第52話 王国の陰謀
半日後、俺は関所に設けられた牢獄にいた。
滅多に使われないそこには、十数人の男達が収容されている。
こいつらは使者の一団だ。
正確には正規の兵士と雇われの傭兵が混ざっている。
あれから俺達は関所の連中を呼び出して、協力してこいつらを牢獄にぶち込んだのだ。
(ったく、手間をかけさせやがって……)
椅子に座った俺は、煙草をくわえて息を吐く。
身体には倦怠感がこびり付いていた。
戦いの後も作業が続いて疲れているのだ。
先ほど尋問が終わったところだった。
予期せぬ殺し合いに巻き込まれたので、その経緯を知りたかったのである。
向こうは勇者を狙っていたようなので本来なら無関係だったが、今はそうも言っていられない。
使者の一団に甚大な被害を出した挙句に責任者の優男をぶっ殺した。
さすがに言い逃れできない状況であった。
諸々の事情を探っておいた方がいいのは間違いなかったので、尋問を実施したのだった。
まあ、実際のところは拷問と呼ぶべき行為の連続だった。
見せしめに何人も殺しながら責め立てるような場面が何度もあった。
生き残った者達は、忠誠心を捨てて素直に情報を吐いたから死なずに済んでいる。
逆に口を割らなかったり、反抗的な態度を取った者は関所の裏に埋められている最中だ。
ちなみに関所の連中には、王都の使者を騙る盗賊だと伝えている。
当初は訝しまれたが、ミィナが発表すると一様に信じ込んだ。
聖女の力を改めて実感した瞬間だった。
そんなわけで手に入った情報は、表沙汰にできない陰謀ばかりである。
まず優男を筆頭とする使者の一団とは、とある伯爵が派遣した交渉部隊らしい。
奴らの目的は勇者の懐柔。
伯爵の傀儡に仕立て上げて自由に操れるようにすることだ。
それが難しければ抹殺するという段取りだったという。
昨今、一部の貴族は勇者の活躍を疎んでいるらしい。
彼らはどこの派閥にも属さない英雄の評判が高まることを良しとしていない。
過激派にもなると、勇者の不要論を持ち上げているそうだ。
戦争特需の観点から考えた場合、人類と魔王軍の戦いは続くべきらしい。
魔王軍との戦いで国内全体の景気が良くなっており、荒くれ者も兵士として登用されることが増えた。
結果、職にあぶれて犯罪者になる者が減った。
だから勇者を懐柔することで、国内情勢を制御しようと考えた。
ようするに自分達の利権を確保するための行動だ。
もし勇者を抹殺した際は、偽物の勇者にすげ替えて活動させるつもりだったらしい。
魔王討伐に向けて動いているように見せかける計画まで練っていたそうだ。
それを暴いたのが勇者を騙る元盗賊なのだから、なんとも皮肉な縁であった。
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