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開幕・邂逅・怪物
闇。
闇。闇。闇。
混沌の闇が空間を埋め尽くす。
漆黒よりなお深い混沌は渦を巻き、蠢いている。
その脈動する暗闇のなか金色の瞳だけが爛々と輝き、眼前を飛ぶ蝶を眺めるように、目の前の玩具のなぶりがいを見定めるように瞳孔を鋭く尖らせている。
視線にさらされた身体が勝手に震えだし、寒さに抱き締めた身体はその震えを止めるすべなどないと雄弁に語っていた。
息の仕方がわからない。呼吸が苦しい。脳に酸素がいかないのか、思考が上手くまとまらない。
格が違う、次元が異なる、矮小な人間ごときがどうにかできる存在ではないと、五感すべてが訴えかけてくる。
VRMMO『イディオートの夢』、
そのチュートリアルにて、チュートリアルというにはあまりにも凶悪な存在が此方を見下ろしていた。