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第二話 花束のすれ違い

秘密の暴露に怯えながらも、リバシに心惹かれるヴィリアンヌと、何とか怯えを解いてヴィリアンヌと恋仲になりたいリバシ。

花束でヴィリアンヌの気持ちを緩めようとする算段は、果たしてうまくいくのでしょうか?


どうぞお楽しみください。

「アッシス」

「はい殿下」


 自室に戻ったリバシは、側仕えの青年を呼びました。


「花束を用意しろ」

「公爵家令嬢に見合う格の花束を、ですね」

「あぁ」


 送り主を言い当てられても、リバシに動揺はありません。

 アッシスはリバシの三つ年上で、侯爵家の五男。

 家を継ぐ可能性がないため、子どもの頃から守り人兼話し相手としてリバシに仕えていました。

 幼い頃から政争にさらされ、計算高く育ってしまったリバシにとって、兄のように心を許せる、数少ない存在なのです。


「花の種類はいかがいたしますか?」

「そうだな……。少し待て」


 リバシは本棚から植物の本を取り出しました。

 ざっと目を通すと、ぱたりと閉じて、


「花水木だ」

「かしこまりました」


 一礼して部屋を出るアッシス。

 それを見送って、リバシは笑みを浮かべます。


(花水木の花言葉は『私の想いを受けてください』『永続性』『華やかな恋』。ヴィリアンヌはやや幼く、ロマンチストな面がある。こういう方が喜ぶだろう……)


 その笑みは、政敵を陥れた時の悪い笑みによく似ていました。




 翌日の放課後。


「ヴィリアンヌ嬢。こちらをあなたに」

「リバシ殿下。お心遣い、有り難く頂戴いたしますわ」


 アッシスが届けた花束をリバシが渡すと、周りからざわめきが起きました。

 婚約者の決まっていないリバシ王子との婚約を夢見る女子と、ここ最近注目されているヴィリアンヌとお近づきになりたい男子が、その光景に動揺したのも無理はありません。

 しかし次期国王がほぼ確定しているリバシと、平民にも慈愛を注ぐ公爵家令嬢ヴィリアンヌの組み合わせに、異論を挟める者はいませんでした。


「……素敵な花ですわね。ありがとうございます」


 にこやかに受け取ったヴィリアンヌの顔が、ほんの一瞬曇りました。


(花水木の花言葉は『私の思いを受けてください』『永続性』……。リバシ殿下は『お前の秘密を忘れない』と、暗に伝えておられるのね……)


 そしてその一瞬の表情を読み取ったリバシは、内心では頭を抱えました。


(しまった! 脅迫じみたメッセージと取られたか! 私への印象の悪さを甘く見ていた!)


 後悔に暮れるリバシ。

 そのため、次に浮かべたヴィリアンヌの表情を見逃してしまいました。


(でも『華やかな恋』なんて花言葉もあるのよね……。もしかして……。いけないいけない! リバシ殿下にはそんなつもりはないのだから……)


 リバシが我に返った時には、ヴィリアンヌは公爵家令嬢として相応しい、落ち着いた笑みに戻っていました。

読了ありがとうございます。


リバシは恋愛に関しては策を練らない方が上手く行くタイプです。

でも今までが今までなので、策なしで動く事はできません。

そしてすれ違いは加速する……。


さて、王子の懐刀ふところがたなアッシスは、手助けを意味するassistから。

線の細い美形執事のイメージです。

クールで臣下としての立場は弁えつつ、時々軽口を叩くような関係です。

大好物っていう方、僕と握手!


それでは次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] すみません、あまり時間がなかったので今読ませていただきました。まだ二話ですがね。 クールで軽口を叩く執事って好きですよ! 会話が面白そうですし。自分が会話してると苛つくかも。 そこに毒舌が入…
[一言] 軽口としていつも下ネタで応えるとか 「そんなだから『童帝』なんですよ? 王子を飛び越えて『帝』なんてスゴイですね?」 などというやつならイイね(`・ω・´)b あ、握手なんかしないんだ…
[一言] >お前の秘密を忘れない これは怖いですねw ヴィリアンヌ様、疑心暗鬼状態で、これはもう策を弄すれば弄するほど……。 リバシ殿下の恋模様、暗雲が立ち込めていらっしゃる。 そして! >クー…
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