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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第96話 狂乱の戦場

 黒い光線を避けながら、勇者が戦況の持ち直しを図る。

 ところがそれを無視した元弓師が、遠距離から矢を連射した。


 強烈な射撃が魔王が穴だらけにして、満身創痍の肉体を壁に縫い付ける。

 刹那、黒い光線が分裂しながら解き放たれた。

 そのすべてが元弓師を狙っていた。


 元弓師は懸命に動いて回避に徹する。

 しかし、魔王から次々と放たれる光線は次第に加速していく。

 他の者にはどうすることもできない。


 やがて光線が元弓師に追い付いた。

 数百にも及ぶ針ほどの細い閃光が、全身を一瞬で貫通する。

 倒れた元弓師は血を流すだけの死体となっていた。


(畜生、また死にやがった)


 勇者の指示を無視したのは、それだけ焦っていたからだろう。

 死ぬ直前の元弓師は、明らかに冷静さを欠いていた。

 歴戦の英雄すら平常心を保てない。

 それが魔王の発する威圧感なのだろう。

 元より捨て身であり、達観して動いている俺には共感できない心境だった。


 光線で矢を破壊した魔王は床にぶつかる。

 欠損した手足を生やして、よろめきながら立ち上がろうと努力していた。

 隙だらけな姿だが、黒い光線を飛ばしてくるので油断ならない。

 あれは俺以外の奴だと即死しかねない。


 勇者は負傷した女戦士を庇いながら再び指示をする。


「仲間の犠牲を悲しむのは後だ! 散開しつつ連続で攻撃していくよ! 回復する猶予を与えなければ倒し切れるはずだっ!」


 疾走した勇者は、放たれる黒い光線を的確に避けながら接近する。

 そこから魔王の顎に強烈な打撃を繰り出した。


 捻じ込まれた拳が魔王の顔面を粉砕し、その拍子に黒い光線が四散する。

 勇者は至近距離ながらも紙一重でやり過ごした。

 さすがに無傷ではないものの、掠り傷で済ませている。

 凄まじい集中力と回避技能だった。


 魔王は勇者に跳びかかろうとして、いきなり硬直する。

 口端から一筋の血が垂れた。

 胸を割るようにして刃が飛び出している。

 魔王の背後には、いつの間にか暗殺者のカレンがいた。


 彼女は聖属性の込められた刃を胴体から引き抜くと、そこから瞬時に退避する。

 一撃離脱に重きを置いて反撃を貰わないようにしていた。

 暗殺者らしい立ち回りである。


「うぅ、ぷ」


 奇妙な声を洩らした魔王は頭部の再生を試みる。

 そこに隻腕となった女戦士が襲いかかった。

 右手で握った斧を横殴りに振るって追撃を仕掛ける。


 胴体を真っ二つにする軌道だったが、命中する直前に黒い光線が閃く。

 光線は斧ごと女戦士の腹を貫通した。


「ぐっ……くそがぁっ!」


 痛みに顔を顰める女戦士は、それでも止まらずに踏み込む。

 強烈な蹴りで魔王に炸裂させて、さらに破損した斧を振り下ろした。


 刃は魔王の胴体を割って床に刺さる。

 見事に動きを封じているが、光線で斧を破壊すれば脱出できるはずだ。

 再生能力も加味するとあまり有効な手とは言えない。


 そう思った直後、魔王が結界に囲われる。

 後方に控える元賢者の仕業だった。

 斧で動けない魔王が無数の術で拘束されていく。

 そこにウォルドとメニも援護を挟んだ。

 元賢者の術に氷の力を付与して、脱出がより困難になるように妨害する。


(さすがは勇者パーティだ。仲間が欠けても連携できている)


 生憎と俺が攻撃を入れる隙間が無い。

 淀みのない戦法に感心していると、結界の内側で黒い光が発せられた。

 魔王が光線を飛ばしたらしい。

 それは凄まじい速度で結界内を乱反射した後、術を突き破って室内全域へと解き放たれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 剣聖と弓師がこうもあっさり…… [一言] 続きも気にしながら待ちます。
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