第18話 思わぬ展開
その後、俺達は宮殿の一室に集まっていた。
凍った木製の椅子は、表面の苔がなければ尻が死んでいただろう。
出された紅茶も氷の膜が張っている有様で、とても飲めたものではない。
洩れるため息がずっと白い。
室内にいるのは、俺とミィナとウォルドと氷の精霊の四人である。
兵士は部屋の外に待たせている。
とりあえず最小限の人間だけで話をすることに決めたのだ。
兵士達に余計な混乱を生ませたくないのもある。
(まったく、厄介なことになりやがった)
俺はうんざりしながら視線を対面に向ける。
そこには、ウォルドに抱き付く氷の精霊がいた。
先ほどから無表情で密着しながら頬ずりしている。
されるがままのウォルドは触れられた面に霜が付着していた。
唇が青黒くなって震えている。
さすがに看過できなくなり、俺は素の態度で話しかける。
「……おい。そろそろ離してやれ。凍死させたいのか?」
「まさか。メニはこの男が好きだ。燃えるほど愛している」
「し、死ぬ……」
ウォルドが呻く。
いつも飄々としたこいつが弱気になるとは、本当に不味い状態なのだろう。
しかし、相手は氷の精霊だ。
逆らうこともできず、かと言って従えば緩やかに死んでしまう。
見かねた俺は義手を前に突き出す。
「ちょっと熱いが我慢しろよ」
手首から出た小さな管から炎が噴射された。
それがウォルドを軽く炙って霜を溶かす。
高熱のはずなのに、ウォルドは安らかな顔をした。
体内まで冷え切っていたのだろう。
密着する氷の精霊にも炎は当たったが、まったく効いていない。
冷気で炎まで凍らされてしまう始末である。
魔術的な力が特殊な現象が起こしているらしい。
俺がちょっと改造した程度の攻撃では通用しないようだ。
(まあ、人命救助には役立ったから無駄ではなかったな)
最初に氷の精霊が抱き付いた時、ウォルドは氷漬けになったのだ。
義手の炎で咄嗟に溶かせなければ死んでいただろう。
今はだいぶ症状が緩和されたが、命に関わる状態には違いない。
しかし、氷の精霊が離れようとしないため、このような形が続いている。
ちなみに話し合いを提案したのは俺だった。
ウォルドに抱き付いた氷の精霊がそれを承諾して現在に至る。
ひとまず戦闘を回避できたわけだが、代わりにウォルドが窮地に陥っていた。
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