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三題噺もどき

息抜き

作者: 狐彪

三題噺もどきーじゅうきゅうこめ。


とある、字書きの話。

 お題:小説・海の向こう・ぽたぽた




 僕はしがない小説家をしている。

 雑誌や新聞の小さなコラムを書いたり、たまに小説を出したり。

 いつもは基本的に部屋にこもっているのだが、今回はどうも筆が進まず、気分転換に外に出ていた。


 近くの海浜公園へと向かう。

 煮詰まったときは、よくここへ来るのだ。

 1人静かに、歩いていく。


 ザアァアア―


 波の音が響き、心地よい音が鼓膜を叩く。

「はぁ…」

 自然とため息が零れた。

(久しぶりにこんなに止まった気がする。)

 ココ最近は筆の調子がよく、言葉が溢れて止まらなかった。

 しかし、今日になって突然、筆が止まった。

 昨日までに沢山あったハズの言葉が出てこなかった。

 あんなに書きたいことはあったのに、それがすべて、消えてしまった。

(スランプか―?)

 まぁ、今までも何回かあったけど―そんなことを考えながら海を眺める。


 海はいい。

 自分の考えていることがちっぽけに思えるから。

 ―なんてありふれた言い方をしてしまうけれど。

 この海の向こうは、どんな風になっているんだろう。

 海の向こうには、どんな人がいるんだろう。

 自分の想像がつかないような生活をしている人なんて数えきれないほどいるのだろう。

 そんなふうに考えると、自分のことなんて小さく見えてくる。

 ぼーっとしながら、色んな考えを巡らせる。


 そうしているうちに、ぽたぽたと、ぽろぽろと、言葉が溢れ、想いが溢れてくる。

 何かが壊れたみたいに、いろんなモノが零れ落ちてくる。

 そうなってしまうと、自分でも止め方が分からなくなる。

(あぁ、また、やっちゃった)

 そう思いながら、溢れてくる言葉を、思いを、少しずつ溜めていく。

 限界はあると思うが、関係ない。

 自分は、それを文字におこして、人々に伝えることを生業としているのだ。

 せっかく溢れたものを捨てるわけにはいくまい。

(はぁーでもこれすんの疲れるんだよね)

 毎回、疲労困憊するのだ。

 それでも、自分は、この仕事を辞めようとは思わなかった。

 己の言葉で誰かの何かが変わるなんて思っていないが、それでも、何かを変えたいとは思っているのだ。

 それが出来たと思うまでは、この仕事は、止められないと思っている。

(まぁ一生かかってもできないと思うけどね)

 皮肉めいたことを思いながら、立ち上がる。

 今度はこの溢れるものを文字におこさなければいけないのだ。


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