表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/196

綾錦の広場の翁

掲示板まとめ

・「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫じゃない、問題だ」

・東のボスが強い!でも、北のボスも強い!そうだ、生産職に装備を発注しよう。

・生産職「見た目重視でつくるぜ!」探索者たち「協力するから性能上げて」


西の大国、紅色の広場にて、まず目に入ったのは門だ。


両脇の建物の間をふさぐような壁に二つのゲートが開いており、その上にサーカスのピエロのような塔が二つ並んでいる。


蘇芳の下地に白枠の小窓の縞模様の入った服を着たピエロである。黄緑色というか黄色みがかった青緑色の帽子を被っている。



振り返れば、噴水。


イギリスの庭園にありそうなお洒落なアーチに囲まれた八角形の噴水だ。


赤茶色の縁の中、茶色の水を吹き出す部分が中央に設置されている。大きなお皿が一枚と上に小さなお皿が一枚付いた二段階方式の吹き出し装置だ。


蔦が絡んだアーチの支柱に寄り添うように薄い赤紫色の花が鈴なりに咲いた木が四本植わっている。


四枚の花弁がそろった小さな花が枝の先に密集して実る見た目からして、おそらく紫丁(ライ)()(ック)だ。ふんわりと甘く優しい香りが漂ってくる気がする。



「こんなところで、なにをぼっさとしとる」


背後からかけられた声に驚き飛び上がりかけた。視線を向ければ、そこには偏屈そうなお爺さんがいた。



「ぅえ、ごめんなさい!」


「きょろきょろと忙しない。どこの田舎もんか」


眼光鋭いお爺さんに思わず背筋を伸ばして答える。



「さっき、この国に来た探索者のルイーゼです!綺麗なところなので見とれてました!」


その言葉を聞くとお爺さんは少し雰囲気を和らげて頷いた。


「着いたばかりの探索者か・・・ふんっ、なら仕方ない。この綾錦の広場は美しいからな。見惚れるのも仕方ない」



綾錦の広場。名前まで流麗なところだな。しかし、本来は秋に来る場所だったろうか。


西、白虎、司る季節は秋。道中のモンスターは強くなるけれど、景観は秋が見ごろの可能性が高い。


いや、でも、紫丁(ライ)()(ック)も綺麗だし、春の景色も見ごたえあるな。



「儂はゴーキ・ギックリオだ」


そう言って、噴水の方を一瞥して言葉を続ける。


「荘厳な噴水だろう?植わっている木は豊かな水と多量の実り、健やかな命を表しとる」


へー。綺麗な噴水だなぁと思っていたけれど、そんな意味があったのか勉強になる。



「で、いつまでここで時間を無駄にする気だ?」


ギックリオお爺さんの顔がまた険しくなってしまった。


移動したいのは山々だけど、どこに行けばいいのかサッパリ。紅色の建物ばかりで各々の役割が判断できない。



「冒険者ギルドってどれですか・・・?」


「なんだ、迷子か。・・・ギルドはそこの赤い建物だ」


ギックリオお爺さんは門の方を指さす。ありがとうございます。


でも、赤い建物で説明されると付近の建物すべてが赤いんですが。どれだか分からない様子の私にお爺さんはさらに詳しく言葉を足してくれる。



「ほら、あれだ、あの門の左側にある赤いの…」


「あ!あれですね。ありがとうございます」



お爺さんにお礼を言って立ち去ろうとしたが、そう言えばこの国の名前を聞いていない。


「あの、この国の名前って……」


「お前さん、名前も知らん国に旅して来たんか……」


う、いや、ゲームってそういう物でしょ?VRMMOでは着いてから国とか街の名前が分かるのは普通でしょ。



「ふんっ、ここは西の大国へクセンシュスだ」


「ヘ、へクセンシュス…!?」


と、とんでもない名前の国じゃないですか!戦慄する私の様子に気づかずにギックリオお爺さんは誇らしげに胸を反らす。


やめてください!そんなことをしたら……!?



「小粋な名前だろう?『魔女の一撃』という意味でな。海の男に似合いの名だ」


ああ!?やめて!そんなに腰を反らないでください。一撃が、一撃が入ってしまう。


ギックリオお爺さん。名前を聞いた時には何も気づかなかったけど、国名を知った後だと怖い名前だ。お爺さんの腰が心配で気が気でない。



「最近の若いもんは海にも川にもいかず、軟弱な仕事ばかりしおる。ヘクセンシュスに生まれたからには男は漁師をせにゃならん!」


そ、そうですね!?理解したので今すぐ腰を正常位に戻してください。お願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ