第十話 日程が決まってもすれ違い
やっとの事でお互いの予定を擦り合わせた二人。
いよいよ二回目の日程が決まりますが、それで安心とはならないようです。
どうぞお楽しみください。
「アッシス」
「はい殿下」
自室に戻ったリバシは、側仕えのアッシスを呼びました。
「ヴィリアンヌとの予定は、この先一月で三回空きが合致した」
「……は、はい……」
「この三回全てを生かしていくための方策だが、まず直近の予定で二回目を実施し……、お前何を笑っている……?」
「いや、すみません……! さっきの手紙を拾う速度と、そこからヴィリアンヌ嬢の所に行くまでの早さが、必死さが……!」
肩を震わせるアッシスに、リバシは怒りをにじませます。
「アッシス……! そんなに主の醜態が面白いか……!」
「面白いと言うより楽しいです」
「貴様……!」
「殿下は幼少の頃より完璧を求められておりました。お父上の即位と殿下の王位継承に、不満を持つ叔父様方に付け入る隙を与えないように」
「む……」
「私にさえ見せるのが稀になった年相応のお姿、拝見できて楽しく、また安心しているのです」
「ふん……」
心からの笑顔に、リバシは顔を背けました。
「……そんなに見たいなら協力しろ。ヴィリアンヌといられる時は、少しだけ政治を忘れられる気がする」
「喜んで、我が主」
照れ臭そうに言うリバシに、アッシスは恭しく頭を下げました。
翌日の教室。
「ご機嫌よう、ヴィリアンヌ嬢」
「ご機嫌麗しゅう、リバシ殿下」
挨拶を交わしたリバシは、すっと手紙をヴィリアンヌの机の上に置きました。
「まぁ、これは……」
「お茶のお誘いです。と言ってももう予定は合わせてありますから、来ていただけますよね?」
「……えぇ、勿論ですわ」
ヴィリアンヌの笑顔での返答に、リバシは笑顔のまま苦悩します。
(あああ! また私は脅迫めいた言い方を……! ヴィリアンヌの感情は『我慢』! ここまで恐れられているとなると、一度のお茶会では挽回は難しいか……?)
対するヴィリアンヌは、自分の気持ちを抑えようと必死でした。
(何てスマートなお誘い! 飛び上がって叫び出したい! でもそんな真似をしてははしたないですし、あくまで殿下は恋じゃなく……)
二人は気持ちを隠しつつ、にっこりと微笑みます。
「楽しみにしていますよ」
「はい、楽しみにしています」
読了ありがとうございます。
アッシスが楽しそうで何よりです。
何やかんやで一番好きな立ち位置かもしれません。
さて次回は二回目。
うまくいくのでしょうか(フラグ)。
次話もよろしくお願いいたします。




