第24話 立ち上がれ
(自嘲している場合じゃねぇな。こんなところで死んでたまるか)
俺は気合で腹に力を入れる。
口から鮮血をこぼしながら呼吸を繰り返した。
樹木に手をかけて立ち上がる。
猛烈な痛みが今はありがたい。
おかげで気絶せずに済む。
俺は接近する魔族に義手を向けて炎を放射する。
魔族は片腕で軽々と振り払うと、悠々と突き抜けてきた。
「この程度か? 愚かな小細工だな」
魔族は拳を振るう。
俺は義手で遮るように防御した。
またも吹っ飛ばされて岩に激突し、大地に突っ伏すように倒れ込む。
たぶん一瞬だけ気を失った、と思う。
背中を打った衝撃で復帰できた。
だけどもう限界だ。
全身が痛すぎる。
ただ生きているだけで骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げていた。
それでも俺にだって矜持がある。
あっけなく倒されるだけでは我慢ならない。
攻撃を食らうたびに苛立ちは募り、無力な己を呪い殺したくなる。
その衝動を生きる糧に変えた。
土だらけの顔を気合だけで上げる。
魔族は遠巻きに俺を眺めていた。
追撃を加える気が無いのは、その必要性すら感じないからか。
俺が立ち上がらないのを確認すると、魔族は何もせずに踵を返す。
「憐れだな。勇者を騙るならば、相応の実力を身に付けろ。欲を掻いて氷の精霊に関わるからこうなったのだ」
霞む視界の中、魔族の後ろ姿が遠ざかっていく。
魔族は両手を広げながら声を張って宣言する。
「氷の精霊。貴様の力をいただくぞ。邪魔者はここで消えてもらう」
「ジタン! さっさと起きろ! こいつをぶっ殺すんだろ!?」
ウォルドの叫びが響き渡る。
まだ逃げ出していないらしい。
奴なりにメニを守ろうとしているのだろうか。
いざという時はやはり律儀な男である。
俺は震える両手に力を込める。
吐き気を堪えながら身体を起こした。
「うるせぇ、な……ちょっと待ってろ」
俺は血だらけの手で懐を探り、黒い粒を取り出した。
こいつは錬金術と調合術で生み出した丸薬だ。
凶暴な魔物の素材を練り込んでおり、服用すると身体機能が飛躍的に上がる。
強烈な反動を我慢すれば、実に優れた道具だった。
(あまり使いたくねぇが……仕方ない)
俺は嘆息しつつ、丸薬を口に含んで噛み砕く。
苦味を耐えて嚥下した。
その瞬間、胃の中から爆発的な熱が広がり始めた。




