表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/39

第六話 お茶会のすれ違い

いよいよお茶会。

しかしヴィリアンヌの緊張は最高潮に。

リバシはその気持ちを解きほぐす事ができるのでしょうか?


どうぞお楽しみください。

「うん、カモミールの良い香りがしますね。この香りは穏やかな気持ちにさせてくれます」

「本当ですわ」


 リバシとヴィリアンヌはお互いにカップを傾けながら、にこやかに言葉を交わします。

 しかしカモミールの効果はどこへやら。

 二人の内心は全く穏やかではありませんでした。


(何がカモミールの安息効果だ! ヴィリアンヌは『緊張』しかしていないじゃないか! それ程までに私への恐怖心と警戒心が強いのか!?)


 リバシの目が見抜いた通り、ヴィリアンヌは緊張の真っ只中にいました。


(あああ味もかかか香りも良くわかりませんわ! リバシ殿下に見つめられていると思うと、ききき緊張して……! ととととにかく不作法だけはないように……!)


 それでもカップを振るわせずにお茶を飲めるのは、公爵家令嬢としての厳しい躾の賜物でした。

 状況を変えようと、リバシは次の手を打ちます。


「何かヴィリアンヌ嬢のお好きな菓子でも持って来させましょうか?」

「勿体ないお言葉。ですが私に合わせていただくなど、申し訳ありませんわ。どうぞ殿下のお好きなものを召し上がってくださいませ」


 その言葉に半ば以上パニックに支配されているヴィリアンヌは、反射的にそう答えました。


(め、目上の方からの勧めは、一度遠慮して次に勧められたらいただく、で合っていますわよね!? 私間違っていませんわよね!?)


 貴族と王族の関係なら問題ない対応が、内面の感情を見抜くリバシには心深く突き刺さります。


(型通りの解答は良いが、いや、可能なら菓子の好みを知りたかったから良くはないが、この表情の裏の感情は必死……! 何としても私に借りを作りたくないと!?)


 ヴィリアンヌが何に必死なのかまでは見抜けないリバシは、これまでの情報からそう判断しました。


(飲食は緊張を緩和させ、懐に入り込むのに一番使い勝手が良い策……。なのにまるで毒殺を警戒するかのような緊張感では、入り込みようが……。ん? 毒殺!?)


 リバシは脳裏に流れた物騒な言葉から、次の手を閃きます。


「では私の食べたいものに付き合っていただく、というのはどうですか?」

「……あ、はい、少し、でしたら……」


(よし! 毒殺を警戒する相手に食事を取らせるには、自分と同じ皿から取るように仕向ける……。政争で得た知識がまさかこんな場面で役に立つと、は……!?)


 心の中で拳を握ったリバシは、一瞬思考が止まりました。

 ヴィリアンヌの表情の下の感情に、変化が現れたからです。


(り、リバシ殿下と同じものを分け合って……!? ま、まるで恋人のような……! い、いえ、きっと共犯者という意識を強めるためのもの……。でも嬉しい……!)

(え、よ、喜んでる!? な、何が要因だ!? まさか本当に毒殺を警戒……? そんな訳ない! わ、わからないけど、よ、良かった、のかな!? な、何頼もう!?)


 リバシは驚きながらも喜びに包まれ、


「アッシス。このクッキーを三種類全てと、ケーキも一通り、それとこのマドレーヌとフィナンシェとフルーツパウンドと」

「殿下。落ち着いて馬鹿な真似はおやめください」


 アッシスから小声でたしなめられました。

読了ありがとうございます。


リバシ、物騒な方策がまさかのヒット。

ちょっとだけヴィリアンヌとの距離を詰めました。

まぁ下手に策を練らないで真っ直ぐ振り抜けば、軽々ホームランなんですけどね。


次話もよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヴィリアンヌ嬢とのお茶会 <i621627|34709>
[良い点] こじれるこじれる♪ しかしヴィリアンヌ、すっかり恋する乙女ですね。
[一言] 「メッシ、ここからここまで全部だ」 おい、ポンコツ王子! 名前まちがえてるぞ! だれが、メッシーアッシーぢゃいコラ!ヽ(*`Д´)ノ なんて(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ