第49話 致死量突破
優男の頭が揺れて倒れた。
鮮血が雪の積もる地面を染めていく。
痙攣するその様を俺は凝視する。
少し経ってから鼻を鳴らし、優男に声をかけた。
「下手くそな演技だな。まだ生きてんだろ」
直後、優男が膝立ちになって何かを投擲してきた。
首を傾けると、そこを掠めるように小さなナイフが通過する。
攻撃を外した優男は憎々しげな顔になった。
力尽きてうつ伏せに倒れるも、片手剣を杖にしてなんとか立ち上がる。
首と側頭部から血の刃が生えていた。
距離もあったので傷は浅く、致命傷には至らなかったようだ。
優男は刺さった血の刃に触れて激昂する。
「屑、が……こ、姑息な手段を使い、やがって……ッ!」
「おいおい、甘いことを言うなよ。殺し合いなんだぜ? お上品な決闘をしているわけじゃないんだ。生き延びるためなら何だって利用するさ」
俺は雪を拾って手のひらで錬金術を使った。
無数の氷の粒になったそれらを全力で投げ付ける。
優男は片手剣で防御した。
散らばった氷の粒を完全に凌げるはずもない。
衣服や防具に命中するも、大半はただ当たっただけだった。
唯一、露出した皮膚だけは、氷の粒で軽傷を負っている。
痛みは気になるにしろ、それでも致命的な傷ではないだろう。
何も見えない優男は、しきりに辺りに顔を向けながら叫ぶ。
「正々堂々と勝負しろォ!」
その間に俺は別の死体を物色して、クロスボウを発見した。
しかも都合よく装填済みである。
俺は片腕でなんとか照準を合わせて発射した。
優男は風切り音から反応し、片手剣で迎撃しようとする。
ところが紙一重で間に合わず、矢は奴の右肩を綺麗に射抜いた。
「ぐぅ……っ」
優男は苦痛に顔を歪めながら耐え、矢の発射された地点に向けて斬りかかってきた。
無論、その頃には俺は退避している。
奴の斬撃はただ死体を真っ二つにしただけだ。
俺は死体から手に入れた未開封の瓶を振りかぶる。
それを笑いながら放り投げた。
「……ッ」
優男は上手く反応して瓶を切り裂く。
そして、中身の酒を頭から被った。
優男は咳き込みながら吼える。
酒が傷にしみるらしい。
俺はその姿を眺めながら木の枝を握る。
錬金術を発動すると、先端に火が点いた。
「あーあ、高そうな酒だったんだがね」
俺は指で弾いて木の枝を飛ばす。
それは回転しながら優男の腕に当たる。
次の瞬間、奴の全身が一気に燃え上がった。




