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九死一生


「そろそろ一回目の半分まで削れるよ!攻撃パターンが変わるかもしれない!気を引き締めて!」



一進一退の攻防を繰り返し、大魔王のHPバーの半分まで体力を削れた。


ゲームにおいて、ボスのHPをきりの良いところまで削るとボスの攻撃が過激化したり、より厄介な攻撃をしてきたりするようになると言うことはよくあることだ。


大魔王の攻撃も激化することが予想される。


そしてその予想は外れることなく、大魔王が今までにない行動を起こした。


右手の錫杖を打ち鳴らし、錫々とした音を響かせる。一回、間を開けて二回。



「ルイーゼ!」



大魔王の動きを注意していたら、アイギスに体当たりをされた。完全無警戒だったこともあり、勢いに負けて尻もちをつく。


え、なに、アイギス、だっこ?今大魔王の攻撃が危険で危ないからちょっと待ってね。


なんて考えた私の近くに雷が落ちる。ちょうど少し前まで私がいた位置だ。


轟音と共に閃光が弾け、土や草が焼け焦げたにおいがする。落雷の跡には大きく抉れた地面と変わり果てた草花が残されていた。



「あ、アイギス~~!ありがと————!!」



あ、危ない。すごく危ない。あんなの受けてたら、ひとたまりもないよ。


特にひ弱な後衛は一瞬ですべての体力を持っていかれそうだ。リーダーさんやサルミアッキさんは大丈夫だろうか。


リーダーさんは無事だ。落雷の直前、己の足元に突然出現した何かに驚いて、その場を飛びのいたらしい。サルミアッキさんも同じく。


よく見れば、落雷により焼け焦げた地面の中心に金属の杭のようなものが残されている。私がいた所にも、リーダーさんのいた所にも、サルミアッキさんのいた所にもだ。



「どうした!?吞兵衛ぇ!奇跡でも起きたのか!?」



そう言えば、後衛の事は確認できたけれど、音からして雷は前方にも一つか二つ、落ちている。


リーダーさんの言葉からして一つはウォトカさんを襲ったのだろう。しかし、それにしてはリーダーさんの反応がおかしい。奇跡とはいったい。



「吞兵衛が直撃を食らってないだと!?」



ウォトカさんの周囲の地面は焼け焦げて色が変わっていた。しかし、ウォトカさんも直撃は回避できたらしい。


と言っても、ウォトカさんが自力で避けられた訳ではない。雷の方がウォトカさんを避けたと言うか、ウォトカさんの大鍋が雷を吸い寄せたようだ。


大鍋を握っていたらウォトカさんも共に感電したのだろうが、偶然手を放したタイミングで落雷に会ったようでウォトカさんも深刻なダメージは負っていない。


鍋との距離が近かったため、多少のHP減少はあるが回避を捨てて攻撃をまともにくらっている何時もの比ではない。


ウォトカさんは雷の音に驚いて鍋から手を放したのだろうか。火事場の馬鹿力かもしれない。ウォトカさんも本当に命の危険を感じた時には素早く動けるのかも。



「一度目の破邪の錫音とともに対象を選択し、その者の直轄地に杭を打ち込むようだ」



落雷跡に残された杭を指し示すサルミアッキさん。その言葉を引き継いで、リーダーさんが皆に指示を出す。



「奴が錫杖を打ちならしたら、すぐさまその場を飛び退いて!それで落雷を避けられるはずだよ!」



雷の落ちた跡には必ず避雷針のような杭が残されている。


これは大魔王が一回目に錫杖を鳴らしたタイミングで落雷の対象者の足元に出現するらしい。


そのため、一回目の打ちならしの時にその場から飛び退けば落雷を避けられるとリーダーさんは考えたようだ。



「来るよ!飛んで!」



合図とともに全員一斉にその場から飛び退く。いや、全員と言うと語弊がある。


ウォトカさんと筋肉さんは飛んでいないから。


かわりに、ウォトカさんは合図とともに手に持った鍋を放し、筋肉さんは木の像に変わる。


それぞれが落雷への対策を取り、大魔王の雷を防ぐ。


そうして嵐が過ぎ去ったら、回復職は回復を、身軽な前衛は攻撃を、盾役のウォトカさんは放り出した鍋を拾い大魔王の反撃に備える。


体力が半分を切った大魔王は前衛後衛関係なく無差別に時間差なしで落雷攻撃をしてくるが、落雷以外の攻撃も間に挟んでくるので気が抜けない。


雷が来ると思って飛んだら、強風に煽られて飛んで行っちゃいましたとかありそうで怖い。私やアイギスは特に。


今のところは、リーダーさんが大魔王の動きを観察し、合図を送ってくれるので皆何とか攻撃をやり過ごせている。


ぎりぎりのところで持ちこたえながらも、果敢に大魔王へ攻撃を続けたことでこの戦闘にも終わりが見えてきた。


大魔王のHPは残りわずかだ。やった!あと少しだ。私、この戦闘が終わったら、朝までぐっすり眠るんだ。




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