第36話 魔改造
起きると深夜になっていた。
窓の外には夜空と月が見える。
ウォルド達と話した後、半日以上は眠っていたらしい。
まだ疲労が残っていたようだ。
俺はふらつきながらベッドから立ち上がる。
義手がないので重心に違和感がある。
転ばないように気を付けなければ。
部屋に姿見があったので、傷の具合を確かめておくことにした。
治癒魔術である程度までは治療が済んでいるはずだ。
その上でどうなっているか気になる。
今後に影響が残る傷の有無も確かめておかないといけない。
俺は全身に巻かれた包帯を引き剥がして裸になる。
肉体には大量の手術跡が刻まれていた。
治癒魔術だけでなく、かなりの荒療治で処置したのだろう。
それほどまでに深刻だったのだと思う。
無数の縫合痕は指にも残されていた。
そういえば戦闘中に欠損したのだった。
誰かが拾って繋げてくれたらしい。
試しに指を開閉してみるも、特に問題はなさそうだ。
各所の皮膚は部分的に黒ずんでいる。
触れてみると感触がおかしい。
皮膚だけでなく筋肉ごと移植されているようだった。
爆破で吹き飛んだ分を埋めたのだろう。
俺は黒っぽい皮膚をつまみながら首を傾げる。
(まさか魔族の死骸を使っているのか……?)
この質感になんとなく見覚えがあったのだ。
そんなことが可能なのか定かではないが、こうして動けているのだから成功したのだろう。
治癒魔術で馴染ませたに違いない。
(この分だと輸血やら内臓移植もありえそうだ)
俺は全身の縫合痕を弄りながら考える。
別にそれに関して文句を言うつもりはない。
結果的に死ななかったのだから感謝しかなかった。
後遺症と思しきものもなさそうだ。
俺は魔族の死骸を移植された人間になったらしい。
いよいよ勇者から遠ざかり始めたが、別に元から近付いていなかった。
だから大した問題ではない。
それより魔族にちなんだ恩恵が楽しみである。
身体機能が向上したのではないか。
あれだけ苦労したのだから、多少は報われてもいいと思う。
他の者達は眠っていた。
叩き起こすのも憚られるので、詳しい説明は朝に聞けばいいだろう。
俺は包帯を巻き直して服を着ると、関所の外へと出た。
敬礼する兵士を横目に周辺を散歩する。
身体の調子を確かめるのが目的だ。
ずっと寝ていたので感覚が鈍っている。
五感を研ぎ澄ませるには夜闇がちょうどよかった。




