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第十三話 お茶待ちのすれ違い

エスコートでちょっとしたトラブルがありましたが、無事部屋へと入った二人。

リバシの策で出される事になったお茶の飲み比べとお菓子の盛り合わせ。

しかしヴィリアンヌは戸惑っている様子で……?


どうぞお楽しみください。

「リバシ殿下、ヴィリアンヌ様。本日はお越しいただき、誠にありがとうございます」

「あぁ、世話になる」

「よろしくお願いいたしますわ」


 支配人の丁寧な挨拶に、リバシは手を上げて答えました。

 ヴィリアンヌも軽く会釈をして、それに答えます。


「ただいま当店では、お茶の飲み比べを行なっておりまして、よろしければお二人に味を評価していただきたいのですが、いかがでしょうか?」

「あぁ、構わない。ヴィリアンヌ嬢もいかがかな?」

「はい。喜んで」

「ではご用意いたします。お礼と言っては何ですが、お菓子の盛り合わせも用意させていただきますので、お楽しみいただけましたら幸いにございます」

「そうか。感謝する」

「ありがたくいただきますわ」

「ではご用意させていただきます。しばしお待ちくださいませ」


 支配人が退室すると、リバシはヴィリアンヌににこやかに声をかけました。


「幸運でしたね。様々なお茶を楽しめる催しとは」

「えぇ。そうですわね」


 にこやかに返すヴィリアンヌの感情の裏を、リバシは見抜き、笑顔のまま頭を抱えます。


(めちゃくちゃ困ってる! 何でだ!? そんなに私との茶会が長引くのが辛いのか!?)

(どうしましょう! 胸がいっぱいで、お菓子どころかお茶一杯も飲めるかどうか……! でも手をつけなかったら失礼にあたるし……!)


 リバシは勇気を振り絞ってヴィリアンヌに問いかけました。


「何か苦手な種類のお茶などありますか?」

(何が出てくるかわからない不安であってくれ!)


「あ、そうですね。苦味や渋味の強いお茶は、あまり好みませんわ」

(こ、これで少しでも飲む量を減らせれば……!)


「ではお好みのものだけお飲みください。店の都合に無理に合わせる必要もありません」

(少し安心した様子! 良かった! 量が問題だったのか!? お菓子も少しで良かったのかも知れない!)


「ありがとうございます。そうさせていただきますわ」

(あぁ、お優しい言葉……! もしかして思っていたより怖い方ではないのかも……)


「ちなみにヴィリアンヌ嬢は、どんなお茶がお好みですか?」

(この流れなら聞ける! 自然だ! 実に自然だ!)


「甘い香りのお茶を嗜みますわ」

(リバシ殿下が私の好みを!? まるで本当にデートをしているような雰囲気……! 嬉しい……!)


「そうですか。では果実の香りのお茶なども好まれますか?」

(どんどんヴィリアンヌの感情が明るくなっている! これは目的達成だな!)


「はい。最近は苺の香りのするお茶をよくいただきますわ」

(どうしましょう! 嬉しすぎて怖いくらい……! 本当はこれは夢なのではないかしら……)


「……それではお茶を待ちましょうか」

(何だ!? 不意に恐怖心が現れたぞ!? これ以上話を続けるのは危険か!?)


「はい。楽しみですわ」

(……あ……。は、話が終わってしまいましたわ! もしかしてリバシ殿下は苺がお嫌いなのかしら……!?)


「……」

(えぇい早く持って来い! 間が持たないだろうが! 飲み比べなど頼むのではなかった!)


「……」

(どうしましょう! 何かリバシ殿下のお気に召す話題は……! な、何も思い付きませんわ! 早くお茶が来ないかしら!?)


 二人がそれほど切羽詰まっているなど知る由もなく、喫茶室の厨房では丁寧に香り高いお茶を淹れているのでした。

読了ありがとうございます。


心を読めるとろくな事にならない、古事記にもそう書いてある(嘘)。

いい感じだったのに、微妙な感情の変化に怯えてしまうリバシ。

アッシスがこっそり溜息をついていますね。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 裏を読みすぎです、殿下。 なんて思ってそうですね、アッシス。
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