第64話 気まずい道中
翌日、俺達は関所を出発した。
牢獄の捕虜は始末して氷国の土地に埋めた。
死体は秘密を喋らない。
秘密を守るなら、これが最も合理的だろう。
関所の兵士には、適当な言い訳をして誤魔化した。
普通なら怪しがられそうだが、彼らにとって俺は恩人であり、世界有数の英雄である勇者である。
なんだかんだで納得してくれたので問題ないと思われる。
今から俺達は勇者パーティのもとへと赴く。
あまり望ましくない展開だが、純粋に興味も湧いていた。
真の英雄とは一体どんな野郎なのか。
俺のような盗賊がそのような人物と話せる機会なんてない。
あわよくば公認で偽物になれるかもしれないという考えもあった。
さすがに楽観視しすぎだろうが、最も望ましい展開を定めておくことも大切だ。
とにかく敵対関係を避けるのが前提で、なんとか良い形に持ち込みたい。
色々と考えていると、隣を歩くミィナが心配そうに見上げてきた。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いみたいですが……」
「平気だ。おかげでかなり良くなった」
ミィナは昼前に関所に帰還し、包帯男になった俺を見て仰天した。
そのまま卒倒しそうにになりながらも治療魔術をかけてくれた。
おかげで外傷の大半が消えてなくなっている。
回復した部位は人間の状態に戻った。
以前、移植した魔族部位もなぜか跡形もなくなっている。
魔族化をきっかけに何らかの変化が生じたらしいが、詳しいことはよく分からない。
唯一、丸ごと魔族の腕になった片腕だけは禍々しい形状のままだ。
現在は厳重に包帯を巻いて隠している。
欠損している状態から生えてきたのが原因だろう。
隻腕より便利そうなので放置しているものの、不味そうなら切り落とすつもりだ。
ちなみに、今の状況についてミィナには説明していない。
彼女は俺達を本物の勇者パーティだと思っている。
その嘘が前提にあるため、どうしても上手く誤魔化せないのだ。
だからミィナは詳しいことを知らずに同行している。
時折、不安そうな様子を見せるが、問いただしてくるようなことはない。
それだけ俺達のことを信頼しているのだろう。
別に罪悪感は覚えない。
ただ裏切られたのだと悟った時、ミィナがどういった行動に出るか不明だった。
失望するだけならまだしも、怒りのままに攻撃されるかもしれない。
(その時は腹を括って殴られるか)
幸いにも俺は少しばかり頑丈になった。
ミィナの全力でも死にやしないだろう、たぶん。
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