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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第51話 後処理

 俺が到着する頃には、ミィナの戦闘は終了していた。

 一人で多人数を相手取るのは過酷なはずだが、彼女にはまだまだ余裕そうだ。

 この三カ月で鍛え上げて、肉弾戦にますます磨きがかかったようである。

 聖女としてはどうかと思うが、そういう立ち位置も悪くないだろう。


 俺に気付いたミィナが血相を変えて駆け寄ってきた。


「ジタン様! 大丈夫ですか!?」


「あー、問題ない。傷だらけだが今回も生き延びた」


 満身創痍だが意外と平気だ。

 少なくとも今すぐに死ぬ予感はない。

 何度も負傷すると次第に慣れてしまう。

 気絶しそうな痛みも同様だった。


 少し遠くに視線をやると、逃げ出す者達がいた。

 形勢逆転は不可能と判断して撤退し始めたらしい。

 そりゃそうだろう。

 奴らの大半は雇われの傭兵だ。

 ここで命を懸けるような義理はないだろう。


 俺の視線を辿ったミィナが尋ねてくる。


「一人も逃がさない方がいいですか……?」


「いや、放置しよう。連中にできることなんてない。報復を企むようなら、その時に叩き潰すだけだ」


 追ったところで大した収穫にはならない。

 それに、辺りに倒れる人間は大半が気絶していた。

 ミィナは命までは奪わなかったようだ。

 情報が欲しければこいつらから抜き取れるので、ここで追撃は不要だろう。


「それより応急処置を頼む」


「は、はい! すぐに始めますね」


「指は繋がりそうか?」


「たぶん大丈夫です。治癒魔術も練習をして、色んな傷を治せるようになりましたから」


 ミィナは手早い動作で俺の状態を確かめていく。

 冷静な顔つきで進める姿は、一流の治療術師と称しても何ら違和感がなかった。


(いよいよ本物の聖女だな)


 そんなことを思っていると吹雪が止まった。

 遅れてウォルドとメニがやってくる。

 治療される俺を見たウォルドは、茶化すように笑った。


「よう、また死ななかったのか」


「残念か?」


「まさか。傷だらけで苦しむお前さんが見れて嬉しいぜ」


 冗談にしても辛辣だが、元からこういう奴だ。

 俺は肩をすくめるだけに留めておく。

 一方、メニが俺の顔を興味深そうに覗き込んできた。


「メニの力、使いこなしてる」


「凍らせて止血させたことか? それなら無意識だから使いこなしてはいない」


「十分すごい。素質があるかもね」


「何の素質だ?」


「精霊騎士の素質」


 思わぬ評価を受けた後、ウォルドが背中を叩いてきた。

 そして親しげに囁いてくる。


「よかったな。転職先が見つかったんじゃないか?」


「俺は勇者を辞めるつもりはない」


「わたしはジタン様が何になられても応援しています!」


 ミィナが目を輝かせて表明する。

 その宣言を聞いた俺は、ただ苦笑するしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話のラスト十数行を読んで、 本物の勇者パーティーらしくなりつつも、ジタンを始めとするメンバー全員のキャラ立ちにブレが無いのを、 良いと思いました。 [一言] 続きも楽しみにしています!
[一言] 伝説を築くのに使相応しそうな素質だな!苦労するだろうけど
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