第79話 魔王の潜伏地
およそ三十日後。
俺達は辺境のさらに奥地にある草原にいた。
草木がすべて黒か灰色の不気味な草原である。
先頭を進む勇者が小高い丘を指差した。
そこには何も存在しない。
「ようやく着いたね。この先に魔王が待っているよー」
「待っているって、どこにもいねぇだろうが」
「目には見えないだけさ。魔力を探ってみたら分かる」
「魔力……?」
俺は意識を集中させて魔力を感じ取る。
確かに勇者の示す先におかしな反応があった。
まるで何かを隠しているかのようだった。
「ここは虚構の丘と言ってね。膨大な数の隠蔽魔術が施されているんだ。だから外からは何もないように見えるけど、実際は広大な土地が延々と広がっている。魔王はそこに潜伏しているんだ」
「どうやって居場所を突き止めたんだ」
「地道に探知した結果さ。ここまで厳重な隠蔽魔術も珍しいけど、決して完璧じゃないからね。その気になれば、中の様子を探ることができる。私達は勇者パーティだからね!」
勇者は腰に手を当てて誇らしげに言う。
俺はうんざりした気分で流して質問をする。
「作戦はもう決めてあるのか。俺達は何も聞いていないぞ」
「ここからは別行動で向かおう。下手に連携しようとしても、却って戦いにくいだろうからね。お互いを陽動にすることで、魔王のもとに辿り着きやすくなるはずだ」
「なるほどな、つまり俺達は捨て駒ってことか」
俺が嫌味を込めて言うと、勇者は首を横に振った。
彼女はこちらに顔を近付けると、真面目な顔で述べる。
「違う、違う。そういうわけじゃないよ。君達にも十分に期待しているさ。魔王を倒すだけの力を持っていると思う」
「冗談はほどほどにしとけよ。そんなはずがないだろう。所詮、俺達は偽物なんだ。あんたらの魂胆は分かっているぜ」
俺は鼻を鳴らして反論する。
苦笑した勇者は怒りもせずに話を続けた。
「まあ、どう解釈してもらっても構わないよ。やることは同じなんだから。とにかく、二手に分かれて魔王のもとを目指す。形式的には共同だけど、基本的に互いの手助けはしない。そういう方針でいいかな?」
「反対しても、どうせ強行するんだろ。くれぐれも俺たちを殺さないように、お仲間さんには釘を刺しておいてくれよ」
俺は元剣聖と元賢者を見つめながら言う。
その二人から殺気を帯びた視線を受けるも、中指を立てて応じるのであった。
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