俺が場違いすぎるでしょう?」


「場違いな人間ならもう二人いるだろう?」


 いないんだなぁ……片方は既に商才を発揮し出してる奴だしもう片方は未来の聖女様ぞ?


 その二人がもし先輩と会長なら各々相応しい格を持ってる。二人だけ学年が違うが大した問題じゃないだろう。


「……やっぱり場違いですよ。俺緊張で粗相しないかな……。」


「大丈夫、私が後ろで見張っていてあげよう。緊張くらいで乱れるような指導をした記憶はないからね。」


 圧迫はやったね。

 師匠って貴族家の当主だったからあんなに圧強かったんだって少し納得出来たところもあるよ。


 ハニートラップの方は絶賛鍛えられてる。逆に反動で案外ころっと行くかもしれない不安はあるけど。


 ということで精神面は焦らず少しずつ。ここを焦ってもから回るだけで強くはなれないからね。


「師匠はずっと貴族を相手にしてきたかもしれませんけど俺は天気と虫と戦ってきたんですよ。害虫の種類と予防、駆除方法なら言えますけど貴族の名前なんててんでわかりません。その俺が殿下を相手にする緊張感が分かりますか? 凄く気を使うんですよ? まして人が少なければ一人一人が目立ちます。」


 アソエルは幼少からその手の練習をしてきてるしメインヒロインちゃんも一応躾られてる。でも俺は……三年ですよ?


 そりゃあ緊張もする。多分大丈夫だとは思うけど怖いものは怖い。まだね。この夏で最低限簡単には殺されないくらいの実力は付けるつもりだ。


 先生の強化と会長の強化、自身の強化は距離的に不可能じゃないからね。順番もないし問題はない。


「君は心配性だな。私がそんな鍛え方をするはずないだろう。それにハロルド殿下なら私も知ってる。気さくな方だ。心配はいらない。」


「ローゼンシルト様は?」


「黙秘する。」


 あの人は自分にも人にも厳しいからな。見咎めたら容赦なく言うし場合によっては断罪する。

 俺が粗相をしたら怒るのはきっと王子じゃなくて坊だ。怒らせたら不味い。


「怖いものは怖い。俺は師匠だって怖い。相手の性格を知っていても逆鱗はあります。師匠には喧嘩を売ったので何をされるかとちょっとだけビクついてます。会長達だって身分も違えば立場も違うので本来なら怖がってます。最初は怖かった。」


「最初は?」


「今は怖がる理由がありません。強いて言えば怒らせたら怖い。でもそれは自分の人生や命を脅かされる恐ろしさではないので誤差です。殿下方は冗談なく軽く口にしただけで死にかねません。軽口で黙れと言われても言い返せません。」


 死ねと言われれば死ななければ父さんもろとも殺される。そのくらいの身分差はある。


 だからこう……そもそも関わるには早いのよ。あと一年後だったら俺も多少は地盤固めして安心できたけど今は脆すぎる。つつけば崩れる。


「このまま話してたら雑談で終始しますね。これからは定期報告と彼の武勇伝を綴った手紙でも送るので一人で眺めてニヤニヤしてください。それともっと家に帰ってください。私はまだしもサンティと母上が可哀想です。サンティなど既に父上や母上よりも私に懐く始末、私が帰らないと知らせると真っ先に送り返してきたのはサンティでした。母上は結婚の話、父上は返事すらなかったのにです。忙しいと聞いてやむなしと思っていましたがこんなところにいるとは……遠いのですからもっと頻度を落としてください。今や王都にはロレンスもいます。週末ならば会えるでしょう。」


「週末は先輩に付き合ってるか会長と仕事してなければ暇で~す。休日の学生が業務に追われるのはなんか違うと思いま~す。」


「休日でも問題を起こすやつは起こすからな。長期休暇は流石に暇を貰えるが八月は何日か学園にいないといけないな。」


「私は学園長に引率してきますぅって言ったら余裕でOK出ましたぁ。今年は当番免除ですよぉ。もし何か問題が起きたら戻りますけどねぇ。」


 8月20日までは大丈夫。世界が震撼するのは20日だから。


「ということで暇でもないんですよね。やることがあったのでこんな顔が揃って外出する訳で。」


「何をするために出てきたんだ?」


「国家機密です。私は学生ではありますが調査員としても籍があります。今回は命令ではないとは言え簡単に漏洩させるわけにもいきませんのでご容赦を。」


「…………恐ろしいな、こちらでも覚悟はしておこう。プラトネス嬢が自分で調べると言うのはよほどだからね。新婚旅行気分じゃないんだろう?」


「ほんの少し皆で旅行楽しみとか思っちゃってたんですよね、先輩?」


「……なんのこと?」


「夏休みが近づくにつれて明らかにそわそわしてましたよ。」


「そんなの知らない。」


「俺に隠せるとでも?」


「…………他にも色々あるもん。実益を含んで尚且楽しいならいいと思う。」


 あらら、拗ねちゃった。


「悪いとは言ってませんよ?」


「………………意地悪!」


「はははっ、つい。すいません先輩。ちゃんと分かってます。俺と会長が友達ですもんね?」


「あんまり意地悪言うと私も意地悪する。」


「おっと、ならこの辺でやめましょう。折角可愛かったのに本格的に怒らせてしまっては恐ろしいだけだ。そうやって小さなことでもそわそわしちゃうところ、可愛いですよ。」


「…………シング。私は恐ろしい怪物を産み出してしまったのかもしれない。」


「その気はあった……な。そうか、最初に犠牲になったのはお前か。」


「彼を垢抜けさせたら駄目だったんだ……。」


「垢抜けてませんよ? いっつも先生にからかわれるんです。」


「ロレンス君、君に社交界の浮き雲の称号を譲ろう。私とは少し違う方向だが間違いない。」


「父上、ロレンスに変な称号を押し付けないでください。」


「否定できるか?」


「…………私は掴めたので大丈夫です。」


「でも彼を野に放ったら凄いことになるだろう? 好かれる人間にはとことん好かれるぞ。」


「大丈夫です、私が手綱を握ります。絶対逃がしません。逃げたらきっとすぐ他の誰かを誑しこむので。」


「俺にそんな魅力ないですよ。師匠みたいに色男でもありません。」


 師匠は赤茶髪のイケメンだけど俺は茶髪のジミメンだからな。悪くはないと思ってるけど特段良くもない。嫌いじゃないけどね。


「だから手に負えないんだよ。初々しさに惹かれるのは男女一緒さ。ただおどおどしているのではなく照れや恥ずかしさに心動かされるものなんだ。君は親愛は素直に表すくせに変なところで照れる。天然の女誑しだ。」


「なら父さんの遺伝ですね。」


「間違いないだろう。……そして口の回り方は君の母上に似ている。」


「そうなんですか?」


「考え方が似たんだろうな。優しく綺麗な人だったよ。」


 わっ、今度はなに!? 一瞬殴られたかとも思ったけど撫でられてる!?


「…………あー!!!!!」


「何ですか先生、急に大声だして。」


「思い出しました! なんか見覚えがあるなぁと思ったら! 見たのは一、二度だから気づきませんでしたよぉ!」


「何がですか?」


「私君のお母様知ってますよぉ! 確かに気付くとそっくりですぅ!」


「知ってるんですか?」


「ある意味有名ですよぉ! 行方不明の駆け落ち令嬢! ローマイル・セスティ侯爵令嬢!」


「あー……ん? んん? 何故知っているのだろうか?」


「私もお茶会で見かけたくらいですけど確か十八年くらい前に消えたんですよぉ。少しだけ話題になったから覚えてますぅ。」


 俺、十五。妊娠含めて、十六。先生、当時十歳。


「……え?」


「先生なら二十八ですよ。」


「……嘘だろう!? え、君もしかしてそういう……。」


 失礼なことを考えた師匠に愛の肘鉄を入れた。今回は結構いい感じに入ったな。


「年齢の話をした俺も悪いですが先生は気にしてるのでそういうことを言わないでください。先生は魅力的な女性です。次またやったら全力で肘入れますからね。」


「今も結構良いところにもらったが……。」


「言わなければいいんです。実際見えないでしょう?」


「……見えない。教師と言っても新任だと思っていた。ヴェクター家にその頃の娘さんはいなかったと記憶していたからおかしいなとは思っていたが……そういえばあそこの夫人は異様に若々しいと聞いたな。」


「若かったです。先生と姉妹って言われたら信じてました。」


「露出が少ない家だからな……そうか。そうか? 会ったのか?」


「会いました。呼ばれたので打ち首覚悟で出向いてイチャイチャしたら認められました。死ぬかと思いました。つい数日前の出来事です。まさか実家でサンドブルム伯爵と遭遇するとは思いませんでしたよ、師匠?」


「……全然理解できない。」


「でも概ねあってますよぉ。父と仲良くなってましたねぇ。」


「なりました。」


「……一人で行ったのか?」


「全員で行きました。死ぬかと思いました。」


「何があった?」


「それがですね? 嵌められたんです。先生と同室に押し込められました。全力で我慢した俺を褒めてください。朝は先輩にベッドから落とされて起きましたし。」


「あれは仕方ないと思う。」


「止める間もなかった。私は正座させて事情を聞く方が先だと思ったんだが…………本当に何もなかったんだよな?」


「………………そこまでされて我慢したのか? なぜ?」


「教えません。ヘタレとでも思っておいてください。」


「私達も聞きたい。」


「ぜぇーったいに教えません。先生も教えちゃ駄目ですからね。教えたら怒りますから。」


「怒るとどうなるんですかぁ?」


「師匠に教わった全てを用いて先生が二度と俺の顔を拝めないようにします。」


「…………ちょっと待った。私が教えた全てとは……。」


「もちろん。」


「……まさか……怒らせない方がいいと思う。あれを完璧に習得してるなら……。」


「してます。」


「おいカン。俺の息子に何仕込んだ。」


「…………夫婦円満の秘訣……かな。」


「歯ぁ食いしばれ。」


 また師匠殴られた。痛そうな音がした。


「待て! 私は全ては仕込んでいない!」


「真似できないと思いますか? 俺に一度、本気を見せたでしょう? 動き、意味、効果と基礎があれば組み合わせ、イメージトレーニングで案外なんとかなるんです。」


 特に俺はいるからね。頭の中に。


 だからそうだな……一瞬だけ強くイメージしてみようか?


 うーん……これでいいかな?


「……今鳥肌が。」


「…………うわぁ……。」


「大丈夫か?」


 先輩は肌を擦り直撃した先生は赤面、会長には効果なし。まだまだか。

 でも雰囲気だけで感じ取った先輩は凄いな。


「………………えぇ……? 実践してないんですよねぇ?」


「必要とあらば使います。今のは殺気となんら変わらないのでただの気配です。一の型、えっちぃ雰囲気です。」


「何てものを仕込んでるんですか父上!」


「ははは……私はそんなもの仕込んでいない。」


「でもお手本は師匠ですよ? 今のはちょっとした所作とか細かい動作や雰囲気を理想の自分に乗せて色っぽくなるようにしたんです。鏡見て練習しました。」


「ははははは……ははははははは……ははははは……。」


 14文字! 5、7、5!


「どうしてくれる?」


「殴っていい。」


「なら遠慮なく。」


 ……うっわ痛そう。初めて踞ったぞ。父さんガタイ良いし痛いからな。


 そっか、あれでも手加減されてたのか。

 精進せねば……。


「……絶対に言いませんねぇ?」


「それでいいんです。言ったら後悔しますよ。泣かせませんから。」


 師匠に実践してみようか? 男にやってもなぁ……相手も自分も乗れないから微妙。


 結局色っぽいいい男風の雰囲気を纏うだけだから空気作りの一環にしかならないのよ。先生に直撃したのは心を読んでしまったから。


 むしろ立ってる姿を見ただけで感じ取れる先輩が凄い。


「…………あれはあんまり使うものじゃないよ。」


「そうなんですか?」


「慣れられるし……やり過ぎると壊れてしまう。私も何人かの娼婦を……痛いなぁ。」


「なんて話をしてやがる。」


「若いときは遊んでたから……その途中で身に付けたものだからね。ロレンス君、真面目に聞いてくれるから……つい実践方法をいくつか仕込んでしまった。」


「他、何仕込んだ。吐け。」


「生存術とか薬学も多少は仕込んだし体術も仕込んだ。魔力は若いうちから本格的に鍛えた方がいいからその方法も教えて……本当に色々仕込んだよ。来る度に何か別の事を教えた気がする。真面目なことも不真面目なことも綺麗なものや汚いものも。」


「色々教わったよ。お陰で頭の巡りが少しは良くなった。……そっか、騎士団長とコネを持てたのか。そうなると色々便利かな。何かあったら師匠に投げて働かせよう。」


「……私の対処すべき事柄ならね。」


「相談できるだけで御の字です。」


「……話ぶれぶれですねぇ。どこまで戻しましょうかぁ……とりあえず、今後ともよろしくお願いいたしますぅ。」


「よろしくお願いします。ロレンス君と面白おかしく頑張ります。」


「では私も。父上の弱みは握りましたし満更でもなさそうなのでよろしくお願いします。」


「そうだ、そんな話をしていたんだった。……セイラ。」


「はい。」


「……多重婚は不可能ではない。しかし昨今の風潮として歓迎されるものではないことは理解しているね?」


「勿論です。私達は無論のこと各家にも迷惑をかける可能性を否定することはできません。」


「それを理解していて、その評価を覆せると?」


「思っています。」


「後悔は?」


「しません。……この際、自分を下げたり彼を上げたりはしません。正直な気持ちとして、私は彼と共にいたい。そして利益になると思っている。このロレンス自身にそれだけの価値があると思います。私を嫁がせ一時的な汚名を被っても、やがてその先見を称えられるでしょう。そのようにします。富を築き功績を上げ、知らぬものはいないほどの男にしてみせます。」


 …………照れるなぁ。……でも、会長が言うなら出来るんだろう。俺自身は非才だから血の滲むような日々になるんだろうけど……会長と一緒なら大丈夫だと思える。


 先生にならないって決めたのはちょっと残念だけどね。セイラ先生を見てみたかった。


「…………はぁ、私の責任もあるか。発表は……まあ彼の卒業でいいだろう。それまでに形にしなさい。もし見込みがなければ認めない。……というのは建前だが。」


「……建前?」


「実際、私はセイラ以上の期間ロレンス君を見てきた。その性格もセイラと同じくらいには知っているはずだ。……私の弟子はきっと成し遂げるだろう、そう信じている。大体私はサンドブルム伯爵として判断しないといけないから意気込みを聞いただけで一対一なら賛成派……というより本人達が構わないならいいと思っている。」


「グーパンが必要ですか?」


「何故…………ああ、セイラを放置して蔑ろにしたと思ったのか、分かりにくい。逆だ、私も君を買っている。どの口でとは思うかもしれないが私はセイラを愛しているよ。そして君ならばと思うんだ。私はこれでも騎士団長だが代々と言うわけでもない。だから娘を無理矢理嫁がせる理由はないんだよ。妻はそれが幸せだと思っているから強く勧めるだろうが私はそうは思わない。」


「…………サムソン公爵。」


「なんだ、プラトネス嬢は物知りだな。確かに縁談は来た。ただ私としては魅力を感じなかったしあまりよろしい噂も聞こえないから丁重にお断りしたよ。中々諦めてはもらえないがそれをセイラと体面させて終わらそうなどとは思わない。もっと押しが強くなるだろうからな。引き伸ばして時間が経てば自然と収まるだろうと思っている。」


「会長を愛してるなら家に帰ってください。仕事が~じゃなくて私にも家庭が~って言われれば俺だって次の予定を確認したりしません。」


「ロレンスは父上に懐いているのだな。」


「師匠は格好よかったですからね。ただ家族を大切に出来ない人は論外です。そんなんだから大切な娘さんが悪い男に引っ掛かるんですよ。」


「…………これからは年に一回にするよ。」


「約束ですよ。約束を破ったらただじゃ済ませませんからね。その色男を青アザとたんこぶだらけにしますから。」


「……肝に命じるよ。」


「ならばよろしい。……さて、ご飯でも作りますか。父さん、マリナ呼んできて。ご飯まだなんでしょ? この人数だと一人じゃ時間かかるから。」


「私も手伝いますよぉ。」


「先生はお客さんなので座って師匠にお茶でも淹れてもらってください。」


「私も一応客だが……。」


「師匠は半分くらい身内でしょう。そのくらいやってください。あと父さんにできると思いますか?」


「思わない。よし、淹れようか。どこにいればいい?」


「食堂。椅子とテーブルが足りないはずなので父さんはマリナ呼んだら用意して。はい、キビキビ動く!」



 お疲れ様でした。


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