第44話 本領発揮
俺は背中に手を回す。
刺さった矢と魔術の礫を確認すると、走りながら乱暴に掴んで引き抜いていった。
(くそ、ちょっと痛ぇな)
魔族部位でも普通に痛みは感じる。
まあ、初撃を耐えられただけで収穫だった。
俺達はそのまま関所を越えて、氷国へと踏み込むことに成功する。
(これで俺達の勝ちだ)
そのまましばらく進んでから足を止める。
俺はメニに声をかけた。
「もう大丈夫だな」
「うん」
頷くメニが魔力を高めていく。
それはあまりにも膨大で、原始的な暴力だった。
濁流のような魔力が周囲の冷気と風を強めていく。
状況から察したウォルドが納得する。
「なるほど。そういうことか。咄嗟によく考えたな」
「えっと、どういうことですか!」
ミィナが慌ててこちらを向いた。
彼女はまだどういうことか分かっていないらしい。
とりあえず俺達に合わせて撤退していたようだ。
俺はミィナの疑問を流して国境側を睨む。
「すぐに分かる。さあ、奴らが来るぞ」
武器を構えた使者の一団がやってくる。
奴らは俺達を再び射程内に捉えると、先ほどと同様に遠距離攻撃を放ってきた。
もはや躊躇いがない。
遠慮なく俺達を殺しにかかっている。
しかし、今度は一つも命中することはなかった。
横からの暴風が矢も魔術も残らず巻き上げていったのだ。
突然の事態に連中は動揺する。
「急に吹雪がっ!?」
「お、あががが、顔が、凍る……っ!」
吹雪のせいで見えにくいが、かなり慌てているようだった。
当然ながらこちらも冷えているが、吹雪が当たる場所ではないので幾分か楽だ。
というか、魔族部位のおかげで普段より平気な気がする。
巡る魔力が熱を帯びているのか。
心臓に宿る精霊の力も大きいだろう。
寒いというより、涼しいくらいの感覚で済んでいる。
気分が良くなった俺は、使者の一団に向けて叫ぶ。
「俺達には氷の精霊の加護がある! お前らには止められねぇよッ!」
あそこで逃走を選んだのは、メニを氷国に踏み込ませるためだった。
彼女は自国を出ると大幅に力が弱まる。
ウォルドとの契約を使えば凄まじい能力も発揮できるが、あれは消耗が大きいので奥の手だ。
無闇に発動すべき代物じゃない。
一方で今回の方法なら問題なく使える。
支配域でのメニはほぼ無敵だ。
使者の一団など無力に等しかった。
もっとも、このまま待つほど俺は臆病者ではない。
背中の借りを返さねばならないのだ。
吹雪の対策をする奴もいるだろうし、ここで追い打ちをかけた方がいい。
「さて、反撃の時間だ。派手にぶっ潰してやろうぜ」
俺は吹雪に襲われる使者達へと襲いかかった。
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