第71話 真実開示
ウォルドは珍しく真面目な顔をしていた。
カレンと元剣聖を一瞥した後、小声でぼやく。
「連中は俺達を何かに利用するつもりみたいだ。だから直接会って話すように言ったんだろう」
「チッ、騙されたな」
「そうでもない。ここで成果を残せば、勇者達とも和解できるかもしれないぜ。意外と悪くない展開だ。問答無用で殺し合いになるよりマシさ」
ウォルドの顔は現状を悲観していなかった。
ほどよい闘志に満ちている。
俺のように熱くなりすぎた感じもなく、冷静に物事を捉えられていた。
そんなウォルドが俺の背中を強めに叩く。
「交渉事ならおいらの方が強い。お前さんはミィナちゃんと話しとけ」
「……この状況をどう説明しろってんだ」
「そこを考えるのが仕事だろ。ほら、頑張ってこい」
俺を促したウォルドは、メニと共にカレンを連れて前進する。
向かう先は元剣聖のもとだ。
何事かを交渉するつもりなのだろう。
任せるのは少し不安だが、魔族の要素を持つ俺がいたところで不和の原因になるだけだ。
残された俺は仕方なくミィナの前に立つ。
ミィナは不安そうな顔をしていた。
「ジタン様……」
「何だい?」
「どうかお願いです。今、何が起きているのかわたしに教えてください。何を聞いてもご迷惑はかけないようにします」
ミィナが深々と頭を下げる。
その姿を見て俺は少なからず心を痛めた。
(どうすればいい。これ以上、誤魔化すのは難しいぞ)
いつかこの状況が来るとは思っていた。
先延ばしにするのが限界があったからだ。
ウォルドとメニは命を張って交渉に向かっている。
俺もここで覚悟を決めるべきだろう。
そう考えて深呼吸をする。
なるべく心を落ち着かせてから、静かに切り出した。
「――実は、俺は勇者ではない。ただの偽物なんだ」
俺は旅の始まりから順に説明する。
隠していたことはすべて明かしていった。
この期に及んで嘘や誤魔化しに頼るつもりはない。
「そういうわけで、俺は本物の勇者と対話しようとしているわけだ。どうだ。頭がおかしいと思わないか」
俺は自虐も交えて言う。
ミィナは下を向いたまま何も言わない。
きっと怒っているのだろう。
当然の反応である。
次の瞬間には殴られたとしてもおかしくない。
そう考えていたが、ミィナは何もしてこなかった。
顔を上げた時、彼女は穏やかな表情だった。
「ジタン様が勇者でないのは、なんとなく分かっていました。こうして告白されても驚きはありません」
「へぇ、気付いていたのか」
「確信はなかったです。ただ、何度か疑った瞬間があったので……」
ミィナは何かを思い出しながら苦笑する。
こちらは気付かれないように努力していたが、やはり疑念は抱いていたらしい。
だから俺の告白も受け入れられたのだろう。
「真実を知ってどんな気分だ。お前は聖女ではなく、まんまと盗賊に騙されていたわけだが」
「それ、は」
ミィナの顔が僅かに曇る。
何かを考えている。
それからミィナは儚げな笑顔になった。
「最初に言った通り、ご迷惑をかけるつもりはありません。わたしは聖女として勇者ジタン様をお慕いしています」
最低な偽勇者に対して、ミィナは丁寧に礼をするのだった。




