第7話 奴隷の処遇
明け方、馬車は近くの街に到着する。
俺達は連れてきた奴隷を孤児院と教会で降ろした。
事情を説明したところ、それぞれの責任者は親身に対応してくれた。
こういった施設はたまに職員の性根が腐っているが、今回は問題なさそうだった。
相手の善悪を嗅ぎ取る技能は、盗賊人生で散々に鍛え上げてきた。
百発百中に等しい精度を誇っており、とても信頼できる指標である。
だから孤児院と教会の安全性は疑っていない。
俺が勇者を騙ったのも大きいだろうが、彼らの対応は模範的と言えるものだった。
これで奴隷達の生活は保障されたも同然だ。
裕福とは言い難いものの、まともな扱いを受けられる。
真面目に働けば、暮らしには困らない。
一人でやっていける者はすぐに出ていくだろう。
腕っ節が強ければ傭兵や冒険者になれるし、専門の技能で職人になることだって可能だ。
俺みたいに盗賊の道を選ぶこともできるものの、碌な末路を辿らないだろうからやめた方がいい。
とにかく、あとは自力で頑張ってもらうしかない。
お膳立てとしては十分すぎるくらいだと思う。
救い出した奴隷と早々に別れた俺達は、ついでに馬車も丸ごと売り払って身軽になった。
奴隷商と傭兵の遺品だけは背嚢に保管しておく。
武器や道具は金がかかるので、死体から奪うのが経済的だった。
そのまま売ってしまうのはもったいない。
俺とウォルドは街の通りをのんびりと歩く。
「よし、片付いたな。旅を続けるか」
「まだ遠くに行くのか」
「当然だ。この辺りだと顔が割れている可能性が高い。最低でも国外だな」
盗賊ジタンは有名ではない。
それでも活動地域は慎重に考えた方がいいだろう。
うっかり正体が暴かれては洒落にならない。
先ほども孤児院と教会でバレやしないかと肝を冷やしたのだ。
向こうが大所帯の奴隷に気を取られていたのが良かった。
そうでなければ不審がられた可能性は大いにある。
長居すると不味いと察し、引き止められながらも逃げてきたのだった。
俺は小声でウォルドに述べる。
「ここからは乗合馬車で移動する。今後は妙なことに巻き込まれないように気を付けるぞ」
「そんな風に不安がってると、向こうから厄介事が来るぜ? 口に出すと実現するって言うからなぁ」
「勘弁してくれ……」
面白がるウォルドに、俺は深いため息で応える。
俺は勇者の名声で楽な人生を送りたいだけだ。
命に関わる殺し合いなんてしたくなかった。
そういう大変なことは、本物の勇者に任せるのが一番だろう。
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