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地鶏は美味の危険

前回のあらすじ

・バロンによって三枚の毛皮etcに化けた黒狼

・フロストウォーカー付のショートブーツ

・見渡す限りの砂漠


バロンの輝かしい御姿ならいつ迄も見ていられるけれど、砂漠で野宿することになるのも嫌なので出発することにした。


地面には粒子の細かい砂が堆積しており、歩くたびに足が砂の中に沈み込んで運歩の邪魔をする。


無駄に足腰に力が入り、現実だったら明日は筋肉痛に悩まされそうだ。



早々に自力で歩くことを諦めたバロンは私の肩の上で周囲に睨みを利かせ牽制している。


バロンの睨みを受けたモンスターは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


モンスター避けもできるなんてバロンさん、万能。



「あ、鳥……」


前方に鳥を発見した。真っ赤な鶏冠を持った真っ赤な鳥である。姿形からして鶏だと推測される。


鶏というと赤い鶏冠に白い羽毛の紅白なイメージが強いが、あの鳥は体まで赤い。


記憶を探れば地鶏は赤色というか、茶色だった気がする。


つまり、あの鶏は地鶏。すなわち、あの鶏は美味しい。



「からあげ・・・やきとり・・・てりやき・・・・・・」


脳内を美味しい鳥料理の定番が占拠していく。


フライドチキンとか油淋(ユーリン)(チー)も美味しいよね。


食欲に突き動かされて体が勝手に鶏に近づいていく。なんだかとってもお腹が空いたな。



『っどうした!なぜ、あの鳥に近づいていくのだ!まて!』


バロンの静止に無意識に動かしていた足を止める。


いけない。美味しそうな鶏を見つけて、思わず無防備に近づいてしまった。


あの鶏だってモンスターなのだ。どんな攻撃をしてくるかも分からないのに危険すぎる。



「ご、ごめん、バロン。お腹が空いてたみたい・・・」


バロンには呆れた眼差しを向けられました。頭上でウサギにも呆れられている予感がする。ごめんなさい。



鶏はかなり近くに来ており、戦闘を避けられそうにない。



エスクロ Lv.6



識別の結果、また長い名前を・・・長くない?どうしたの?すごく短い名前じゃないか。


とても簡潔。何語かは分からないけれど、わかりやすい名前だ。



さて、気を取り直して、戦闘開始だ。


エスクロ鶏の先制攻撃!こちらを向いた鶏がカッと目を見開き、口を大きく開けて開戦の合図を告げる。


「コォケッコォッコォォォオオオオオオ!!」



うるさっ。フィールド中に響き渡るような声で鳴き続ける鶏。肺活量いくつなの。


鶏の声に引き寄せられたのか周囲にモンスターが集まってきた。


(わし)のカーちゃんに蛇にダンデなんとかな笑い栗鼠(りす)、視線を走らせればモンスターに包囲されている。



これは、まずい。料理にした時の不味さの話ではなく、鷲のカーちゃんは突風を、蛇は火のブレス、栗鼠は周囲のバフが可能なことが問題なのだ。


栗鼠のバフ、蛇の火ブレスにカーちゃんの風魔法が合わされば、とんでもない威力の炎のブレスが繰り出されるかもしれない。



ウサギが「モッフモフやぞ」を使用し、(きた)る衝撃に備える。私もウサギに対して鼓舞を使い、防御力の増強を試みる。



スキルの使用とともに、どこからか大量の足音が地面を揺らし、太鼓を叩く音がそれに重なる。


そこへ笛の音が加わり四方に散っていく。


ウサギに向けて一筋の光が差し、ウサギの周りを光が舞う。


まさに鼓舞、といった演出によりウサギにバフが掛かる。なにこれ、格好いい。



しかも、この鼓舞というスキル、重ね掛けが可能で更なる強化を加えられるようだ。


スキルの発動時間と効果時間の関係で無限に重ねられるわけではないが、嬉しい仕様である。


とりあえず、重ねられるだけ重ねておこう。



警戒する私たちを無視して、モンスターたちは各々忙しそうだ。


蛇に向かって噛み付こうとしたり、風を起こしたりと攻撃する鷲のカーちゃん。


そんなカーちゃんへブレスを吐き出す蛇、両者を指さし嗤う栗鼠もいる。



集まってきたモンスターの半数くらいが同士討ちをしており、そんなモンスターが障害物となって、こちらまで届く攻撃はほとんどない。


その隙にバロンが鳴き続ける鶏を倒し、周囲を飛び回る他の鳥や栗鼠を掃討していく。


ピンチだと思ったけれど、そうでもなかったみたい。


モンスターたちの仲間割れに救われたようだ。



それにしても、とんでもない鶏だった。周囲のモンスターを呼び寄せるなんて恐ろしいスキルである。


モンスターたちの仲が良かったら丸焼きにされていたかも。鶏を焼いて食べようとしたら自分が焼かれるところだった。



アイテムポーチの中を確認すれば、ちゃんと鶏肉が入っている。やった!何にして食べよう。


『おぬし……』


「ぇあ、ちがうの!鶏肉おいしそうとか考えてないの!本当に!・・・・・・・ちょっとしか」


『・・・・・』


「・・・・ごめんなさい」



仲間たちの呆れた視線に耐えながら道を進む。砂漠の砂に苦心して歩調も乱されるけれど、私は二匹の足です。頑張って歩くので許してください。



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