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花言葉シリーズ

ライラック

作者: 尚文産商堂

プロローグ


美術家。

それは、色を操る魔術師。

…になりたいと思う人たちの集まりである美術部。


私は、高校2年生。

部室には、私のほかにもう一人いる。

そう、彼は私と同じ年。

たった二人だけの美術部。


第1章 神さまのちょっとしたいらずら心


今日は休日。

とりあえず部活は午前10時からお昼をはさんで午後3時までの予定。

今は、11時。

この下絵だけでも完成させて、少し休憩をしよう。

私はそう考えた。

そのとき、横のほうで、ものすごく不快な音が聞こえてきた。

私がその方向を見ると、うなだれて眠っている人がいた。


私は、そっとしておくことにした。

下書きが終わるまでは、寝させることにしたのだ。

そして彼は、私の予測どおりになった。


11時半ごろ、私は無事に下書きを終わらせた。

そして、私は、彼を起こす事にした。


まず、軽くゆする。

おきない。

私は、後ろから小突いた。

一瞬ビクンってなったが、結局おきなかった。

私は仕方が無いので、ご飯を買いに出かけた。


帰ってくると、彼はおきていた。

「お、おはよう」

私が帰ってきたのが分かったのか、とりえあずの返事をいっていた。

「おはよう。って言うか、学校に来てまで寝ないでよ」

「いーじゃんか。家にいても暇なだけだし」

「だったら家で寝てよね、まったく…」

私は、そういって荷物を机の上に置いた。

すぐに彼が私の荷物を見た。

「おっ。おにぎり入ってるじゃんか」

「あ、ちょっとー」

私は、速攻でおにぎりをとる彼の手をつかんだ。

一瞬、時間が止まったが、すぐに動いた。

「ちょっと、冗談だって」

彼は、手を引っ込めた。

おにぎりは再び、袋の中に入った。


とりあえず、私が座って下絵の手直しをしながらおにぎりを食べていると、すぐ横で彼がほしそうに見ていた。

「…一ついる?」

私は、未開封のおにぎりを一つ渡した。

彼は、それをそのまま受け取った。

「ありがと」

にかっと笑った。

ドキッとする。

なぜかは分からない。


袋の中には、食べ物以外も入っていた。

彼は、そのまま袋の中を見ていた。

そしてそれを見つけた。

「おい、これって何?」

彼は、その鉢植えを見ていた。

「私の趣味」

「…なんていう花なんだ?」

彼は、その鉢植えに植えられた木を見た。

「ライラックって言うの」

私は、彼から鉢植えを受け取った。

「なんだか、この絵が静かだったから、すこし欲しかったの」

私は続けた。

「それで、買っちゃった」

私は舌をすこし出して、彼に言った。

彼は、あきれているようだった。

「そーかよ」

しかし、彼はライラックに見とれているようだった。

「…絵、描いてみる?」

「え?」

彼は、ライラックから私に目を向けた。

彼と目が合うたび、不思議な気持ちになる。

それでも私は彼に言った。

「美術部なんだし、それに、ここ最近絵描いてないでしょ」

私は、無理やり彼にパレットとキャンパス、それにイーゼルを渡した。

イーゼルは、すでに立ててあったものを使うように指差した。


それから彼は、一人で油絵具やら油壺やらを用意し、座って絵を描き始めた。


第2章 ライラック色に染められて


2時間ほどしたとき、彼は終了したことを宣言した。

私は、もう少しかかかりそうだった。

彼は立ち上がり、伸びをしてから作品を乾かしに、乾燥室へ持っていった。

…正確には、置く場所が無くて、持って行ったのだった。

私は、その絵を一瞬見たが、やっつけ仕事の割には丁寧に塗られていた。


彼は、乾燥室へ行った帰り、私の絵を見ていた。

「…あの花を描いていたのか」

「ふぁ!」

私はそのことに気づかず、素っ頓狂な声を上げてしまった。

彼は、その直後におなかを抱えて笑い出した。

「何で笑うのよ!」

彼に怒って言った。

「ああ、いや。ごめん…でも、さっきの声が面白くて…」

彼は、涙を流して笑っていた。

私は近くにあった筆を彼にぶつけた。

「そんなことより、お前は大丈夫か?」

彼は筆を受け止めて言った。

「大丈夫って?」

「この部屋の使用期限は3時までだろ?あと1時間で完成するのか」

私は、さっきの怒りでそのことを忘れていた。

「今何時!」

彼に聞いた。

「えっと…2時10分ぐらい」

「大丈夫、きっと間に合う」

私は、それから一気に描き上げた。


彼が片づけをしているのを目の片隅で見ながら、私はライラックと人形の静物画を描き上げた。

「ふ〜…」

描き終わって、その絵に満足できたのは、終わる15分前だった。

「さあ、これから片づけだ…」

私は絵を持って乾燥室に向かった。


置いて帰ってくると、彼が私の分まで片付けているところだった。

「ねえ、私の置いておけばよかったのに」

「はあ?何言ってるんだよ」

彼は、すこし怒っている口調になった。

そして、急に小声になった。

「……人を見捨てれるかって…」

私は聞き返した。

「今、なんていったの?」

彼は、大声を出して答えた。

周りに誰もいなかったのが、幸いだった。

「好きな人を見捨てれるかっ!」

彼は、顔を真っ赤にしていた。

私はなぜか笑いをこらえなくなった。

「何で笑うんだよ!」

さらに恥ずかしそうになる彼に、私は言った。

「だって…アハハハハ、やっぱだめ…」

私は息が出来なくなるほどに笑った。

まじめ一徹だと思っていたが、ここ最近私に対して素の彼を見せているような気がしていた。

その理由が、ようやく分かった。


彼が、ムスッとしてもくもくと作業をしている横で、私は深呼吸を繰り返した。

そして、落ち着いてから、彼に言った。

「…ねえ、本当に私のことが、その…好きなの?」

私の唐突な質問は、彼を驚かせるのに十分だった。

彼は、私のほうを見て問い返した。

「好きじゃなきゃ言わねーだろ。普通さ」

そして、彼は再び作業を進めていた。


チャイムが鳴る。

3時を知らせる鐘だ。

私は彼に近づいた。

「ねえ、本当にすきなの?」

小声で聞いた。

周りには誰もいない、ただ二人の空間。

彼は作業を止めずに答えた。

「好きさ、大好きさ」


エピローグ[後書きに代えて]


これは、私の青春の一ページ。

後で調べてみたことだけど、ライラックの花言葉は『愛の最初の感情』とか『青春の喜び』と言う意味らしい。

早速、そのことを彼に話してみた。

「そりゃ、お前が無意識で買ってきたライラックが、そんな意味なんて出来すぎだろ。お前が俺を好きになったように、ライラックもお前が気に入ったんだよ」

なんてことを言っていた。

青春の喜び…愛の最初の感情…

今思えば、彼と目が合うたびに感じていた感情こそが、花言葉にふさわしいと思う。

ちょっとした、神様のいたずら心が、私に幸せを導いてくれたのだと信じたい。

"http://www.birthdayflower366.com/05/02.html"→ライラック。

ここから、ネタをとりました。

多謝!

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― 新着の感想 ―
[一言] 尚文産商堂さん、小田中です。ようやくやってまいりましたw 遅くなりました事、また、屈作をお読み頂いた事、感謝いたします。 さて、ライラック、読ませて頂きました。 私もこの花を使い、画家を…
[一言] こんばんは。春・花小説企画参加者の野谷蔦けいです。 大学では美術関係のサークルに入っているので、その場の雰囲気がイメージし易くてラッキーでした。 ライラックの花言葉を絡めた青春ストーリーが読…
2009/04/11 23:45 退会済み
管理
[一言]  こんにちは、花小説企画に参加している早村友裕です。  先日は、拙作への感想、ありがとうございました。  静かな美術室のライラック、温かくほんわかとした雰囲気で、思わずにやけてしまうような初…
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