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ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~  作者: 結城 からく


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第25話 命を削り進む

 熱の衝動が俺を立ち上がらせた。

 身体が軋む……が、痛みはだいぶ薄れている。

 完全に消えたわけではなく、痺れのような感覚に近くなっていた。

 これは後で響いてくるだろう。

 想像しただけで嫌になる。


(まあ、動けるようになったからいいか)


 俺は吐血しながら納得する。

 丸薬は即効性だ。

 服用した端から肉体に変容を起こす。


 脳内麻薬でも分泌されているのか、気分が良くなってきた。

 神経が刺激されて意識が研ぎ澄まされていく。

 苦痛に支配されていた思考が明瞭となり、いつもより働いている気がする。

 絶好調と評しても過言ではない状態だった。


 俺は一歩ずつ前に進み出る。

 特に支障はないが、心臓の鼓動がうるさい。

 明らかにいつもの数倍は速いだろう。

 苦しさは感じないものの、だからこそ余計に不安になる。

 副作用で死ぬことも覚悟しなければならない。


(まあ、いいさ。どうせならあいつを道連れにしてやる)


 死の予感も恐ろしくない。

 それを抑制するだけの心構えだった。

 俺がくたばる時は、魔族の命も奪い取ってみせる。

 そうして氷の精霊を救うのだ。


 しかし、勇者を羨んで死ぬ男の末路にしては、些か綺麗すぎやしないか。

 俺みたいな外道には、おぞましく無価値などうしようもない終焉が望ましい。

 誰かを救うための自己犠牲など似合わない。

 だからここで死ぬことはないだろう、たぶん。


 俺の視線は前方の魔族に固定されていた。

 奴はまだこちらに気付いていない。

 一直線にメニのもとへ向かおうとしている。


 だから俺は咳払いをしてから呼びかけた。


「おい。待てよ」


 魔族の足が止まる。

 奴がこちらを振り向くと、うんざりした顔で嘆息した。


「しぶとい男だ。そうまでして苦しみながら死にたいのか」


「うるせぇな。手加減ばっかしやがって、殺しが嫌いな臆病者かよ」


 俺は半笑いで肩をすくめる。

 すると魔族から表情が消え去った。

 限界まで怒気を抑えた声音で魔族は問いかけてくる。


「――今、何と言った?」


「聞こえなかったのかよ、クソ狼野郎。お前が臆病者で馬鹿な雑魚だって言ったんだ!」


 俺がそう返した瞬間、魔族の姿が消えた。

 いや、違う。

 四足歩行になった魔族は大地を蹴って疾走してくる。

 そして目の前で爪を振り上げた。


「死ね」


 迫る一撃には致死の威力が込められている。

 これまでに受けた攻撃とは明らかに違う。

 俺を確実に抹殺するという意志が曝け出されていた。


 間もなく爪が振り下ろされる。

 俺は紙一重で躱しながら踏み込むと、魔族の胴体に組み付いた。

 血反吐を垂らしつつ、渾身の笑みで告げる。


「は、はは。ようやく、見えた、ぜ……」


 魔族が驚愕に目を見開いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうとも、ジタン、『人間の意地』を、目にもの見せてやれ! [一言] 続きも超楽しみにしています!
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