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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第27話 共闘

 ミィナが魔族に跳び蹴りを浴びせようとする。

 魔族は振り向きながら前腕で防いだ。

 太い前腕が軋みながら折れる。

 あれは骨が砕けただろう。


「ぐ、うっ」


 呻いた魔族は、標的を俺からミィナへと切り替える。

 両者はその場で壮絶な肉弾戦を開始する。

 ミィナは目にも留まらぬ速度で動きながら応じていた。


 その様子を目の当たりにした俺は驚愕する。


(あんなに強かったのか!?)


 いくら獣人でも魔族と素手でやり合えるとは思えない。

 ましてやミィナは元奴隷の少女だ。

 同族の中では身体能力が飛び抜けて高いわけではないのだ。


 そう思ってよく観察していると、ミィナの全身が仄かに発光していることに気付く。

 魔族の爪が掠るたびに裂傷を負うが、すぐさま塞がっていく。


 どうやらミィナは全身に治癒魔術を発動させているらしい。

 それによって全自動の回復効果を得ているのだ。

 異様な身体能力の高さも、骨と筋肉を治し続けることで限界以上の動きを実現しているのだろう。

 だから単独で魔族と渡り合えている。


(無茶だ。長持ちしないぞ)


 俺はミィナの無謀な作戦に焦りを感じる。

 治癒魔術を行使し続けるのは困難だ。

 多大な集中力を要するうえ、いずれ魔力が枯渇する。

 その状態で肉弾戦を繰り広げているのだから、ミィナは凄まじい才覚を発揮していた。


「俺も負けていられねぇな……」


 背嚢から聖水漬けの手斧を掴み取る。

 重さを確かめるように回転させた。

 直前までの焦りはさっぱりと消え去っている。


 一人で駄目なら二人でやればいい。

 簡単な理論だ。

 ミィナに任せ切りにするのではなく、俺も参戦するのである。


 丸薬の効果があるうちは足手まといにならない。

 聖水が有効なのはよく分かっている。

 魔族の妨害に徹して、ミィナの強烈な一撃が当たるようにするのが堅実だろう。


「かかってきやがれ、クソ魔族がァッ!」


 喉を嗄らさんばかりに叫びながら突進する。

 挑発に反応した魔族は、その一瞬を突かれてミィナに殴られた。

 苛立ちから反撃するも、ミィナは軽々と避けて距離を取っている。

 獣人族の軽快な動きが治癒魔術の支えでさらに強化されては、さすがの魔族も純粋な速度では敵わないようだ。


「ええい、小癪なぁッ!」


 魔族が爪を振り回しながら咆哮した。

 怒りに任せて込められた魔力は、目視以上の切れ味と射程を生み出す。

 ミィナは余力を残して避けて、俺は喉を切られながら後ずさった。


「ぐぼぁっ!?」


 血が噴き出したので、慌てて発熱させた義手で傷を焼き固める。

 白煙と一緒に嫌な臭いがした。

 それでも死ぬよりましだ。

 首の皮膚に違和感を覚えつつ、俺は魔族に手斧を叩き込むのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] さあ、ミィナとジタンの力が尽きるまでに、魔族を斃せるのか? [一言] 続きも気にしながら待ちます。
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