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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第80話 魔王軍の歓迎

 勇者は俺達に忠告する。


「ここから先には魔王軍しかいない。見えるものすべてが敵だ。一瞬の油断も許されないから注意してね」


「任せておけ。あんたらが来る前に魔王をぶっ殺してやるよ」


 元賢者が術を発動し、空間に亀裂を作った。

 隠蔽されたその先の光景が露わとなる。


 黒々とした丘が連なった地帯が、どこまでも広がっていた。

 空は淀み切って光を通さない。

 あちこちを魔族が徘徊している。

 漂う魔力の濃さは半端ではなく、まさに魔王軍の本拠地といった有様だ。


 そこへ真っ先に勇者が飛び込む。

 奴はこちらを振り向いて手を振ってきた。


「じゃあ、先に行くね」


 それに続いて勇者パーティが一斉に侵入する。

 彼らは迎撃してくる魔族を蹴散らしながら、奥を目指して移動し始めた。

 戦闘音がどんどん遠ざかっていく。

 魔術で加速することで、一気に魔王へと接近しているのだろう。


 俺は亀裂の向こうを覗き込む。

 数え切れないほどの魔族が徘徊していた。

 漏れ出てくる瘴気の感じが禍々しい。


(この中に踏み込むなんて、自殺行為だろ……)


 俺は思わず息を呑む。

 その時、後ろからウォルドが背中を小突いてきた。

 ウォルドは性格の悪そうな顔で茶化す。


「どうした、ジタン。まさか怖気づいたのか?」


「そんなわけねぇだろ。さっさと連中を追い抜かして魔王を殺すぞ」


 反発した俺はさっさと飛び込む。

 すぐに他の三人も付いてきた。

 確かにここで足踏みしている場合ではない。

 もうやらねばならないのだ。


 勇者パーティに気を取られていた魔族のうち、近くにいた数体がこちらを向く。

 そして猛然と襲いかかってきた。


「さっそくかよ」


 舌打ちした俺は身構える。

 先頭の魔族が爪を振るってきた。

 俺は魔族の片腕で咄嗟に掴む。

 引き裂かれることなく、受け止めることに成功した。


「お?」


 不思議に思いながら魔族の腹に蹴りを放つ。

 巨体は他の奴らを弾き飛ばしながら岩に激突した。

 先制攻撃に失敗した魔族達はこちらを睨んで警戒する。

 無謀な突撃は失策だと考えているようだ。


 予想外の結果に俺は困惑する。


「なんか妙に調子がいいな」


「魔族の部分が喜んでいるんだろ。ここはそういう環境だからなぁ」


「なるほど。意外と俺が有利なのか」


 嫌な雰囲気の場所かと思いきや、肉体的には快適らしい。

 確かに普段よりも強くなっている気がする。

 移植された魔族部位が馴染む感覚があった。


 これはいい。

 勇者ほどではないだろうが、存分に暴れることができそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第80話到達、おめでとうございます! 現在同時進行中の3つの物語の中では、この物語が一番『王道』に近いと思います。 そして、ジタンの物語に負けず劣らずなのが、レードの物語。 チョイスの…
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