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苦渋の宿船・憂悶の子船

※少しショッキングな内容を含みます。


「そ、そういえば、運河のわきに、移動用とは別の箱型の船が泊まってるのを見かけたんですけど、あれはいったい・・・・」


「ああ、宿泊用ボートハウスですね。


数か月前に発表された探索者訪れの予言により、宿泊施設の増設が必要になった街の人々が苦肉の策で設置しました」



最近設置されたものなのか。


でも、新しそうな船もあったけれど、そうでないものも存在した気がする。



「元々この国は旅人も少ないので宿泊施設もそう多くありませんでした。


導かれし探索者達を迎えるために収容数を増やそうにも建物の建設には時間がかかります」


はい。家とか一年くらいかかりますよね。大きな施設なら更に時間が必要。



「そこで、住民達は保管していた船を改造し、足りない分は造船して宿泊施設の代わりとしたのです」


確かに家と船なら船の方が早く造れそう。船を一から造るのではなく改造というのなら尚更。



「支流で見かけた子供がいっぱい乗った船も、そうですか?」


「・・・・・子供がいっぱい?」


「はい、東と南の間で・・・・金網と板で補強された赤茶色の船でした」


クロウさんは少し考えこんだ様子。なんだろう、聞いてはいけないことだったろうか。



「・・・・それは、おそらく、捨て子ボートです」


「すっ――」


「誤解しないでください。名前は不穏ですが健全な施設です。…あそこでは孤児達の保護活動を行っています」


孤児の保護…でも、捨て子って…



「乳幼児…大体、歩き始める前までの子供をボートで育てています。


ボートを出るまでの間に里親を探し、見つからなかった子は孤児院に引き取られます」


「あの・・・・」


「運悪く両親を亡くし引き取り手もいなかった子供や……金銭的、体裁的な理由で手放された子の保護もしています」


「・・・・・・」


本当に捨て子ボートだった。ファンタジー世界の闇を見た気がする。なんだか悲しくなってきた。



「そんな顔をしないでください。


捨て子ボートは身寄りのない子供達、中でも無力で他人の助けが必要な乳幼児の命を救う施設です。


この施設で育ち、幸せになった子もいます。親に捨てられたからって、皆が不幸になるわけではないのです」



きっと、捨てる人には捨てる人の事情があるのだろう。子供たちが道端に捨てられて、保護されれば良いが、死んでしまう場合もある。


そういった可能性を減らす施設として捨て子ボートは必要なものなのだろう。



元ネタはポーゼン

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