第47話 平和的な会話
俺は悠々と前に進む。
短剣を揺らしつつ、気さくな口調で優男に声をかけた。
「よう、どうした。顔が真っ赤だぜ。一目惚れでもしたのか」
「……黙れ。醜い低能な傭兵め」
優男は侮蔑を露わに言葉を返してくる。
ミィナと話していた当初は爽やかな風を演じていたが、その本性は薄汚れていた。
目的のためには手段を選ばない人間である。
一方でその佇まいは、吹雪の中で分かるほど安定していた。
激情に駆られながらもぶれず、冷徹な目で俺を観察を続けている。
(こいつ、相当やるな……)
俺は表情には出さずに優男を評する。
まだ若そうだがかなりの実力を備えている。
少なくとも、純粋な実力と才能は俺とは比べ物にならない。
真っ向からの決闘では、百戦百敗の確信があった。
それほどまでの差を感じる。
この男の素性は知らない。
ただ、王都からの使者という話が本当ならば、高名な騎士や貴族ではないか。
或いは武功を積み上げる英雄か。
表向きの気品も備えていたので、まったくの見当違いではないと思う。
何にしても、俺とは住む世界の違う人種だった。
装備の質も高い。
いずれも魔術効果を施された代物だ。
武器は緩やかに湾曲した片手剣で、他にも隠し持っている予感がする。
不意の攻撃には注意しなければ。
(この吹雪だと、ミィナを呼ぼうにも声が届かねぇな。一人で戦うしかないってことか)
ウォルドとメニも吹雪の発動に集中していた。
つまり俺の役割は、使者の一団を取り仕切るこいつを潰すことだった。
優男は片手剣を俺に向けながら要求を述べる。
「さっさと勇者の居場所を吐け。お前のような下郎にかける時間はない」
「知るか。ようやく優雅な暮らしができると思った矢先に、随分な挨拶をしやがって」
俺は歩み寄りながら怒気を滲ませる。
向こうが怯むことはなく、ただ蔑みを込めた視線を投げかけてくる。
俺は短剣に魔力を流しながら舌打ちする。
「お前らの陰謀なんざどうでもいい。勇者のことも興味ない。俺達を巻き込むな。ぶっ殺すぞ」
「口の悪い男だ。勇者が足止めの捨て駒にするのも納得だな」
「言ってろよ。クソ野郎の勘違いを正してやるほど暇じゃねぇんだ」
俺は血を吐き捨てる。
それから舌を出して大げさに笑った。
「死体にゃ口無し。これからくたばる奴が勇者のことなんて気にすんな」
「……蛮族め。叩き斬ってくれるッ」
激昂した優男が勢いよく斬りかかってくる。
俺は初撃を短剣を弾くと、その顔面に肘打ちを捻じ込んだ。




