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凄腕占い師の妹  作者: たつたろう
第1章 ネフィ追跡隊の結成
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『逆巻く風』への事情説明

 独立ネフィ捜索隊、第一の使命は、ルーテのパーティーメンバーへの事情説明であった。


 Cランク冒険者となり、ダンジョン遠征も成功させ、今、ノリに乗っている冒険者パーティー、『逆巻く風』。

 冒険者ギルドにほど近い定宿で、やきもきしながらルーテの帰りを待ち受けていた彼らが出迎えたのは、左右を王国騎士にかためられ、肩身が狭そうにしているルーテだった。


「あはは……ただいま、みんな」


 何はともあれ、無事で良かったとそれぞれに声を掛けていたところ、ルーテの腹の虫が大きく主張をした。


 とうに昼は回ってしまっている。

 詳しい話は、ともかく腹の虫をなだめてからにしたい、と言われ、『逆巻く風』の面々は気が抜けてしまった。


 遠征の打ち上げも、まだできていない。

 聞きたいことは山ほどあるものの、ことは王国全土を揺るがす大事件である。

 それも、王国騎士が傍らにいるのでは、緊張して話せるものではない。

 女性騎士の方は終始ニコニコしていて、それほどのプレッシャーはないのだが、男性騎士はガタイもよく、むっつりと黙り込んで油断なく周囲を探るような視線を向けるその様子からは、和やかに情報交換をしましょう、といった雰囲気は微塵も感じられなかった。


 ルーテに誘われて、騎士の二人も食卓を共にする。

 カトリと名乗った女性騎士は、軽く礼を述べた後は、ひたすら「いやー、この料理は味つけが最高ですね~!」「ん~、こっちも甲乙つけがたいです!」等と一人で盛り上がっている。

 男性騎士は、黙したまま。


 全てを諦めた『逆巻く風』の面々は、機械的に食事を腹に収めて、部屋へと引き払った。


「あ、私はちょっと野暮用がありまして。いったん失礼いたします!」


 食べるだけ食べ、喋りたいだけ喋ったカトリは、一方的にそう言って消えていった。

 ルーテと、騎士アズバーン。

『逆巻く風』の三人。

 計五人で、部屋に腰を落ち着けた。


「それで、ルーテ。一体なんで王宮なんかに呼び出されたんだ。お姉さんの行方は、分かったのか?」


『逆巻く風』を代表して、パーティーリーダーでもある剣士、ブレナンが声を掛けた。

「なんか」、のところで腕組みをして部屋の隅にいたアズバーンがジロリと視線を向けてくるが、ブレナンは真っ向から睨み返した。

 元々、ロクに事情も知らされず、遠征帰りのパーティーメンバーを王宮に連れていかれた『逆巻く風』の面々は、騎士を快く思っていないのだ。それでなくとも、冒険者と騎士の間には、立場の違いからくる確執があるものだ。

 ルーテは鈍感なため、二人の様子に全く気が付かないまま、ブレナンの質問に答えた。


「ええと、姉さんの行方は、分かってないみたいなんだ。それでその、この騎士の人たちがその、何というか……探すのを『手伝って』くれることに、なりました、ハイ」

「……なるほど、よく分かった。つまり、こいつらが頼んでもいないのについてきてるんだな。堂々と監視する上に、お姉さん経由で接触してくるだろうと囮をやらされている、と」


 ブレナンは、アズバーンを睨みつけながら答える。

 アズバーンも睨み返し、険悪な空気が濃密に流れ始めた。


「あっ、それがちょっと事情があって……。みんな、悪いんだけど、私は騎士さんたちと姉さんを探さなくちゃならなくなって……それで、えっと……いつまでかかるかも分からないし、ちょっとダンジョン遠征とか、できそうになくって。ごめん、しばらく抜けさせてもらえないかな?」


 ルーテが慌てたように話す。

 しかし、『逆巻く風』の面々は、何一つ納得いかない顔で黙り込み、沈黙が続いた。


「ちょっとルーテ。いきなり城へ連れて行かれたかと思ったら、騎士サマを連れて帰ってきて、挙げ句に抜けさせて欲しいって。さっきの説明も、何にも説明になってないし。分かったのは、事情があって、簡単には話せないってことくらいじゃない。なにソレ、言わされてんの?」

「姉さん、ルーテが困ってるよ。ルーテに当たっても仕方がないよ」


 毛を逆立たせてルーテに詰め寄りながら、コボルト族のパルパルが言い放つ。困り顔で双子の弟、ボルボルが片耳を垂れさせながら宥めている。


「私としても、不本意なんです。でも、本当に事情があって。私はもう、どうしようもないんですけど、みんなは巻き込みたくないっていうか、話しさえしなければまだ大丈夫っていうか。とにかく、私はこの人たちと一緒に姉を探しに行かないといけないんです。ごめんなさい……」

「はあ? 『巻き込みたくない』? じゃあなんで戻ってきちゃったのよ。そのまま探しに行っちゃえば、何にも知らずに済んだのに。どっちなのよ。ねえルーテ。本当は助けてほしいんじゃないの? どうなのよ?」

「えっ? あれ? 本当ですね。なんで私、どうしてきちゃったんだろう。ごめんなさい。ごめんなさい……」

「ちょっと……泣かないでよもう」

「姉さんがまくし立てるからじゃないか。ごめんねルーテ。姉さんったら、ずっと心配してて気が立ってるから」

「私こそ……ごめんなさい。でも、事情が事情で、話すわけにもいかなくって、でもどうすればいいのかも分からないし、パーティー参加はできなくなるから伝えなくちゃと思って」


 ルーテは、パルパルに向けて話し、後半からはブレナンに視線をやった。

 ブレナンは咳払いをしてから、パーティーリーダーとして答える。


「俺たちはダンジョン遠征から帰ったばかりだ。しばらくは英気を養おうと思っていたところだし、なんならパーティーで行動してもいいと思っている。ルーテ、力になることはできないか?」

「どうせ、期待してたんでしょ? それに、騎士サマにルーテを連れていかれるのを、指をくわえて見送りました、なんて、冒険者仲間に何を言われるか、分かったもんじゃないし」

「姉さん、茶化さないで。一番心配してたでしょう」

「うるさいわね。アンタの耳を食い千切るよ!」

「ひぇっ。もう、姉さんは野蛮なんだから。あっルーテ。もちろん、ボクも賛成だよ。こういう時こそ、助け合わないとね」

「みんな、ありがとう。気持ちは嬉しいよ。でもやっぱり、ちょっとシャレにならない事情だし、私、がんばってみようと」


 ルーテが『逆巻く風』の面々に勇気をもらい、それでも断ろうと話し始めた時、黙って聞いていたアズバーンが急に制止した。


「おい。誰か来たようだ」


 静まり返った部屋の中に、ノックの音が響き渡る。数瞬の後、そのままドアが開けられ、騎士カトリが登場した。


「じゃじゃーん。どう? 話し合いは進んだかな? 『逆巻く風』のみんなは手伝ってもいいって言ってくれたけど、ルーテは内緒にしなきゃいけないから迷ってる。いまココかな? 合ってるアズバーン?」

「……ああ、概ねその通りだ」


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