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凄腕占い師の妹  作者: たつたろう
第1章 ネフィ追跡隊の結成
2/10

ルーテのこと

 ―王国歴2022年、聖フォストリムの月、3日。


 Cランク冒険者、ルーテは、王宮へと向かう馬車の中にいた。

 聖フォストリムの月2日にダンジョン遠征から帰還し、冒険者ギルドに攻略の報告をして、翌日のことであった。


 ただのCランク冒険者であるルーテが、王宮からの呼び出しを受け、且つ、豪勢な馬車に揺られている理由など、たったひとつしかない。


 姉のことだ。


 ルーテの姉、ネフィは、優秀な占い師であった。

 幼い頃より確かな腕前で、ご近所から持ち込まれるちょっとした困りごとを解決しているうちに、あれよあれよと名が売れ、王室占い師まで登りつめていた。


 ネフィが王室占い師として召し出されるまで、ルーテは姉の付き人として細々したことをしていたのだが、流石に妹であるというだけで、王室にまでついていくことは叶わなかった。


 自分には、姉のような才能はない。

 そう思いきって、冒険者として活動を始め、若干の運の良さも相まって、Cランクまで昇格したのがつい先日のこと。

 一般的な冒険者からすれば、かなり早めの昇格といえる。

 Cランク冒険者と言えば、ベテラン冒険者の部類に入るし、一端の冒険者となったといえるだろう。


 それでも、姉の功績の前では、霞んでしまう。

 姉の予言により、王国が受けた利益は、枚挙に暇がない。


 ひとつ、東の穀倉地帯の虫害を防止。

 ひとつ、西の山岳地帯に蔓延る山賊団のアジトを特定。

 ひとつ、北の森林地帯奥地に出現した毒の沼地の汚染を防止。


 人災、天災、魔物被害。

 いかなる害をも、原因をすぐに特定し、被害を最小限にとどめる。

 それどころか、未然に防ぐことさえできる。

 王室に召しだされるのも納得の実力である。


 対するルーテも、冒険者として順調に成長してはいる。

 堂々のCランク冒険者となり、初のダンジョン遠征にも成功したばかり。

 何事も無ければ、パーティーメンバーたちと共に祝杯を掲げている頃だっただろう。

 何事も無ければ。


 実際には、ダンジョンに潜っている間に、一大事件が起きていた。

 ギルドに帰還報告をするや否や、副ギルドマスターに一人だけ呼び出され、姉がさらわれたと告げられ。

 明けて今日は馬車の中だ。

 パーティーメンバーは呼ばれていない。今は一人だ。

 何故なら、冒険者としてのルーテに用があるのではなく、姉の家族だから、だろう。


 それにしても、とルーテは考える。

 一体何故、私は王宮へ招かれているのだろうか、と。


 確かに、姉の安否は気になる。

 だが、姉は既に王宮に召しだされた身であり、ルーテは一介の冒険者である。

 王宮から馬車を出されてまで招かれるほどの者ではない。


 もしや、姉はもう、この世にいないのでは。

 もしや、私が事件に対して、何らかの関与を疑われているのでは、あるまいか。そして、逃亡を許さぬために、このように馬車を用立てたのでは、あるまいか。

 言い知れぬ不安と、ろくでもない思考を重ねながら、粛々と、ルーテは王宮へと運ばれていった。

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