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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第98話 魔王の進化

 俺は漆黒の球体を注視する。

 内側の魔力が渦巻いて、だんだんと質量が大きくなっていた。

 滲み出した瘴気が床を腐敗させていく。

 あまりに濃密な力は、城を崩壊に導こうとしていた。


(おいおい、ふざけんなよ。ここからまだ強くなるのか)


 俺は焦燥感に駆られて歯ぎしりする。


 間違いない。

 魔王は球体の中で進化しようとしていた。

 やはり今までの状態は成長途中だったのだ。


 振り返ればその兆候はあった。

 魔王は戦いの中で手強くなっていたように思う。

 黒い光線が反射するようになったのは、その集大成と言えよう。


(魔王は学習している。追い詰められた分だけ凶暴になりやがる)


 再生能力に任せた削り合いは失敗だったかもしれない。

 結果として魔王の能力を引き上げた可能性はある。

 ただ、俺が執拗に攻撃を繰り返して弱らせたのも事実だ。

 判断の良し悪しは微妙なところだろう。


 とにかく、このまま放置は論外だ。

 進化が終わる前に叩き潰さなければならない。

 そう決心した時、勇者が俺のそばに立って呟く。


「……あまり使いたくない力けど、そうも言っていられないね」


「何をする気だ」


「すぐに分かるよ。追撃の準備をしててね」


 両手を構えた勇者は詠唱を開始する。

 指にはめた指輪が発光し、何らかの術が発動した。

 何が起こるのかと思っていると、室内に転がっていた死体が蠢き出す。


 首と額に穴が開いた元剣聖は、無言でむくりと起き上がった。

 割れた聖剣を手に魔力が宿って青白い炎が刃を形成する。


 全身に穴だらけの元弓師は、血を吐きながら佇んでいた。

 得物の大弓が壊れているためか、両手で編んだ魔力の弓を構えてみせる。


 片腕と顔がない元戦士は、身体強化を行使する。

 筋肉が隆起して限界以上の力を発揮しようとしていた。


 突如として動いた三人を見て、俺は思わず息を呑む。

 奴らは示し合わせたかのように漆黒の球体を取り囲んでいた。


(蘇生したわけじゃない。あれはアンデッド――死霊魔術に縛られた存在だ)


 三人とも自我の感じられない顔をしている。

 ただ操られているだけなのは明白だった。


 俺は隣の勇者を見る。


「お前、死霊術師だったのか」


「うん。禁術だし勇者らしくないから封印していたんだけどね。そうも言っていられないみたいだ」


 両手を構える勇者は苦い顔をしていた。

 術の行使による負担ではない。

 死んだ仲間を使役する後ろめたさに苛まれているようだった。

 状況的に信条を崩すしかないと考えて、やむを得ず使ったのだろう。


「三人ともごめんね。少し力を借りるよ」


 勇者は辛そうな顔で両手を振るう。

 アンデッド達は漆黒の球体に向けて攻撃を開始した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! …… まさか本物の勇者が、むしろ魔王が使いそうな術を使うとは! [一言] 続きも気にしながら待ちます。
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