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自家撞着


就寝前のストレッチ感覚で死に戻りをする他の探索者たちとは違って、私はちゃんと安全対策をした上で野宿によりログアウトした。


本当は村や風車小屋のような一夜を明かせる建物があれば良かったのだが、南の国に入ってから一度も風車小屋を見ていない。


村はあるだが、風車小屋もあった胃痛国のようにログアウトしたい時に都合よく見つけることはできなかった。


しかし、私はこんな事もあろうかとセドネフさんから事前に寝床の周囲を安全地帯にする方法を教えてもらっていた。


セドネフさんはこの方法を胃痛国の神父様から聞いたそうで、あの国はこんなことも教えずに子供を追い出すようになったのかとか、神父様はどうされたのだろうとか、よく無事にここまでたどり着けたねとか、百面相をしていた。


セドネフさんの勘違いをはやく正さないといけないとは思うものの機会を逃したまま探索に出てしまった。


今度会ったら、ちゃんと私が大人の探索者だと伝えよう。


セドネフさんの気にしていた神父様のことは胃痛国に帰ったらクロウさんに聞いてみようか。


私が知っている神父様はクロウさんしかいないのでセドネフさんに安全地帯の作り方を教えた神父様が現役かどうかを知らないのだ。


クロウさんなら同じ神父仲間として知ってそうだし、安全地帯作成法についてさらに詳しい情報を教えてくれそうだ。



ちなみに、この安全地帯は安全地帯とは言うものの簡易的なものでしかなく、街や村にあるような頑丈なものではない。


安全地帯となる結界を張った人物か、その人物の仲間——パティメンバーがその結界の範囲内から一歩でも外に出たら効果はきれる。


また、安全地帯の中から外のモンスターに向けてこちらの存在を知らしめる行為を行っても結界は無くなってしまう。


つまり私が今ここで簡易安全地帯をつくっても、バロンが外に飛び出してモンスター狩りをしたり、安全地帯の中からモンスターに攻撃したりしたら、安全地帯の効果は無くなってしまうということだ。


だからバロンの協力を得られないと安全地帯で休むことはできない。結局、バロンの説得に成功しないと特訓は終わらせられないし、休憩1つとることもできないのだ。



現在の窮地はひとまず置いておいて、その安全地帯のつくり方の話をしよう。


簡易な安全地帯をつくることは思ったよりも簡単に可能だ。道具などは必要ない。祝詞とともに身体を動かし、神に祈りを捧げることで結界は形成される。


この祝詞と祈りの作法は地域によって異なるらしい。南の地域で北の祈りを捧げても安全地帯はつくれないし、東で西の祝詞を唱えても効果はない。


私がセドネフさんに教えてもらった南の儀式の動きは両手を広げ、くねくねとした不思議な動きをさせて、大きく伸びをすると言うものだ。


この時一緒に唱える祝詞は・・・ちょっと上手く言葉では言い表せない。


不思議と耳に残るため、覚えるのはさほど難しくはないのだが、しかし、全くもって何語か分からない不思議な言葉である。


それは祝詞というよりも不思議な呪文だった。


この南の地方では森を神聖視し、大切にしているらしい。そのため、祝詞も動きも森に祈りを捧げ、豊かな稔りに感謝するものだと聞いたが、私には難しくて良く分からなかった。



ただ、森に捧げる祈りの(くだり)にて、街の人々が温泉好きな理由を聞くことが出来た。


森を育み、森に育まれた湧き水に身を浸すことで森の力を身体に取り入れる儀式の名残こそが温泉に身を浸す理由らしい。


確かに温泉は湧くものだが森・・・?温泉に森は関係しているのだろうか。


温泉のお湯はお湯であって水ではないし、植物にお湯をかけるのはよろしくないだろう。


それに温泉のお湯はどちらかと言うと火山の影響の方が大きいと思うのだが、この世界では違うのだろうか。


まぁ、儀式が行われていたのは昔のことで、今はその名残として温泉に浸かっているらしいので、森と温泉にたいした関係がなくても良いのかもしれない。


セドネフさんも「昔は儀式の一環として温泉に浸かったらしいけど、今は皆、暑い日差しの元、温かい温泉に浸かるあの刺激が癖になってしまっているらしいんだ。かく言う僕も好奇心で一度入ったら、やめられなくなってしまって・・・・・本当に癖になるんだよねぇ」と言っていた。


だから今街の人たちが温泉に入る理由に森の儀式はあまり関係ないのかもしれない。


うん?でも、それはそれで問題があるような?熱中症待ったなしで命知らずな行為も宗教的な儀式と言われれば、多少は納得できる。しかし、結局、宗教は関係ないとなると・・・・・?


詳しく考えるのはよそう。ただ一つ心に決めたことは、私は絶対にこの国で温泉に入らないと言うことだ。私はあの集団に仲間入りしない。



とにかく、私はセドネフさんに教えてもらった不思議な祝詞と踊りによって、安全に野宿を決行できるようになったのだ。


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