械・罠・恐
「書けました」
お姉さんが用紙を確認し、何か機械のようなものを取り出す。現実世界にはない不可思議な形をした機械である。形からは何をする機械なのか想像できない。
お姉さんが持っていた用紙を機械の前に翳すと、機械の口?が開き、用紙を食べた。
っ!?食べた!?
「こちらに手を置いてください」
「え」
この何だかよく分からない珍妙な機械に手を置く?笑顔で勧めてくるけれど、本気ですか?さっき用紙を食べた機械かも怪しい物体ですけど!?
私の狐疑逡巡を知ってか知らでか、お姉さんは機械らしきものをこちらに押し出してくる。
「噛みませんかっ!?これ!!」
「噛みませんよ。噛まれた人もいません」
本当に!?先程の光景を見た後だと信用できない。
しかし、冒険者ギルドに登録するためにはこの物体に触れる必要がある。登録した冒険者は皆、これに触れているようだし、腹を括るしかないのだろう。
女は度胸。ええい、ままよ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・あの、危険はないので触れてください」
分かってる。分かってはいるんですけど、見た目が。どこがどういう機能を果たすのか全く想像できない形。こことか、そことか、突然動いたり、噛みついたりしないだろうか。
「にー・・・」
バロンが腕の下に頭を差し込み、ぐいぐいと押し上げてくる。
バロンさん、そんなことしたら例のブツに触れてしまいそうなのですが。
「はい」
お姉さんがバロンによって押し出された手の下に、すかさず機械を差し入れる。見事な連携により、私の手が機械に触れてしまった。
「―っ」
途端に崩れる硬質であった筈の機械のフォルム。周囲に伸びる細長い何か。色は黒。いや、黄色、灰色、虹色。
先刻から、ずっと、手を引こうと力を入れているのに、いつの間に、がっちり固定されていて動かせない。離してください、お願いします。300円あげるから~~~っ(泣)




