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邂逅。

さて、この物語を始めるにあたって知っておいていただきたいことが一つだけある。


それは、この物語が「時間」という絶対的概念に抗う物語であるということだ。


だが、そんなに力まず、是非とも下らない三文劇を見に行くような、暇だから覗いてやろう程度の心持ちで見ていただければ僕冥利に尽きるというものだ。


それでは━━━━━━━━━━━

 


2014年 AM 7:55分


僕、西黒日和が

この春、高校に入学してから早2ヶ月が経過した。特に女子絡みのイベントや不良生徒に焼きそばパンをパシらされる等のイベントは発生しなかった。


当たり前といえば当たり前だ。

分かってはいたことだがどこか拍子抜けしている自分が居ることもまた事実なのだ。


新しい環境に身を置く時に

自分の日常が一変し、なにかとてつもなく大きい変化が起きるのではないかと根拠の無い妄想をはりめぐらせ肥大化させてしまうのは、僕の悪い癖だ。


そしてその都度、思い知らされる


この世界は僕が思ってる以上に僕に興味がないと…。


もう分かった…分かったから時間よ、早く経て...カップラーメン3分の要領で3年が経過してくれればどんなに楽だろうか…。


そしていつも通りの朝、ため息を吐きながらまだ目新しい制服に袖を通し、朝食を半ば無理やり頬張りながら家を出る。


自転車に乗るや否や6月の雨の匂いが混ざったぬるい風に少し煽られよろけながらペダルを踏んだ。


本当に嫌になる。何もかもがだ。時折、こうして自分が機械のように同じ時間に起き毎日バカのひとつ覚えのように同じ1日を過ごしていることに全くもって生産性が無いような気がしてしょうがないのだ。


なんて、我ながら陰鬱な思考に浸っているのも束の間

突然、突風に煽られ横転してしまった。


自転車を起こそうと周りを見渡すとクラスでどことなく僕と同じ匂い(要は陰キャ臭)を醸し出していた『長嶺みうみ』が倒れているではないか。


言い訳のように聞こえるかもしれないが、僕は本当に何も悪くない。ただ風に煽られ自転車ごと倒れ、ただ起き上がろうとした。すると目の前に所謂、「クラスに1人はいる不思議ちゃん」が倒れていたのである。なんと間の悪い話だろうか。


「長嶺!大丈夫か!おい!長嶺!」

懸命に声を張り続ける僕に対して彼女は少し微笑みながら、どこか気怠げに

「うるさいわね...ただの貧血よ...」と返した。 


次第に人が集まってきた。よくよく考えてみれば通学路だし当たり前だ。


「ここじゃ人目につくし保健室まで運ぶか.」

長嶺のカバンを肩にかけ周囲の人に応援を呼ぼうとしたのだが声が出ないのだ、長嶺に対してはあんなに出ていた声が…何故なら僕以外の『声』が聞こえてきてしまったのだ。


「うわwあいつ女子轢いてんじゃんwww」


「西黒のやつ女子に相手されないからって轢き殺すことねーべ(笑)」


「気持ち悪...長嶺さんマヂかわいそう〜」 


酷い言われようだ、僕が何をしたって言うんだ。

ただいつも通りお前らみたいなバカとバカな教師の授業で1日を無駄に浪費してやろうとしただけだッ...


一番のバカは僕だ。一見、苦悩している様にみせて実は何も考えてないし、行動も出来ない...

わかってるよそんなことは...


環境や状況のせいにして逃げ道作って辛いことから逃げ続けて今があるんだ。


あぁ、でも小学校は楽しかったな。なんで今こんな昔のことが出てくるんだ?


一先ず長嶺を早くなんとかしてやらないと...すると

クラスの顔でもあるスポーツ万能頭脳明晰の少女漫画の王子様こと『常磐裕生』が颯爽と現れ、長嶺をお姫さま抱っこで軽々と持ち上げ「西黒君、彼女は僕に任せてくれ、僕には頼ってくれていいよ。」と気さくに微笑み貼り付けたような笑顔を向けてきた。


「おぉ、助かった。長嶺、貧血みたいだから後任せるわ」 必死に声を出し虚勢を張った。


どよめく周囲、これほど惨めなことは無い…生恥も良いところだ...逃げるように個室トイレに駆け込み呼吸を整え、深呼吸をする。


ふと、肩にかけっぱなしだった長嶺のカバンに気付いた。


勘弁してくれ、周囲の注目を浴びるのは慣れていないんだ。


これじゃ僕がモブキャラから逃げてきて

女子のカバンを盗んだみたいじゃないか

(客観的にみればその通りなのだが...)


「にしても、このカバンやたらと重いな...」


興味本位でチャックを少しづつずらす。僕の全本能がやめろと叫んでいるのには気付いてはいたが、ふつふつと湧き上がる好奇心には勝てなかった。


カバンを開けると、そこには”とんでもない存在感”を放つ小経口のハンドガンと組み立て式の狙撃銃と弾薬が大量に入っていた。


後にも先にも、僕の人生でこれほど好奇心に敗れたことを後悔する出来事は無いだろう。かくして僕の、、否。  


“僕たち”の『時間に抗う物語』は始まったのだ。

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