恍惚・後方・考慮
テイムって何だっけ?
抱きついた極上のもふもふに夢中で、流れる声を上の空で聞き流す。
辺りに響く爆音を背景に二人きりの時間を堪能していると、突然、音が止んだ。
不思議に思い上げようとした頭の上に顎が添えられ、固定される。顔が動かせない。ああ、でも、
この感触は素晴らし過ぎる。恍惚として抱きついた姿勢から、更に距離を詰める。
「・・・・・まさか、此奴が受け入れるとは・・・・」
誰かの声がする。
頭の上からではなく、後方。誰かいるの?
頭を動かそうにも先程顎に固定されてしまった。視線だけでも動かしてみたが、もふもふに阻まれて何も見えない。
待って、この体制、貴方以外何も見えないの(物理)。もう少し横にずれてください。
「・・・これも運命か・・・・・・」
もふもふガードが固すぎる。何も見えない。
声が聞こえて後、喉の奥からは心地好い爆音ではなく、低い唸り声が響いている。
話しているのは誰?貴方は何に対して唸っているの?
声の主が現れてから、急に空間の温度が上がった気がする。背中から焼けつくような暑さを感じる。
私の背後に何が居るんですか?
「しかし、このままでは些か問題もあろう・・・」
背後で何かが動く気配を感じる。
「異食の徒となるか、それとも・・・・・・」
――まぁ、好きにせよ
視界の端で銀色に耀く靄が見えた気がした。