第83話 立ちはだかる難敵
黒い丘を進む途中、頭上に強烈な殺気を覚える。
俺は見上げる前に回避した。
他の三人もそれそれ横に退く。
ほぼ同時に急降下してきたのは、紫電を纏う屈強な体格のゴブリンだった。
もはやゴブリンと称していいのか分からない外見だが、特徴的な鷲鼻と緑色の肌が合致しているのでたぶんそうなのだろう。
その強そうなゴブリンは巨大な斧を抱えて丘に着地すると、ゆっくりと俺達を見回す。
「我こそは魔王軍の幹部ギュバレット・ヘルゴルニカ。貴様らは勇者の支援部隊であるな?」
「違ぇよ。俺達こそが本物の勇者パーティだ。あっちの偽物に騙されんな」
俺は反論する。
ついでに中指を立てて挑発した。
それを見たウォルドが呆れたように嘆息する。
「ジタン……お前さん、よく言えたもんだな」
「黙ってろ。本物の許可は取ってんだ」
「いや取ってねぇだろ。魔王を倒したらって条件だったから――」
ウォルドの小言を聞き流して、俺は疾走を開始した。
幹部ゴブリンへと瞬時に接近し、包帯を巻いた魔族の腕を構える。
さらに魔族化も解放させた。
歯止めのかかっていた禍々しい魔力が全身へと浸透し、俺の力を限界以上に引き上げる。
(先手必勝だ。一気に叩き潰すッ!)
相手は魔王軍の幹部だ。
感じる雰囲気も本物である。
強敵を相手に出し惜しみしている余裕はなかった。
下手に戦いを長引かせて流れを持っていかれるのは面倒だ。
幹部ゴブリンは俺達のことを勇者の支援部隊と言った。
つまり格下として見下している。
油断しているうちに捻じ伏せるのが最適解だろう。
迫る俺を見た幹部ゴブリンは、大笑いしながら斧を肩に担ぐ。
「グワハハハハァッ! 威勢の良い男だ! それでこそ倒し甲斐があるッ!」
幹部ゴブリンが斧を横殴りに振るう。
直撃を予感した俺は素早く屈む。
その際、生身の腕だけを斧の軌道上に残していく。
当然ながら前腕が斬り飛ばされた。
しかし、断面から瞬時に魔族の手が生えてくる。
漆黒の手は人間よりも遥かに強靭で、殺意に満ち溢れていた。
今のはわざと負傷して肉体を強化したのだ。
「やってやるよ」
両手が魔族のそれとなった俺は反撃に移る。
揃えた指先をゴブリンの腹と胸に突き刺して、そのまま力任せに振り払う。
分厚い脂肪と筋肉が破れて開いて鮮血が迸った。




