第76話 奇妙な一行
半日後、俺達は遺跡を出発した。
本物と偽物の勇者パーティが集う計十人の大所帯だ。
なかなか混沌とした状態で向かう先は、魔王の潜伏する地であった。
勇者パーティが特定したその場所に総戦力で殴り込むわけだ。
ただし、移動中の雰囲気は常に一触即発と言えるものだった。
元剣聖と元賢者の二人が露骨に拒絶感を出している。
矛先は明らかだった。
彼らは俺の持つ魔族の力をどうしても許容できないらしい。
しきりに俺が裏切る可能性を訴えるのだが、意外にも他の連中は聞く耳を持たない。
俺には魔族殺しの実績がある上、そもそも魔王軍に寝返る動機がなかった。
ミィナやウォルド、メニの存在も大きい。
どいつも悪意を感じさせない人柄で、優れた観察眼を持つ勇者は俺達が裏切らないことを断言した。
勇者を信じる他の連中もその言葉を信じて、結果として元剣聖と元賢者だけが孤立している。
立場の悪い二人は、ますます俺の危険性を主張する始末だった。
(うるせぇな。どんだけ敵視するんだよ)
俺は苛立ちを通り越して呆れつつあった。
これから力を合わせて魔王を倒すという局面で、馬鹿なことを言っている場合ではないと思うのだが。
きっと本人達の中では重要なのだろう。
己の判断によほど自信があるらしい。
まあ、勝手にすればいいさ。
仮に二人が重傷を負ったとしても俺は助けない。
きっとこいつらも俺に助けられたいとは思っていないだろう。
つまらない意地だ。
英雄と呼ばれるほどの人間がそれで死ぬのは間抜け以外の何物でもない。
とても共感できる主義ではなかった。
心底から見下していると断言してもいい。
俺はこいつらとは違う。
どんな手段を使ってでも生き残る。
たとえ勇者パーティを利用してでも、魔王戦を乗り切るつもりだ。
元より協力関係なんて形ばかりのものである。
今回の共闘は半ば強制的だった。
俺達に断る権利はなく、珍しい駒として価値を見い出されたに過ぎない。
根本的には歓迎されておらず、向こうも俺達を使い捨てる気でいるのだろう。
(こいつらの思惑通りに進めて堪るかよ。土壇場で出し抜いてやる)
俺は密かに決心する。
今のところは圧倒的に不利だが、どこかに活路があるはずだ。
しっかりと逆襲するためにも、魔族化の制御は急務だった。
俺が持つ唯一の特徴的な能力だ。
こいつを使いこなして、勇者パーティを超えるのが目標であろう。
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