女性騎士カトリ
騎士団宿舎で目覚めたルーテは、水浴をして身を清めた。
世話をしてくれたのは、栄光ある王国騎士団の鎧に身を包んだ女性騎士であった。
「お目覚めになりましたか」
そう言って、女性騎士は水浴を勧めてくれたのだ。
「私はカトリと申します。先程の模擬戦も、端席で拝見致しましたよ」
と、にっこり微笑んで。
「ここまでルーテさんを運んできたのも私です。こう見えて、力もありますから」
力こぶを作る動作をしてみせてくれたのだが、鎧の上からではよく分からない。
力強いというより、単に可愛らしいというか……。
屈強な感じは全くなく、細身だし、他の騎士団員から感じていたような圧もない。
だからこそ、世話役をしてくれているのだろう。
ルーテは戸惑いながらも礼を言い、お言葉に甘えて身を清めた。
何せ、先の模擬戦では訓練場を転げまわり、そのまま倒れたので土まみれになってしまっていたのだから。
さっぱりとして一息つくと、女性騎士は良く冷えた果実水を用意してくれていた。
至れり尽くせり。
昨日から怒涛の展開で疲れ果てていたルーテにとって、ほんの一時、心休まる瞬間だった。
「さて。ルーテさん」
「はい。カトリさん」
「そろそろ心の準備はよろしいですか? よろしいですよね?
スロース筆頭書記官にお会い頂きます」
女性騎士さん、にっこりしているけど有無を言わせぬ雰囲気です。
容赦ないなー、とがっくりしながらルーテは立ち上がり、再び小部屋へと連れられて行くのだった。
「もう帰りたいです」
「ですよね~。でも帰しませんよ。ていうか、そんなことしたらマジで殺されちゃいますよ」