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悔悟憤発


「ふごっ!」



あ、ごめんなさい。本当にごめんなさい。咄嗟に掴んだのはおもちゃさんの服でした。


掴まれたおもちゃさんは体勢を崩し、近くにあったウォトカさんの服を掴む。


ウォトカさんは筋肉さんを巻き込んで倒れ、人間ドミノが完成した。私を起点におもちゃさん、ウォトカさん、筋肉さんの順にドミノのように倒れていった仲間たち。


ああ、本当にごめんなさい。私はなんてことを。



「うわーん!ごめんなさい!」


「ナイス!ルイーゼちゃん、ナイス!」



事態に気づき、すぐさま己の転倒に巻き込んだおもちゃさん達に謝る。


しかし、それを見ていたリーダーさんにはむちゃくちゃ褒められた。


自分たちが蹴り倒す前に速さに不安の残る二人が倒れてくれたので、なんとか全員が大魔王の攻撃を避けられたらしい。


いや、確かにウォトカさんも筋肉さんもダメージを負っていないけれど。すっごい喜ばれているのが心苦しい。私、転けただけなのに。



「ちな、気にするな。蹴り倒されるより優しい」



酒瓶に口付けながらウォトカさんが慰めてくれる。


確かにウォトカさん達は蹴り飛ばされたり、蹴り転ばされたり、散々な扱いだ。


文句も言わずに粛々と受け入れていたように見えたけれど、実は嫌だったのかな。慣れた様子でさあ、蹴れって感じで蹴り待ちしてたけど。



「野郎っ・・・いつの間に団扇拾いやがったんだっ・・・・!」



メタモルフォーゼ前の大魔王はバロンによって羽団扇を奪われていた。


そのため、攻撃も招雷のみだったが、先程の攻撃は炎龍だった。羽団扇が手元にないと行えない筈の攻撃である。


見れば、大魔王の手に羽団扇が戻っている。


バロンが攻撃で吹き飛ばしたとはいえ、羽団扇は壊れていなかったし、飛んで行った先も巨体をほこる大魔王からすればそう遠くない距離だったのだろう。


メタモルフォーゼ後のごたごたの時か、イナバウアーの時にでも拾ったみたいだ。



「僻遠の彼方にでも蹴り飛ばしておくべきだったな・・・・・」



後悔先に立たず。これで大魔王の両手に錫杖と羽扇がそろってしまった。


二つそろった大魔王の攻撃は変幻自在で避けるのも難しくなる。反復横跳びを繰り返していた前半のようにはいかない。



「奴は俺が見張っておくから、みんなは自分の足元を見といて。杭が現れたら飛ぶこと。それ以外は俺の声に従って。いいね?」


「おう!」


「サルミアッキは俺のフォロー役ね」


「よかろう。大船に乗った心地で任せるが良い」


「もうひと踏ん張りだ!気合入れていくよ!」



リーダーさんの号令に活を入れられ、リーダーさん以外の全員が一斉に地面を凝視する。


足元に杭が現れたら飛ぶ。


バロンがブチ切れる前、大魔王が一度目のメタモルフォーゼをきめる前にも似たような作戦をとった。


あの時のように、杭が生えた瞬間に横へ飛べば落雷を食らうことはないだろう。


落雷が来る前にジャンプが出来なさそうなウォトカさんと筋肉さんは、それぞれ鍋を身代わりに差し出したり、木の像になって落雷をやり過ごしたりと、ダメージを軽減して耐えていた。


今回も同じ作戦で行くのだろう。ん?でも、それだと、二人の回復が必要になるな。


ウォトカさんが多少、自己回復ができるとはいえ、完全には避けられない二人を回復する人は必要だろう。


リーダーさんは大魔王の一挙手一投足を監視するのに忙しいだろうし、もう一人の回復役である私が担うのが適任だろうか。


でも、それだと足元ばかりを見てられないな。回復のために周囲もちゃんと視認しないと。



「安心して。ルイーゼ」


どうしようかと悩む私の足元に白いもふもふ。


「ルイーゼには僕がついてるから」


「アイギス!」



最近、うちのアイギスちゃんの騎士化が著しい。


いや、アイギスは初めから騎士だったか。盾職スキルを得る前でも身を挺して庇ってくれたし。


その後もずっと、全身全霊をかけて守ってくれている。感謝の気持ちを込めて今夜は何でも好きなものを食べさせてあげるからね。ブラッシングもマッサージも頑張るよ。


もちろん、遠くの方で大魔王を蛸殴りにしてるバロンにもフルコースを送るよ。


私、バロンのこと忘れてない。忘れてないから、大魔王を打楽器代わりに叩いて自己主張するのはやめて。叩くたびに大魔王が奇声を発して怖いから。


感動的に見つめ合う私とアイギス、二人の間に流れるBGMはオ“ア”ァ~だかオ“エ”ェ~だか分からない大魔王の叫び声だった。


感動がどこかに吹き飛んで行ってしまう。合いの手を入れるように重そうな打撃音が一定の間隔で入るのが余計に嫌だ。




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