霞との再開
圭吾は最後の力を振り絞り剣を構えたが剣術については素人同然だったので急に軌道を変えた盗賊の剣には対応出来なかった。
切り裂かれる苦痛に一瞬、目を瞑る。
そして、目を開くといくつかの異変に気がついた。一つ目は地面が傾いて見える事。そして二つ目は何もかもがゆっくりと動いて見える事。例えばついさっきまで自分のことを剣で切り裂こうとしていた盗賊が、今は剣を鞘に収めようとしている。そこで圭吾は今の自分の状況を整理しようと辺りを見渡す。すると真っ赤に染まった地面が目に入る
(あぁ、負けたのか。早くシャーロット達が逃げて無事で居てくれればいいな。いや、やっぱりここで諦めちゃだめだ。シャーロットは俺の帰りを信じて待っているはず)
こうして考えている間にも思考力は鈍り、
視界は暗くなっていく。圭吾は最後の力を振り絞り剣を握っている手に力をいれ、盗賊に投げつける。しかし、弱った人が投げた物の威力なんてたかが知れている。いとも簡単に弾かれてしまった。
「い………けい……圭吾!」
聞き覚えのある声に呼ばれ慌てて目を開けると、そこはつい数日前に訪れた真っ白な部屋だった。慌てて周りを確認するとそこには女神である霞が居た。霞はすごく不満そうな顔でこっちを見ている。
「いきなりで悪いんだけどこれはどういうこと?シャーロットは無事?それに俺はついさっき盗賊に剣で切られて死んだはずなんだけど」
「とりあえず、お主の意識だけを天界に引っ張ってきたのじゃ。今、あっちの時間はとめてあるからシャーロットは無事じゃ。あと、お主の身体はお主が戻る時に修復して時間を進めるから安心するのじゃ」
それを聞いて圭吾は安心し、身体から力が抜ける。
「ありがとう霞」
「どういたしましてなのじゃ」
照れながら霞は圭吾のお礼に対して返答する。少し時間がたつ、すると霞が急に振り向き少しむくれた表情で圭吾に言う。
「今回はまだ死体の状態がいいから治せるだけなのじゃ。あまりにも酷いと妾には治せないのじゃ…。だからお主、いや圭吾には無理はして欲しくないのじゃ。それに…それにあんなに胸のところがキュッとなって悲しい気持ちになったのは、初めてなのじゃ」
そう言って霞は泣いてしまった。圭吾は霞の近くに寄り抱きしめ、頭を優しく撫でる。
「ごめん、これからは気をつけるようにするよ」
しばらく撫でていると霞は服の裾で顔を擦り、圭吾の方を見る。
「もう大丈夫なのじゃ」
そう言って霞は立ち上がると圭吾に向かって微笑む。
「今度は無事で居られるように剣術の基礎や応用が身につくようにしておくのじゃ。早く後ろを向くのじゃ」
圭吾が後ろを向くと霞は圭吾の背中に手をあて目をつむる。すると、圭吾に軽い痛みが走る。
「痛っ…」
しばらくして、霞が目を開ける。
「終わったのじゃ」
圭吾は霞の方を向き、改めてお礼を言う。
「いろいろとしてくれてありがとう。そろそろあっちの世界に行くよ」
「分かったのじゃ。だけど一つ約束をするのじゃ、あまり無理はしないようにして欲しいのじゃ」
「分かった、約束するよ」
「約束じゃぞ!それじゃ行ってらっしゃいなのじゃ」
霞が詠唱し始めたのを見て圭吾はそっと目を閉じる。
投稿するのが遅くなってしまいました。すみませんでした。これからも投稿するのが遅くなると思います。なので暇な時間にでも見てもらえればと思います。感想や評価して頂けると嬉しいです。
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