対面したのはお偉いさん
ルーテが馬車に揺られること、半刻ほど。王宮に到着した。
到着後は速やかに小さな円卓のある部屋に通され、待つように伝えられる。
華美な装飾など一切なく、王宮の中にしては、やけに実務的な小部屋だった。
ほどなく、小部屋の中では一際大きかった、正面の扉が開け放たれ、少数の護衛騎士と共に二人が入室してきた。
一人は、栄光ある王国騎士団の鎧を身に着けた、偉丈夫。
いま一人は、ゆったりとしたローブを身に着けた、怜悧な瞳をした青年。
ルーテはもともと、身のやり場も無く佇んでいたが、この二人が入室してからは、さらに身の置き所がなくなったと感じて、もう帰ってしまいたくなった。
しかし、姉の安否を聞かずに帰る訳にもいかない。
意を決して、ルーテが口を開こうとした、その時。
青年が先んじて、語り掛けてきた。
「ようこそ、ルーテ殿。今日は朝早くからすまない。何分、規則があり、夜間にここへ招く訳にもいかなかった。許してほしい。早速だが、ネフィについて話したいことがある。長くなるから、席につきたまえ」
簡素だが、それでいて明瞭な話し方。
一見して冷たそうな印象を受けていたルーテだったが、気遣いのうかがえる青年の話し振りに、ルーテの中でこの青年に対する好感度は急上昇した。
「あっ、ハイ……。それでは、失礼します……」
「うむ。私は、筆頭書記官のスロース。こちらは第一副団長のオズモンドだ。今からする話は、絶対に漏らさないように願いたい」
あっ。オズモンド副団長様は座らないのね。
ルーテは、そんな場違いなことを考えていた。
帰りたい。
心底そう思っていたので、余計な事ばかり考えてしまっているのだ。
第一、筆頭書記官といえば、王国宰相の次くらいに偉い文官さんの筈。
しかも若い。なんならこの人の背後に控えているオズモンド第一副団長さんの半分くらいには若い。
きっと、相当優秀なのだろう。
そんな人が、わざわざ時間をとって、私なんかに、一体何の話なんだろうか。
心底、もう帰りたい。