第74話 勇者達の意見
その後も遺跡での生活を続ける中で続々と勇者がやってくる。
次に登場したのは大弓を持つエルフの男だ。
カレンの紹介によれば、元は弓師で数百年を生きる英雄らしい。
ただし重度の人間嫌いなので、俺やウォルドやミィナが挨拶しても無視された。
唯一、メニに敬服するような態度を取っていたのは、エルフは精霊を尊ぶ文化があるからだろう。
その差が大きいので余計に性格が悪く思えてしまう。
かなり生意気な態度の元弓師だが、意外にも俺達の処遇については寛容だった。
よほど迷惑な行為をしなければ、引き続き勇者を名乗ることも許していいという立場だという。
その理由を尋ねたところ、元弓師は面倒そうに答えた。
曰く、氷の精霊メニが選んだ人物には異を唱えられないそうだ。
俺達への評価ではなく、メニの判断を信じた結果だった。
なんとなく腑に落ちないものの、俺達に味方する立場には違いない。
一応、感謝は伝えておいたが、忌々しそうに鼻を鳴らされた。
もっとも、根本から嫌われているわけではない。
ただ生真面目なだけで、決して悪い奴ではなさそうだった。
元弓師とほぼ同時に来訪したのは、眼鏡をかけたローブ姿の女だ。
こいつは元賢者である。
役職から分かるように魔術の達人だ。
学者としても有名で、現代魔術の基礎を築いた人物らしい。
見た目は若いが、それは魔術で操作しているからだ。
実際はかなりの高齢だという。
そんな元賢者は、俺達を見るなり攻撃を仕掛けてきた。
他の勇者が止めてくれなければ、本格的な殺し合いになっていただろう。
元賢者は魔族を絶対に許さない主義らしく、俺達と同じ場にいることさえ我慢ならない様子だった。
しきりに俺の殺害を主張するため、議論すらままならない始末だ。
かなりの過激派だが、正論には違いない。
俺はどこの馬の骨かも分からないような盗賊だ。
勇者を騙って活動する挙句、魔族に変身する能力まで持っている。
怪しさ満点であり、反論する余地がないのが悔しいところだ。
結局、元賢者は全員が集合するまで遠くで頭を冷やすことになった。
ところで、続々と現れる勇者は誰一人として仲間を連れていなかった。
単独行動の奴もいれば、普段は別の仲間と行動している者もいるという話だったが、現われるのは単独の勇者ばかりである。
このことについて質問したところ、元弓師から答えが返ってきた。
曰く、勇者が複数いるという話は仲間にも伝えていないらしい。
その仕組み自体が極秘事項で、今回も詳しい要件を伝えずに単独でやってきたのだという。
徹底した秘密主義には、彼らの用心深さが窺えた。
仲間にさえ真実を伝えないのは、万が一にも第三者に知られるのを防ぐためだろう。
国すら欺いて行動する勇者パーティは、魔王討伐に一欠片の妥協も許さないのだった。




