嘱目。
銃と弾丸。高校生活を送る上でこの二つが必要になることがあるだろうか。きっと偽物だ、そうに決まってる。
何も見なかったと何度も自分に言い聞かせて個室から出る。
「とりあえず落とし物ってことで職員室に…?」
「待ちなさい」
いつからそこに居たのだろうか。
重く険しく佇む少女の姿がそこにはあった。
長嶺みうみ
“その少女”は鋭い目で見たこともない銃を構えていた。
いつもの温和でふわふわしている所謂、不思議ちゃんの長嶺みうみではなく、険しく明らかに殺意に満ち、今にも引き金を引きそうな顔で僕を見ている。
「長嶺?その、、貧血は?もういいのか?」
歯に噛んでみせたが恐怖でうまく笑えない。
心臓が冷たくなっていくのが解る。
「冗談よせって!ほらこれ、お前の鞄。
さっき忘れて行ったろ。そんな怖い顔すんなよ別に何も見てないからさ。」
「それエアガンだろ?当たったら普通に痛てぇし女子には似合わねぇぞ。」
震える手を握り締め全身に力を入れて声を絞り出し長嶺に鞄を投げ渡した。
「ありがとう。でも気を付けてメンバーに接触したら只じゃ済まないから。」
そう言い残し長嶺は立ち去って行った。
胸を撫で下ろすと同時に状況を全くを飲み込めずにいた。
クラスの不思議ちゃんがいきなり本物か見当もつかない銃を突きつけてきたのだ。
誰だって恐ろしくなる。こんなにも恐れたのには勿論理由がある。
何故かハッキリと見えてしまったのだ。
長嶺に撃ち殺されるビジョンが、あまりにも明確に。
しかしあの言葉が引っかかる。
“メンバー”
まるで検討もつかないが
とにかく授業を受けなければならない。
AM8:45
こんなにもスリルに満ちた朝はもう二度とごめんだ。
気が狂ってしまいかねない。
メンバーだかなんだか知らないが同好会や部の部員のことだろう。
そんな得体の知れないものにに恐れていてもしかたない。
一限目の予鈴がなり自分の教室に向かって走っていると窓から一瞬ギラリと光が刺した。
パッと目を向けると
何故か全身が冷や汗でじっとりとしていることに気づいた時にはもう遅かった。
どのくらいの速さだろうか。何秒?コンマ?
“それ”は 僕の今までの人生をあっという間に追い越すものだった。
真っ直ぐに、一直線に刺す一筋の光が僕の脳天を貫いた。