表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/39

第二十七話 別で踊ればすれ違い

すれ違いながらも共に踊る時間に、幸せを感じたリバシとヴィリアンヌ。

リバシの策でヴィリアンヌはノマールと踊る事になりました。

リバシがノマールを愛していると勘違いをしているヴィリアンヌは、何を思うのでしょうか。


どうぞお楽しみください。

「で、ではヴィリアンヌ様……」

「えぇ」


 ノマールの言葉にヴィリアンヌは手を差し出します。

 その手をノマールがそっと握ると、ヴィリアンヌに衝撃が走りました。


(何この子の手……! 荒れてがさがさ……! 手だけなら私の方が……? あぁ、こんな痛ましい手を見て勝ち誇ろうとするなんて、私は何と浅ましい……!)


 内心の葛藤を笑顔の仮面で押さえ込み、ヴィリアンヌはノマールと踊り始めます。

 ノマールの踊りはヴィリアンヌほどではありませんが、努力が感じられる見事なものでした。


「ノマールさん、ダンスお上手なのね」

「あ、あの、お気遣い、恐れ入ります……」

「あら、お世辞ではありませんわ。大変努力をされたのね」

「! 友人が丁寧に教えてくれたので……! ありがとうございます!」


 ヴィリアンヌの言葉に、ノマールは嬉しそうな笑顔を浮かべ、すぐに顔を赤らめて俯きます。

 その様子に、ヴィリアンヌは微笑ましさと嫉妬を同時に感じました。


(この手にこの恥じらい、リバシ殿下が守りたくなるお気持ちもわかりますわ……。あぁ、私にもこんな可愛らしさがあったなら、リバシ殿下は愛してくださったかしら……?)


 そんな事を思いながら踊るヴィリアンヌは、ちらりちらりとリバシへと視線を送ります。

 それを見たノマールが、少し身を寄せて囁きました。


「あの、先程はキュアリィが失礼いたしました……」

「失礼? 何の事かしら? リバシ殿下が踊る約束をなさっていて、それに従ったまでの事ですから、失礼だなんて……」

「でもヴィリアンヌ様は、リバシ殿下ともっとご一緒に踊りたかったのではないですか?」

「そ、そんな事は……」


 図星を突かれ、ヴィリアンヌは少なからず動揺します。

 先程と違い踊りにも意識を割いているので、いつもなら完璧にできる取り繕いに綻びが生じました。


「……この後私はリバシ殿下と踊る約束なのですが……」

「そ、そうよね! そういう約束ですものね!」

「でも私、御辞退申し上げようと思います」

「ど、どうして……?」

「……ヴィリアンヌ様がリバシ殿下に想いを寄せられていますから……」

「ぴぐ」


 ヴィリアンヌの押し殺した悲鳴は、ノマールの耳にだけ入ります。

 その可愛らしい声に、ノマールの真剣な表情は崩れ、思わずくすくすと笑いをこぼしました。


「な、何故笑うんですの?」

「ご、ごめんなさい……! 完璧で凛とした方だと思っていたので、その可愛らしさに……、ふふっ……」


 笑いを堪えながら踊りを合わせるノマールに、ヴィリアンヌは驚きと共に緊張がほぐれるのを感じます。


(私が可愛らしいだなんて……! ノマールの影響かしら? もしこれからも側にいたなら、私もそんな可愛らしさが身につくかも……。そうしたら……)


 そう思うと、ヴィリアンヌの顔には貴族としての完璧なものではない、少しぎこちなくも本心からの笑みが浮かびました。


「……ノマールさん」

「はい」

「お気持ちは嬉しいけれど、リバシ殿下の願いですから叶えて差し上げていただけます?」

「……ヴィリアンヌ様が、そう仰るなら……」

「大丈夫ですわ。その後はまた一緒に踊る約束になっていますから」

「それなら良いのですが……」


 心配そうな顔をするノマールに、ヴィリアンヌは少し無理をして微笑みます。

 それでも陰るノマールに、ヴィリアンヌはおずおずと切り出しました。


「あの、それでもし良ければなのですけれど、一つお願いがありますの……」

「何でも仰ってください!」

「ありがとう。……その、これからも、仲良くしてくださる……?」

「! 喜んで!」


 ノマールの弾けるような笑顔に、ヴィリアンヌの笑みも再び本物へと置き換わります。


(こんな素敵なノマールがリバシ殿下と結ばれるなら、耐えられる気がしますわ……! 今日出会えて本当に良かった……!)


 ヴィリアンヌは満たされた気持ちで、ノマールと踊り続けるのでした。




「リバシ殿下。先程から何度もヴィリアンヌ様とノマールの事を見ていらっしゃいますね」

「あぁ」


 キュアリィの問いに、リバシは生返事を返します。


(会話までは聞こえないが、ヴィリアンヌもノマールも喜びの感情に満ちている……! 和解がなったのか……? くっ、会話が聞きたい!)


「もしかしてヴィリアンヌ様の事、お好きなんですか?」

「あぁ」

「まぁ! そうなのですね」

「あぁ」


 ヴィリアンヌとノマールの様子に全力を傾けていた事。

 キュアリィの表裏のなさに対する警戒心の緩み。

 この二つが相まって、キュアリィに本心を漏らしてしまっている事に、リバシは全く気が付かないのでした。

読了ありがとうございます。


ノマールとキュアリィの義姉妹が、ヴィリアンヌとリバシのとても重要な情報を握りました。

これが二人の関係にどう影響するのか?

やっちゃえ義姉妹。


次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おっと・・・ 完全な善意でいろんな面倒をねじ伏せる作中最強キャラが蠢動を始めたようですね・・・
[一言] いけー、義姉妹!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ