女
ファンタズィーーーー!!フゥーーー!!
深海と宇宙はロマンが溢れるなんてもんじゃない...
不気味な歌が響いているーーーーーー
女
「あなたの歌ですよね?」
なんとヨハルは巨大な女に声をかけた。
{!!}
巨大な女は驚いたように振り向く。
その顔は、持っているランプで照らしても見えはしなかった。暗く濃い靄がかかっているように、顔の輪郭すらあやふやだった。
「悪い、驚かせてしまったな。俺はヨハル・リリー。君は?」
極めて優しくヨハルは問いかける。
{ 私....... グレエラ...... }
こちらに顔だけを向け、女はそう答えた。
「グレエラ、君は何でここに?」
{ ......“彼”がいるから..... }
「彼?」
グレエラは傍らの船を優しく撫でる。
「!...彼とは、どれくらい一緒にいるんだ?」
{ ......分からない.....時間なんて...... }
「...彼のどんなところが好きなんだ?」
そう問うと、グレエラは静かに話し始めた。
{ .....寂しい時に...彼と出会ったの.... 何も言わず...ただ静かに...寄り添ってくれた........歌を....聞いてくれて.......時々...返事をしてくれて........ }
その声色は深海のように深い。しかしどことなく、愛おしさが含まれている。
{ 彼は私を遠ざけないの.......彼だけは....... }
「.....彼だけは?他にも誰かが?」
{ .......あの大きな...ヘビのように走るもの........寂しい時...近づいて....お話ししようとしたの......そうしたら......... }
「(ヘビのようなもの.....まさか、あの列車のことか...?)」
{ ......追い払われて......指を...噛みちぎられて..... }
「(......噛みちぎるだと?.....轢かれたってことか....?)」
{ あの男........急に.....牙を.......... }
「(男....? ッ!!?まさか....!!?)」
「.....その男は、どんな奴だった?」
{ .....ヒト....私より...ずっと小さくて.......ヘビの目元から出てきたの........ }
「....!!(.....ヘビが列車だとしたら.....その男は...)
車掌か....!!」
{ シャショウ......?分からない.......怖かったわ..... }
そりゃあそうだろう。俺だって怖くなった。
あの明るい車掌も、間違いなくここの住人なんだ....。
ヨハルは続けて問う。
「なぁ、話は変わるんだが、ここにデカい化け物が来なかったか?鱗が桃色でものすごく長い...」
{ ヒィッ!!!来る!!あいつが来るぅ!!!! }
「!?」
グレエラはまるで人が変わったように怯え始めた。
{ 嫌ァアア!!!来ないで!!!!やめてぇ!!! }
「おいどうした!?あの化け物に何かされたのか!!?」
{ 来る!!来るぅ!!!!近付いてくる!!!!怖い!!!嫌ァ!!!!もうここに来る!!!!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い............... ハッッッ!! }
突然、動きが止まった。
「どうした!?」
{ 来た......}
{ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!}
「ぐッ......!」
耳を劈く絶叫
その瞬間
[グルゥウウアアアアア!!!]
果てからあの化け物が
口を
牙を
グレエラを喰らうが如く 噛み付いた
{ あああああああああああああああ!!!!!! }
グレエラの嘆きも虚しく、 化け物はグレエラを喰うつもりらしい
「させるか!!」
杖を化け物に向け、ヨハルは杖を縦に降る。
するとあっという間に、その化け物は為す術なく真っ二つに裂かれてしまった。
{ ハァ.....ハァ....... }
「待ってろ!今回復してやるからな!」
グレエラの噛み付かれて抉れた身体を、ヨハルは元通りに回復してやった。
「もう大丈夫だ。あの化け物はお前を前から狙ってた奴なのか?」
{ ハァ...ハァ...ありがとう......そう....私を食べようとするの........でももう怖くない...... }
「ああ。アイツはもう死んだ。怖がる必要はない。」
{ よかった.......... }
その時、ヨハルはハッと思い出す。
「そうだ時間!!もうそろそろヤバいか...!じゃあなグレエラ!彼と仲良くなー!」
{ .....ありがとう......!元気でね...... }
「(もう時間がない!非常に不本意だが、ワープするしか....!)」
ヨハルはとうとう移動に魔法を使った。
「ああお客様!お戻りになられましたか!良かった良かった!出発3分前なので心配していました...!」
「すまない!ついつい時間を忘れて楽しんでしまって....。」
「いいんですよ!楽しんでいただけたのなら!」
そう言って従業員はにこやかに微笑んだ。
「(....この人も車掌みたいな.....。)」
「?どうなさいましたか?」
「ああいや、何でもない。」
そう言ってヨハルは席に戻った。
他の客達はもう戻っていて、疲れたのか寝息を立てている者もいる。
「(......この世界は、やはり面白い....!)」
「皆様、無事 お戻りになられましたようなので、時間通り 出発致します。」
車掌のアナウンスが聞こえる。
「(......得体が知れねぇ。怖い怖い......。)」
そう思いながらヨハルは目を閉じた。
そうして、他の乗客達のように、満足そうな表情を浮かべ、眠りについた。
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