少女のお願い
気が付くと夜が明けていた。どうやら寝てしまっていたようだ。隣りには昨日、怪我を治してあげた少女が眠っている。しばらく見守っていると、
「ぅ…やめて…殺さないで」
少女の頭を優しく撫でてあげる。すると、少女がゆっくりと目を開き、周りをキョロキョロする。圭吾に気付くと跳び起きて距離をとる。
「あなたは誰ですか?もしかして盗賊の仲間ですか?」
怯えた様子で聞かれる。出来るだけ怖がらせない様に笑顔で答える。
「違うよ。俺の名前は河井圭吾ごく普通の一般人。ところで、怪我の方は大丈夫?一応、傷は全て治しておいたけど、動かしたときに痛むところがあったら教えてね」
少女は驚いた様子で自分の身体を触り、怪我をしていないことを確かめる。
「私の名前はシャーロットです。さっきは疑ったりしてごめんなさい。せっかく怪我を治してもらって、そのうえ安全な場所に連れて来てくれたのに…本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ところで、ここから一番近くにある町を教えて欲しいんだけど」
「私が住んでいる村ならここからちょっと歩いたところにあるんですけど…昨日、盗賊に襲われてしまって…依頼を少し遠くにある王国のギルドに出そうとしたのですが道中で魔物に襲われてしまって…あの、もしかして河井さんは魔術師様ですか?」
少女の期待の眼差しに圭吾は頬をかく。
「違うけど似たようなものかな」
「無理を承知でお願いします。どうか私の村を助けてください!後でお礼は必ず渡すので」
圭吾はそれを聞いてどうしようかと悩む。
(自分の能力を把握してないのにいきなり戦うのはきついな。だけど昨日のうなされていた姿を見て力になってあげたいと思った。そういえば、確か女神が身体能力を強化したとか言ってたな、それならあれを使えばいけるか)
少し考えた後で圭吾はシャーロットの方を向いて答える。
「分かった、出来るだけ頑張るよ」
それを聞いてシャーロットが涙を流す。圭吾はどうすればいいのか分からず戸惑う。
「ど、どうしたの?」
「まさか引き受けてくれると思っていなかったので嬉しくて…本当にありがとうございます」
「絶対に助けるから、急いで村に行こう」
シャーロットは涙を拭って答える。
「はいっ!」