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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第46話 血みどろ

 怒り狂う大男が丸太のような腕を突き出してくる。

 俺は首を掴まれて持ち上げられた。


「ぐ、ぼぁ……ッ!?」


 急激な力で圧迫された首が軋む。

 意識が途切れそうだった。


 その状態で大男の追撃が襲ってくる。

 もう一方の手で拳を作ると、容赦なく顔面を殴打してきやがった。


 圧倒的な暴力だった。

 一撃ごとに顔がどうにかなりそうだ。

 脳も揺れて気持ち悪い。


 その中で抱いた感情は恐怖……ではなく怒りだ。

 好き放題に殴られる怒りを感じていた。


「この、くそボケがァッ!」


 俺は血を飛ばしながら叫ぶと、渾身の力で脚を振るう。

 爪先が大男の目を蹴った。

 大男は痛みに悶えながら手を放す。


「ぎゃっ」


 着地した俺は低い姿勢で突進する。

 勢いを乗せて短剣の刺突を繰り出して、大男の腹に炸裂させた。


 衝突でよろめかせた後、足払いで転倒させる。

 そして、股間を全力で踏み潰した。

 あまりの激痛で大男が気絶したところで、心臓と首を刺して殺す。


「はぁ、はぁ……ちっ、ちくしょうが。滅茶苦茶しやがって……」


 俺は血をこぼしながら立ち上がる。

 折れた歯を吐き捨てて、顔を手で撫で回した。


 全体が熱を帯びて痛い。

 元の造形が分からないほどに腫れている。

 吹雪で積もった雪を顔面に塗りたくると、少しは痛みが緩和した。


 俺はひん曲がった鼻をつまんで正しい位置に戻す。

 鼻が詰まっているので口で呼吸を繰り返した。


(ったく、魔族の力で無双するつもりだったんだがな……)


 今は使者の一団を潰す真っ最中だ。

 俺は酷く消耗していた。

 肉体的には以前よりも強くなっている。

 咄嗟のことで道具類を持参していなかったり、義手がないという要素もありはするが、ここまで苦労するとは思わなかった。


 現時点でだいたい二十人くらいは抹殺してきた。

 吹雪を盾に陰湿な奇襲を仕掛けた結果だ。

 寒さを感じないほどに動き回ってきたわけだが、俺自身も傷だらけである。

 打撲や裂傷や骨折は数え切れず、流れた血は衣服に染みて凍っている。

 こうして立っているだけで気絶しそうだった。


(本物の勇者なら、ここまで苦戦はしないんだろうな)


 俺は自嘲気味に鼻を鳴らす。


 遠くから微かに怒声と悲鳴が聞こえてきた。

 少し遅れてミィナも参戦して、軽快な動きで使者どもを蹂躙している。

 俺のように泥臭い戦いはしていない。

 一方的な勝利を重ねていた。


 ウォルドとメニは遠隔で吹雪を操作している。

 有利な状況を維持しつつ、直接的な戦闘には加わっていない。

 まあ、十分すぎるほどの活躍をしているので文句はなかった。


「……さて、俺も頑張るかね」


 俺は欠けた短剣を回しながら笑う。

 視線の先には、使者代表の優男がいた。

 奴は憎悪と殺意に満ちた顔で俺を睨み付けていた。

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