歌
昨日更新できずすみません!
勉強が忙しくてもう....
でもこれ書くのほんっと楽しいので、今日は勉強オサボリー☆
「皆様、これより3時間、この列車は停車いたします。深海の観察、深海での散歩を、どうぞお楽しみください。」
車掌の声を合図に、乗客が次々に降りていく。
ヨハルはその時初めて、その乗客達の顔をはっきりと見た。
皆、やはり普通の姿ではない。
肌が薄緑色の者、
目がいくつも顔に付いている者、
頭に珊瑚のかけらのような角が生えている者、
抜け落ちた目の奥から深淵が覗いている者.....
まさに多種多様である。
「(車掌や従業員は皆”人間“と変わりないのに...。)」
そう思ったヨハルは、ふと疑問に思った。
「(深海を散歩するからあの人達は降りたんだよな?.....どうやって散歩するつもりなんだ?俺のような魔法使いは1人もいなかったぞ...!?)」
慌てて後を追いかける。
「こちらからどうぞ。これはお降りになる皆様に。」
従業員からオレンジの暖かい光をたたえたランプを手渡される。
列車のドアが開いている....にも関わらず、列車内に水は微塵も流れ込んでいない。
向こうは間違いなく深海であるというのに...。
「もう他の方々は降りられたんですか?」
「ええ。先程とっくに。」
であれば自分も早く降りて、あの乗客達がどのように散歩しているのかを見てやろうじゃないか。と、ヨハルは一切躊躇うことなく、意気揚々と 深海の闇の中へ繰り出していった。
歌
......深海だというのに、水圧を全く感じない。
というか、ここは水の中という気が全くしない。
平地となんら変わりないのだ。
しかし一々驚いてもいられない。時間は3時間しかないのだ。
ヨハルはランプを高くかざし、まずは乗客達を見つけようと辺りを照らした。
しかし、誰もいないようだ。
「まだそんなに遠くに入っていないはずだよな。」
探しに行こうとするが...ふと立ち止まる。
あの窓から見た化け物のことを思い出したのだ。
「さて、どっちに行くか....。」
少し悩んで、結果、彼は化け物を探すことにした。
「探してる途中に乗客に出くわせるかもしれないしな。」
でも乗客だって分かるかな。と、彼は少し笑いながら続けた。
そう、彼はこの異世界で1日を過ごしたことにより、薄々感付いていたのだ。
あの乗客達が姿を変えぬ保証はないのだと。
つまり、どんな異形のものに変化していても不思議ではないと。
何処へ行けばあの化け物に会えるのか、全く見当のついてない彼は、とりあえず真っ直ぐに歩き始めた。
「しかしまぁ何にも無いな。まるで星も月も出ていない、夜の砂漠を歩いている気分だ。」
そう言いながらも彼は楽しんでいた。
元いた世界では考えられないことばかり起こる。しかし、ここの住人にとってはこれが”いつも通り“。違和感を感じる者は当然ながらいない。
この異常な世界で、異常なのは自分の方なのだ。
そう思うと堪らなく面白い。
彼は少しニヤけていた。
ーーーーーーーーーー
........もうどのくらい歩いたんだろうか。
本当に自分は真っ直ぐ進んでいるのだろうか。
......列車までちゃんと帰れんのかな。
いざという時は魔法でワープしてしまえばいいのだが、そうしてしまうのはなんだか癪だ。
そう思いながらも彼は、止まることなく闇の中を歩き続けた。
「そろそろなんか出てきてくれてもいいんじゃねぇのかな....。」
余りにも不変な道を、何にも出くわすこと無く歩き続けているせいか、彼は少し弱気になっていた。
♪〜 ♪〜〜 ♪〜
.......歌が聞こえる。
彼は立ち止まって、歌の聞こえる方を見やる。
♪〜 ♪〜〜 ♪〜
.....確かにこの方向だ。
自分のいるところから見て、丁度10時の方向。
その声の主を確かめるために、彼はまた足を踏み出した。
♪〜 ♪〜〜 ...けて ♪〜 い...〜 あ.... ♪〜〜
少しずつ歌が鮮明になる。
♪〜 過去の...〜♪ 暗き底で..♪〜〜 ♪〜
奥に大きな何かが見える。
「あれは.......」
大きな、大きな船。沈没船の姿が見えた。
しかし、その向こう.........
「あれは........
.......頭か......!!?」
巨大な沈没船の向こう、
女の頭が見える。
♪〜 歩き 続けて 暗い 青を
陽が 嫌う 私の 声を
落とした 過去を 拾う
暗き底で 眠る 赤い女 ーーーーー
ご閲覧ありがとうございました!
次回もどうかよろしくお願いします!